レンティオで掃除機を3機種レンタルした口コミ|39,000円かけて分かった後悔しない選び方

なお、この記事にはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。 「5万円以上する掃除機、買って後悔したくない」「レンティオで掃除機を借りるって実際どうなの」——そう思って検索している方に向けて書きます。 私は2024年から2025年にかけて、家電レンタルサービス「レンティオ」で高価格帯のコードレス掃除機を3機種、順番にレンタルして比較しました。Anker(アンカー)のコードレススティッククリーナー、ダイソンのコードレスクリーナー、そしてNarwal S20 Pro(ナーワル)です。3機種とも水拭き機能自体は搭載していましたが、実際に買う前に試してみると、吸引力や水拭きの使い勝手にはっきりとした差がありました。レンタルにかけた料金は合計39,000円。最終的には、レンタルではなく別途Narwal S20 Proの新品を自分で購入して、今も使っています。 この記事では、実際に借りた3機種の違いと、乗り換えを重ねた理由、そしてなぜレンタルを続けずに新品を買い直したのかまで、正直にまとめます。 結論から言うと、私にとっては、10万円近い掃除機選びで失敗を避けられたことを考えると、39,000円は十分に価値のある先行投資でした。 なぜ掃除機を「買う前に試す」ことにしたのか コードレス掃除機は、人気モデルになると5万円から10万円ほどします。私は年収300万円台からスタートして生活防衛を軸に家計を組んできたので、この価格帯の家電を「スペック表とレビューだけを見て一発で買う」ことに、どうしても踏み切れませんでした。 特に気になっていたのが「水拭き」です。フローリング中心の住まいだと、吸引だけでは取りきれない皮脂汚れやベタつきが残りがちで、水拭きまでできる掃除機が気になっていました。ただ、実際に使ってみないと、水拭きの「使い勝手」までは分かりません。カタログスペックだけでは判断できない部分こそ、買う前に試す価値があると考えました。 そこで選んだのが、月額制で家電を借りられるレンティオです。気になった機種を実際の自宅で数週間から数ヶ月使ってみて、合わなければ返却できる。高価格帯の家電を買う前に、レンタルして比較する——これが私のやり方でした。 1台目:Anker MACH V1(水拭きは一体型、私の使い方では吸引力が物足りず) 最初に借りたのは、Anker(アンカー)のコードレススティッククリーナー「MACH V1」です。吸引と水拭きが一体になったモデルで、ヘッドを交換する必要はありません。 レンタル開始:2024年10月6日(自宅到着は10月8日午前) 月額料金:2,600円(新品プロモーションで最初の3ヶ月は無料) 最低レンタル期間:6ヶ月 一体型なので水拭き自体は手軽にできたのですが、私の使い方では吸引力に物足りなさを感じました。特に気になったのが、玄関やドア付近のちょっとした段差です。水拭きで噴射した水が、段差の部分でうまく吸いきれずに残ってしまうことがあり、それが私にとっては不満でした。 このプランも、24ヶ月間レンタルを継続すると所有権が利用者側に移り返却不要になる仕組みでしたが、私は最低期間の6ヶ月で返却しています。吸引力への物足りなさから、次は吸引力の評価が高いダイソンを試すことにしました。 2台目:ダイソン V12s Submarine(吸引力はピカイチ、水拭きの実装には期待外れ) 次に借りたのは、ダイソンのコードレスクリーナー「V12s Origin Submarine(SV49)」です。「Submarine」は水拭き用のローラーヘッドのアタッチメント名で、こちらも実は水拭きに対応したモデルでした。 レンタル開始:2025年3月27日 月額料金:5,000円 最低レンタル期間:3ヶ月 このプラン条件のとおり、ちょうど最低期間の3ヶ月使って返却しました。 まず吸引力については、私が触った中ではピカイチでした。通常の吸引(乾拭き)性能に不満はまったくありません。パーツもある程度分解して洗えるので、清潔に保ちやすい点はありがたく感じました。 ただ、水拭きについては、Ankerとは別の意味で期待外れでした。ダイソンの水拭きは専用のローラーヘッドに交換する方式で、掃除のたびにヘッドを付け替えるのが面倒でした。さらに、実際に水拭きローラーヘッドを使ってみると、汚れ自体は取れるものの、私の使い方では汚水が十分に回収されず、床が濡れたままになる場面がありました。期待していたレベルには届かず、この点は少し残念でした。 吸引力は申し分ない、でも水拭きの実装は物足りない——3ヶ月使って、私が本当に欲しいのは「吸引力が高くて、かつ水拭きの実装も良い掃除機」だと確信しました。そこで、両方を兼ね備えていそうなNarwal S20 Proを試すことにしました。 3台目:Narwal S20 Pro(水拭きも吸引力も、私には不満がなかった) 3機種目に借りたのが、Narwal S20 Proです。Ankerと同じ一体型の水拭き対応で、かつ吸引力もしっかりしていました。 レンタル開始:2025年6月30日(自宅到着は7月3日の午前中) 月額料金:6,000円(プロモーション適用で初回〜3ヶ月目は5,400円、4ヶ月目以降は6,000円) 最低レンタル期間:3ヶ月 こちらもちょうど3ヶ月使って返却しました。プロモーション価格の3ヶ月ぶんで、支払った合計は5,400円×3ヶ月=16,200円です。 Ankerで感じた「段差に水が残る」という不満も、ダイソンで感じた「汚水がうまく回収されず床が濡れたままになる」という不満も、Narwalでは感じませんでした。吸引力・水拭きの実装ともに私には不満がなく、3機種の中で最も自分の使い方に合っていました。 このプランにも、12ヶ月間レンタルを継続すると所有権が利用者側に移り、返却不要になる仕組みがありました。それでも私は12ヶ月続けず、3ヶ月で返却しています。その理由は後述します。 3機種を比較して分かったこと 3機種とも水拭き機能自体はありましたが、実装方式と私の感想はそれぞれ違いました。買う前にレンタルして比較したからこそ見えた違いです。 項目Anker MACH V1ダイソン V12sNarwal S20 Pro水拭き方式一体型ヘッド交換式一体型月額レンタル料金2,600円5,000円6,000円(プロモ5,400円)実質支払額(3ヶ月)7,800円15,000円16,200円私の感想吸引が物足りず段差に水が残る水拭きヘッドの汚水回収が弱く床が濡れたまま吸引・水拭きとも実装が良好で不満なし最終判断返却返却購入(新品を別途購入) これはあくまで私自身の使い方・自宅環境での感想です。ヘッド交換の手間を気にしない方や、通常の吸引力だけを重視する方にとっては、また違う評価になると思います。 レンティオの利用体験(配送・梱包について) 3機種とも新品プランでのレンタルだったので、届いた時点でどれも新品同様のきれいな状態でした。使用感を確かめる上で、これは安心材料になりました。 一方で、返却のたびに届いたときと同じ梱包に戻す作業には、少し手間を感じる場面もありました。配送日数や集荷の具体的な流れまでは記事に書けるほど詳しく確認できていないので、ここでは「新品できれい」「返却時の梱包がやや煩わしい」という実感に留めておきます。 レンタル総額39,000円という「先行投資」 3機種のレンタルにかかった実際の支払いは、次のとおりです。 Anker MACH V1:2,600円×3ヶ月分=7,800円(最低利用期間6ヶ月のうち、最初の3ヶ月は新品プロモーションで無料だったため、実際の支払いは3ヶ月分) ダイソン V12s:5,000円×3ヶ月=15,000円 Narwal S20 Pro:5,400円×3ヶ月(プロモ適用)=16,200円 合計:39,000円 10万円近くする掃除機を、試さずに買って「思っていたのと違った」となれば、この金額はまるごと無駄になっていたかもしれません。私にとって39,000円は、高価格帯の掃除機選びで失敗を避けるための先行投資でした。3機種を実際に自宅で使い比べた上で、最終的に自分に合う1台を見極められたことを考えると、十分に見合う金額だったと感じています。 ...

2026年7月11日 · 最終更新: 2026年7月13日 · HIKO

家具レンタルは高い?4年以上使って分かったメリット・デメリット【かしてどっとこむ口コミ】

なお、この記事にはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。 「家具レンタルって結局高いのでは」「かして!どっとこむの口コミが知りたい」——そう思って検索している方に向けて書きます。 私は2021年から2025年まで、家具レンタルサービス「かして!どっとこむ」(運営: 株式会社サークランド)を利用していました。2024年には都内から現在の川崎市の自宅へ引っ越しましたが、家具を運ぶことなく契約を継続できました。実際に支払った引っ越し不要サービスの料金は33,000円(税込)でした。その後、結婚を機に大きな家具・家電を長く使う見通しが立ったことから、2025年に主要な品目のレンタルを終了し、購入に切り替えています。 この記事では、良い面だけでなく「レンタルは思ったより高くつくのか」「新品を買うのとどちらが得なのか」まで、実際にかかった金額と、最終的にレンタルをやめた理由を含めて正直にまとめます。 結論から言うと、約4年間利用した結果、「数年以内に引っ越す可能性がある時期はレンタル、長く住む見通しが立ったら購入」が私にとって最も合理的な使い分けでした。 家具レンタルとは何か(引っ越し不要サービスの仕組み) まず前提として、家具レンタルの基本的な仕組みと、今回体験した「引っ越し不要サービス」がどういうものかを整理します。 家具・家電を購入せず、月額や期間契約で「借りる」サービス 契約満了時は返却・買取・再レンタル継続などを選べる 「引っ越し不要サービス」は、家具そのものを運ぶわけではなく、旧居でレンタル品をいったん回収し、新居ではメンテナンス済みの同等の中古品に差し替えて再配送してもらう仕組み レンタル契約自体は解約されず、契約満了日もそのまま引き継がれる つまり「引っ越しのたびに配送業者を手配して同じ現物を運ぶ」のではなく、「新居に別の在庫品が届く代わりに、契約と満了日はリセットされない」というのがこのサービスの正体です。この仕組みを理解しておくと、料金体系や後述のデメリットも納得しやすくなります。 実際にレンタルしていた家具・家電 2024年7月に引っ越しをした際、レンタル中だったのは以下の品目でした。 冷蔵庫(140L・2ドア) ドラム式洗濯乾燥機(7kg・左開き) オーブンレンジ ダブルベッド(寝具なし) ダイニング3点セット(テーブル1台+イス2脚) 生活に必要な家電・家具がひととおり揃っている状態でした。 家具レンタルのデメリット(正直に書きます) まず検索意図として多いであろう「デメリット」「高い」という不安に先に答えます。 無料ではない: 後述の通り、引っ越し時の差し替えには実費(私の場合33,000円)がかかりました 現物への愛着は持ちにくい: 借り物である以上、購入した家具のような「自分だけの一台」という満足感は薄いです 長期利用ではトータルで割高になりうる: 月額料金が続くため、同じ品を何年も使い続ける前提なら、途中から購入より支払総額が上回る可能性があります 在庫・機種を選べない場合がある: 差し替え時は同等品への交換になるため、同一メーカー・同一型番にこだわりたい人には向きません こうしたデメリットを踏まえた上で、それでも私が2021年から4年ほど利用していた理由を次で説明します。 家具レンタルを利用していた理由 賃貸暮らしをしていると、数年後にまた引っ越しをする可能性は十分にあります。そのたびに家具を買い直したり、逆に大きな家具を手放したりするのは負担が大きいと感じていました。 かといって、何も置かずに生活するわけにもいきません。冷蔵庫や洗濯機のような生活必需品は、購入するとまとまった初期費用がかかります。 そこで「必要な期間だけ借りて、不要になったら返す」というかして!どっとこむの仕組みに興味を持ち、2021年から利用を始めました。 その後、結婚をきっかけに、これから先も長期間同じ家具・家電を使い続ける見通しが立ったことから、レンタルではなく購入に切り替える判断をしました。冷蔵庫・ドラム式洗濯乾燥機・オーブンレンジ・ダブルベッド・ダイニング3点セットの回収を申込み、2025年8月に回収が完了しています。「借りて済ませる」段階から「長く使うものは持つ」段階へライフステージが変わったタイミングだったと感じています。 レンタルと購入、結局どちらが得なのか【比較表】 家具レンタルを検討する上でいちばん気になるのが「新品を買うのと比べてどちらが得か」だと思います。ここでは一般的な傾向として整理します。 比較項目家具レンタル新品購入初期費用の負担◎ 小さい(月額課金が中心)△ まとまった支出が一度に発生引っ越し時の手間◎ 差し替え対応あり(実費は発生)△ 運搬・処分・買い直しの手間とコスト長期利用時の総コスト△ 使うほど支払総額がかさむ◎ 一定期間を超えると割安になりやすい家具の好み・こだわり△ 同等品への交換が前提◎ 自分で選んだものを使い続けられる 私が今回の引っ越しでかかった実費は「引っ越し不要サービス」利用料の33,000円(税込)でした。一方、レンタルしていた構成に近い商品を価格比較サイトで実際に調べたところ、次のような価格帯が確認できました(下表の金額は新品購入時の価格であり、上記の引っ越し不要サービス代とは別のものです)。 品目実売価格帯の目安冷蔵庫(140L・2ドア相当)小型モデルで33,000円前後〜ドラム式洗濯乾燥機(7〜8kg相当)133,000円〜235,000円程度オーブンレンジ16,800円〜105,000円程度(機能差が大きい)ダイニング3点セット(テーブル+イス2脚)29,000円〜40,000円程度ダブルベッドフレーム(マットレス別)14,000円〜35,000円程度(フレーム単体) 今回私がレンタルしていた構成を新品でそろえると、各品目の安価なモデルを組み合わせた場合で合計約22万円台、機能重視の高めのモデルを選ぶと45万円近くになる計算でした(各品目とも価格帯には幅があり、実際の合計額は選ぶグレードによって変わります。価格.com等の価格比較サイトで2026年7月時点に調査した実売価格の目安であり、店舗・時期によって変動します)。 引っ越しの都度、初期費用として20万円規模の出費をするのか、月額料金を払い続けながら差し替え実費だけで済ませるのかは、今後の居住予定によって損益分岐点が変わってきます。 FPとして数字を整理すると FPとして考えると、家具レンタルと購入の損益分岐点は、月額料金や購入する家具の価格、使用年数によって変わるため、一律に「何年ならこちら」と言い切れるものではありません。私自身は、今後数年以内に住まいが変わる可能性がある時期はレンタル、長く住む見通しが立ったタイミングで購入へ切り替える、という判断をしました。月額料金と契約期間、購入した場合の想定使用年数を掛け算して比較すれば、自分にとっての損益分岐点はおおよそ見えてきます。 引っ越しをまたいでレンタルを使い続けた体験 2024年7月30日から8月11日にかけて、都内から現在の川崎市内の自宅へ引っ越しをしました。 このとき利用したのが「引っ越し不要サービス」です。旧居でレンタル中の家具・家電をいったん回収してもらい、新居ではメンテナンス済みの中古品に差し替えて再配送してもらえる仕組みでした。 利用してみて一番助かったのは、レンタル期間や満了日がそのまま引き継がれる点です。私の場合、当時の満了日は2025年8月29日でしたが、引っ越し後もその日付のまま契約が継続しました。契約をいったん解約して新居で結び直す、といった手間は一切ありませんでした。 家具を購入していた場合、引っ越しのたびに「運ぶかどうか」「新居のサイズに合うか」を考える必要があります。処分するなら処分費用もかかりますし、新居用に買い直せば当然また出費が発生します。レンタルであれば、こうした判断や手間からある程度解放されると実感しました。 引っ越し不要サービスにかかった費用 メリットだけでなく、実際にかかった費用も正直に書きます。 引っ越し不要サービスの利用料は33,000円(税込)でした。この料金は地域等に関わらず一律で、支払いは新居への再配送時に現金のみ(クレジットカード不可)という条件でした。 この33,000円とは別に、配送・回収の時間帯によって追加料金がかかる点も見落とせません。私が確認した時間指定料は次の通りでした。 フリー便(9:00〜18:00): 0円 AM・PM指定(9:00〜13:00/12:00〜18:00): 3,300円 2時間枠指定(9:00〜11:00など8区分): 5,500円 節約のポイント:フリー便なら追加料金0円 私は納品・回収とも時間を指定せず、フリー便を選んで追加料金を発生させませんでした。仮に納品・回収の両方で2時間枠を指定していたら、11,000円がさらに上乗せされていた計算です。日中に在宅できる方であれば、フリー便を選ぶだけで実費を抑えられます。 ...

2026年7月4日 · 最終更新: 2026年7月10日 · HIKO

ライフプランシミュレーションの作り方|95歳まで試算する30代夫婦の実例

「ライフプランシミュレーション エクセル」「ライフプラン 表 自作」で検索してこのページに来た方も多いと思います。テンプレートは検索すれば見つかります。ただ「結局何を入力すればいいのか」で止まってしまう人が多い印象です。 平成時代を生きた30代、川崎市在住・夫婦二人暮らし(子どもなし)のHIKOです。投資歴11年・FP2級。2026年6月に自作のライフプランシミュレーションを作り、95歳まで57年分の家計を複数シナリオで試算しました。この記事では、そのときに実際に組んだシート構成と、作成の5ステップを具体例つきで紹介します。 なお、本記事はマネーフォワード MEのようなツールで日々の家計を可視化した「その次」の段階を想定しています。まだ家計簿アプリで支出を把握していない方は、先にそちらから始めることをおすすめします。 ※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。 なぜ家計簿の次にライフプランシミュレーションが必要なのか 家計簿アプリは「今月いくら使ったか」を教えてくれます。しかし「このペースで貯めて、老後まで資産は持つのか」「住宅を買うべきか、賃貸を続けるべきか」「早期リタイアは現実的か」といった問いには答えてくれません。 これらに答えるには、単年ではなく数十年単位で家計を先に延ばして試算する必要があります。私がライフプランシミュレーションを作ったきっかけも、家計を可視化しただけでは「このままで大丈夫なのか」という不安が消えなかったからです。 ライフプランシミュレーションでできることは、大きく3つあります。 収入・支出・資産の推移を長期で可視化する 「賃貸 vs 住宅購入」「早期リタイアするなら何歳か」のような複数シナリオを比較する 前提条件(昇給率・利回り・支出)を変えたときの感度を確認する マネーフォワード MEで家計を自動で可視化する 銀行・証券口座・クレジットカードを連携するだけで、資産推移が自動でグラフ化されます。ライフプランシミュレーションの土台となる支出データもここから拾えます。 マネーフォワード MEを無料で試す → ※アクセストレード経由のアフィリエイトリンクです。 ライフプランシミュレーションに必要な項目 作り込む前に、最低限そろえておきたい項目を整理します。 項目内容例前提条件現在の年齢、退職想定年齢、想定寿命(何歳まで試算するか)収入現在の手取り年収、昇給率の想定、退職金・年金の見込み支出生活費、住居費、教育費(子どもがいる場合)、大型出費の予定ライフイベント住宅購入、車の買い替え、子どもの進学、早期リタイアなど資産・運用現在の資産額、NISA・企業型DCなどの積立額、想定利回り ポイントは、収入や支出を1本の数字で固定せず、「昇給率が低かった場合」「利回りが想定より低かった場合」のように複数パターンで置けるようにしておくことです。前提条件をシートの先頭にまとめておくと、後から一括で変更できて楽になります。 ライフプランシミュレーションの作り方【5ステップ】 ここからは、私が実際に組んだ手順を、例として「30代夫婦」のモデルケースに当てはめながら説明します。以下のケースはあくまで説明用の例示であり、私自身の実額ではありません。 例)30代夫婦(夫35歳・妻33歳)、子どもなし、賃貸暮らし 65歳を退職想定年齢、95歳を試算の終点に設定 30年後に住宅購入を検討するかどうかで悩んでいる 早期リタイア(FIRE)にも興味があるが、何歳なら現実的か分からない このようなケースを想定しながら、シートを組んでいきます。全体の流れを図にすると、次のような構成になります。 順番ステップ1前提条件2ベースシナリオ(現状維持)3ライフイベント別シナリオ(住宅購入/子ども1人/子ども2人/早期リタイア/逆算DieWithZero)4感度分析(年金/昇給/育休)5定期更新 ステップ1:前提条件シートを作る 最初に「前提条件」だけをまとめた1枚のシートを作ります。現在の年齢、退職想定年齢、試算の終点、想定利回り(保守1%・標準3%のように複数パターン)、昇給率などです。 私は試算の終点を95歳に設定しました。平均寿命(男性約81歳・女性約87歳)まででは老後資金を過小評価する可能性がある一方、FPが作成するライフプランでも95歳前後まで試算するケースは多く、長寿リスクを考慮すると現実的な終点だと考えたためです。 この前提条件シートの数字を、他のすべてのシートから参照する形にしておくと、前提が変わったときにここだけ直せば全体に反映されます。私の場合、作成後20日間で少なくとも10回以上、前提条件を見直して更新しました。月1回のような定期更新ではなく、「ニュースで金利や物価の話を見た」「昇給額が確定した」など、前提が変わるたびに触るイベントドリブンの運用です。 なお、家計の土台となる支出データは、マネーフォワード MEで日々自動集計されたものを使うと、シミュレーション側の入力の手間がかなり減ります。 ステップ2:ベースシナリオ(現状維持)を作る 次に、今の生活を続けた場合の家計推移を、年次で試算します。私は「ベース_賃貸」というシートを作り、95歳までの57年分を1行ずつ、収入・支出・資産残高が並ぶ形で組みました。 このベースシナリオが、後で他のシナリオと比較するときの基準になります。ここを丁寧に作っておくほど、以降の比較が楽になります。 こうした年次の合計や条件分岐には、一般的にSUM関数(合計を出す)やIF関数(条件によって数値を切り替える)を使うことが多いです。前提条件シートの数字を各年の行に参照させ、その上で収入・支出・資産残高を積み上げていくイメージです。 ステップ3:ライフイベント別のシナリオシートを増やす ベースシナリオができたら、検討したいライフイベントごとにシートを複製して分岐させていきます。私が実際に作ったシートは次のようなものです。 住宅購入(賃貸継続との比較用) 子ども1人・子ども2人(それぞれ教育費を反映したケース) 早期リタイア 逆算DieWithZero(95歳時点の目標資産から逆算して、いつまで働けばよいかを計算するシート) 例えば「住宅購入」を検討する場合、「ベース_賃貸」シートと「住宅購入」シートを、95歳までの57年間、実質利回り1%(保守)と3%(標準)の2パターンで並べて比較します。私の場合はこの比較の結果、賃貸を継続する判断をし、現在も賃貸に住んでいます。実際に試算してみると、住宅購入シナリオは賃貸継続シナリオより、95歳時点の資産残高が少ない結果になりました。金額差を確認できたことで、感覚ではなく数字をもとに判断できたことが、このシートを作った一番の収穫でした。 早期リタイアを検討したい場合は、資産の使い方(今の支出水準を維持する/老後の支出水準まで切り詰める/サイドFIREとして一部収入を残す)と利回り(保守1%・標準3%)を掛け合わせたマトリクスで比較すると、「何歳ならリタイアできそうか」が具体的に見えてきます。私は「逆算DieWithZero」というシートも別に用意し、95歳時点で目標の残高になるよう逆算して、賃貸シナリオと子ども2人シナリオの2ケースで最短のリタイア可能年齢を比較しました。 ステップ4:感度分析シートで前提のブレを確認する シナリオが一通りできたら、前提条件を意図的に動かして結果がどう変わるかを確認します。私は「年金感度」「昇給感度」「育休感度」という3つのシートを用意し、それぞれの前提を上下に振ったときに、最終的な資産残高がどう変化するかを確認しました。 例えば昇給率を1%下げて試算すると、95歳時点の資産残高が減る結果になりました。年金の受給額が想定より少なかった場合の感度も合わせて確認しておくと、「最悪のケースでも詰まないか」を事前にチェックできます。長期の複利計算では、こうした将来値の見積もりにFV関数(将来価値を計算する関数)が使われることも一般的です。 ステップ5:定期的に前提を更新し、シナリオを追い足す ライフプランシミュレーションは一度作って終わりではなく、状況が変わるたびに更新していくものです。私は最終的に「専業主婦逆算」「副業逆算」といったシートも追加し、全部で12シートの構成になりました。すべて2026年6月に作り始めたばかりで、まだ運用歴としては数週間ですが、短期間で何度も改訂を重ねたことで、自分たちの家計の「効きどころ」がかなりクリアになりました。 ライフプランシミュレーションを作るときの注意点 利回りは複数パターンで試算する:1つの利回りだけで試算すると、相場が想定を外れたときに計画が根本から崩れます。保守的な数字と標準的な数字の両方で試すことをおすすめします 将来の数字は「予測」ではなく「仮置き」と捉える:ライフプランシミュレーションは未来を正確に当てるものではなく、前提が変わったときにどう資産が動くかを確認するための道具です。数字を鵜呑みにせず、定期的に前提を見直す運用が前提になります 投資判断は自己責任で行う:本記事で紹介した利回り前提やシナリオ比較は、あくまで私個人の試算例です。実際の投資判断や住宅購入の意思決定は、ご自身の状況を踏まえて自己責任で行ってください まとめ ライフプランシミュレーションは、家計簿アプリで「今」を可視化した次に、「この先数十年」を可視化するための道具です。私は前提条件シート・ベースシナリオ・ライフイベント別シナリオ・感度分析シートという流れで、95歳までの57年分を複数パターンで試算しました。 最初から12シートを目指す必要はありません。まずは前提条件とベースシナリオの2つだけで十分です。住宅購入もFIREも、必要になったタイミングでシートを追加すればよいので、「完璧な状態で始める」より「小さく始めて更新し続ける」ことのほうが、結果的に長続きします。 今日やること 手元の家計簿アプリ(なければマネーフォワード MEなど)で、直近3ヶ月の平均支出を確認する 「何歳まで試算するか」「退職想定年齢は何歳か」の2つだけ、まず自分の前提条件として決める スプレッドシートを1枚開き、年齢・収入・支出・資産残高の4列だけのベースシナリオを作ってみる あわせて読みたい 2026年4月末の資産配分(アセットアロケーション)と保有商品、今後の投資方針 企業型DCの含み益と今後の運用方針 NISAで投資を始める30代のための基礎知識

2026年7月1日 · 最終更新: 2026年7月8日 · HIKO

賃貸保険の個人賠償1,000万円は不足?合算上限に気づいて1億円へ見直した実体験

「賃貸保険の個人賠償1,000万円」は、一見十分に見えます。しかし契約内容を確認すると、借家人賠償と合算上限になっているケースがあります。私自身、加入していた賃貸保険がこの状態であることに気づき、個人賠償1億円・示談交渉付きの保険へ変更しました。この記事では、実際の契約内容と見直し理由を公開します。 私は保険業界に10年いたあとIT企業に転職した、FP2級のHIKOです。平成時代を生きた30代・川崎市で夫婦二人暮らしをしています。今回、長く入りっぱなしだった賃貸保険を別の会社へ乗り換えました。きっかけは「個人賠償、自分はてっきりどこかでカバーされていると思っていた」という、よくある思い込みです。 この記事は特定の保険商品を推奨するものではなく、私個人が自分の契約をどう点検して、どう判断したかの記録です。最終的な契約判断はご自身の状況に合わせて行ってください。 賃貸保険の個人賠償が「合算1,000万円」だと気づいた これまで私が入っていたのは、チューリッヒ少額短期保険の「ミニケア賃貸保険」でした。年3,610円。賃貸契約のときに不動産屋経由ではなく自分で選んで入った、わりと意識して選んだつもりの契約です。 中身を改めて見ると、こうなっていました。 補償金額家財100万円借家人賠償(大家さんへの賠償)1,000万円個人賠償(他人・他人のモノへの賠償)1,000万円修理費用100万円 一見、悪くないように見えます。問題は個人賠償の「1,000万円」の中身でした。 この契約の個人賠償は、借家人賠償と合算で1,000万円が上限という構造だったのです。つまり、火事で大家さんへの賠償が発生した場面と、外出先で他人にケガをさせた場面が、同じ1,000万円の枠を取り合う形になっていました。借家人賠償でいくらか使えば、その分だけ個人賠償に残る枠は減ります。 「個人賠償1,000万円」と書いてあると、それが独立して1,000万円あるように感じますが、実際は別枠ではなかった。ここが最初の気づきでした。 自転車事故で約9,500万円。1,000万円では足りない時代 そもそも個人賠償の1,000万円という数字自体が、今の水準では心もとないと感じます。 個人賠償責任は、日常生活で他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したりして法律上の賠償義務を負ったときに備えるものです。代表例としてよく知られているのが自転車事故で、神戸地方裁判所では、自転車事故について約9,521万円の賠償命令が出た事例があります(平成25年7月4日判決)。 私自身は車も自転車も使いませんが、それでも他人に損害を与えるリスクがゼロになるわけではありません。賃貸マンションで暮らしていれば、水漏れで階下に損害を与えてしまうようなケースは誰にでも起こりえます。こうしたリスクに対して、しかも借家人賠償と枠を取り合う1,000万円というのは、正直なところ現代の生活水準に合っていないと判断しました。 「クレカに個人賠償が付いている」は思い込みだった ここが今回いちばん肝を冷やした部分です。 私は漠然と「クレジットカードに個人賠償くらい無料で付いているだろう」と思っていました。なので賃貸保険の枠が薄くても、どこかで二重三重にカバーされているはず、という油断があったのです。 そこで、家計管理に使っているマネーフォワードのデータと、手元の保険・カードの内容を一通り確認してみました。結果は次のとおりです。 加入している生命保険・医療保険に個人賠償の特約は付いていない 保有しているクレジットカードにも個人賠償は付いていない 賃貸保険の「合算1,000万円」が、わが家で唯一の個人賠償だった ここで整理しておきたいのが、クレジットカードに自動で付くことが多いのは旅行傷害保険であって、個人賠償ではないという点です。一部のカードには個人賠償の付帯サービスがありますが、一般的なクレジットカードに個人賠償が自動付帯されているとは限りません。付帯している場合でも「別途申し込みが必要な有料オプション」だったり、特定の上位カードに限られたりと、カードや商品によって扱いはさまざまです。自分の手元のカードがどうなっているかは、個別に確認する必要があります。 「たぶんカバーされている」と思っていたものが、実は唯一の砦すらギリギリだった。ここで本気で見直すことに決めました。 乗り換え先を選んだ理由(チューリッヒ少短→日新火災) 乗り換え先として選んだのは、日新火災の「お部屋を借りるときの保険」です。選んだ理由はシンプルで、私が見直しで満たしたかった条件、つまり「個人賠償1億円・示談交渉付き・借家人賠償とは別枠」を、この商品が標準で満たしていたからです。決め手はあくまでこの補償の中身でした。なお補足として、価格.com保険アワードの家財部門で連続1位を取っている商品としても知られています。 補償を並べると、こうなりました。 補償チューリッヒ(旧)日新火災(新)家財100万円300万円借家人賠償1,000万円2,000万円個人賠償1,000万円(借家人と合算)1億円・別枠・示談交渉付き修理費用100万円300万円年間保険料3,610円6,000円 私が決め手にしたのは、金額そのものより「個人賠償1億円・示談交渉サービス付きが、オプションの金額選択ではなく標準で内蔵」されていて、しかも借家人賠償と別枠だったことです。 旧契約の「合算上限」という構造的な弱点が、これでまるごと解消されます。賠償の場面が重なっても、お互いの枠を食い合わない。さらに示談交渉サービスが付いていれば、いざ事故が起きたときに当事者同士で交渉する負担も軽くなります。 なお、個人賠償は1億円ではなく無制限を選べる商品もあります。私は保険料差額とのバランスから、1億円で十分だと判断しました。 念のため書いておくと、これは「日新火災が一番」という話ではありません。私の今の暮らし(賃貸・夫婦二人)で抱えていた、個人賠償の手薄さという課題に一番素直に効いたのがこの商品だった、というだけです。 保険料の差額を、投資・家計目線でどう判断したか 保険料は年3,610円から6,000円へ、年+2,390円。月にならすと約+200円です。 FP2級・投資目線で固定費を見るクセがあるので、本来この手の値上がりには身構えます。月200円でも年2,390円、20年で約4.8万円ですから、無条件で受け入れる金額ではありません。 ただ今回は、この差額で得られるものがはっきりしていました。 個人賠償が「合算1,000万円」→「別枠1億円+示談交渉付き」 家財が100万円→300万円(夫婦二人の実勢に近づく) 借家人賠償・修理費用も増額 特に個人賠償の部分は、いざ高額賠償が現実になったときに資産形成の前提そのものを吹き飛ばしかねないリスクです。コツコツ積み上げてきたNISAや企業型DCの資産が、一度の賠償で消し飛ぶ。その確率は低くても、起きたときの損失が致命的なら、月200円は「保険料」ではなく「資産を守るコスト」だと整理できました。 固定費は基本的に削る対象ですが、削っていいのは「過剰なもの」だけです。今回はむしろ手薄すぎたので、増やすのが正解でした。安いか高いかではなく、リスクに対して過不足ないかで見る。ここが保険の固定費判断のキモだと改めて思いました。 乗り換えの段取り:先に新契約、後に旧契約停止 実務的に役立つかもしれないので、段取りも残しておきます。地味ですが、ここを間違えると無保険の空白期間ができたり、二重払いになったりします。 旧契約のチューリッヒは「自動継続」型でした。放っておくと満期日に勝手に更新されて、また1年分が課金されます。一方で、何も考えずに先に旧契約を止めてしまうと、新契約が始まるまでの間が無保険になってしまいます。 そこで踏んだ順番はこうです。 先に新契約(日新火災)を申し込む。保険の始期を、旧契約の満期日に合わせて指定する そのうえで旧契約(チューリッヒ)の継続停止手続きを、自動更新の期限までに行う この順番なら、保障が途切れません。結果として、新契約の始期が旧契約の満期と半日ほど重なる形になり、無保険の空白はゼロで着地できました。重複といっても半日なので、二重払いの実害もありません。 保険の見直し全般に言えることですが、「解約してから新規」ではなく「新規に入ってから旧契約を止める」が鉄則です。これは生命保険でも医療保険でも同じで、保障の空白を作らないことを最優先にしてください。 まとめ:賃貸保険は「個人賠償」を必ず確認する 今回の見直しで私が学んだことを整理します。 賃貸保険の個人賠償は、借家人賠償と「合算上限」になっている契約がある。金額の数字だけでなく、別枠かどうかを確認する 個人賠償の1,000万円は、自転車事故などの高額賠償(神戸地裁・平成25年7月4日判決では約9,521万円の事例も)には不足しうる クレジットカードに自動付帯されやすいのは旅行傷害保険であって、個人賠償が自動付帯されているとは限らない(カード・商品により異なる)。「たぶんカバーされている」は危険 自分が個人賠償をどこで持っているか、保険・カードを一度棚卸しする 見直すなら「新規加入してから旧契約停止」の順番で、保障の空白を作らない 保険は削るのが基本ですが、手薄なところは増やす。安さではなくリスクとの過不足で判断する。これは賃貸保険に限らず、家計の固定費全体に通じる考え方だと思います。 まずは手元の賃貸保険証券を1枚出して、「個人賠償が別枠でいくらあるか」を確認するところから始めてみてください。 あわせて読みたい 30代の保険、9割は「見直しでOK」です 固定費を下げる方法|まず見直すべき3つと優先順位 手取りが少ないと感じた原因は家賃だった はじめての方へ|30代会社員の家計と投資を5分で整理する HIKO 保険業界10年勤務・30代IT会社員ブロガー 保険業界10年勤務後、IT企業に転職。生命保険・損害保険の「売り手側の論理」を知った上で、本当に必要な家計管理・投資の情報を発信。NISAや固定費削減の実体験をもとに、30代サラリーマンのお金の不安を減らすことを目指しています。 保険業界10年 IT転職 NISA実践中 固定費削減経験あり

2026年6月21日 · 最終更新: 2026年6月23日 · HIKO

積立保険は続けるべき?|ドル建て終身・個人年金・学資保険をIRR比較

保険業界に10年在籍したのちIT企業へ転職した、平成時代を生きた30代のHIKOです。FP2級保有、年収300万円台からのスタートで投資歴は11年(2015年NISA開始)。失敗もしながら資産形成を続けています。今回は「保険外交員に積立保険を勧められたけれど、本当に得なのか」と悩む30代会社員に向けて、主要な積立保険の実利回り(IRR)を概算で比較し、NISAやiDeCoとの機会損失差まで整理します。 先に 住友生命Chakinの実利回り検証記事 を書いたところ、検索からの流入が想像以上にありました。Chakinは新商品ですが、既存の「明治安田生命 つみたて」「日本生命 みらいのカタチ」「ドル建て終身保険」「学資保険」「養老保険」「変額保険」も、考え方の枠組みは同じです。本記事はそのクラスター記事として、検討対象になりやすい6タイプを横並びで見られるようにまとめます。 この記事の要点 積立保険のIRRは年0.3〜1.5%が中心 NISA/iDeCoの期待リターンとの差は長期で大きく開く ただし「強制貯蓄」「相続対策」など保険が合理的なケースもある 結論|積立保険の実利回りはNISAやiDeCoの数分の一 最初に結論を出します。日本で売られている主要な積立保険の実利回りは、概ね年0.3〜1.5%のレンジに収まります。一方、NISAやiDeCoで全世界株式・S&P500などのインデックス投信を積み立てた場合、過去実績の長期想定利回りは**年3〜5%**で語られることが一般的です。 (注:NISA・iDeCoの「年3〜5%」は過去の長期インデックス投信実績から語られる目安で、将来を保証する数値ではありません。詳細な前提は記事末尾の免責に記載しています) 両者の差は単年で見ると小さく見えますが、20〜30年の積立では複利で数百万円〜1,000万円規模の機会損失になり得ます。「積立保険=悪」という極論ではなく、**「同じ金額を税優遇つき投資に回した場合との差を必ず計算する」**ことが、30代の資産形成では非常に重要です。 ただし、保険には「死亡保障」「就業不能保障」など投資商品にはない機能があります。本記事では「保障」と「貯蓄」を切り分けて考え、貯蓄部分の実利回りに絞って評価します。これは保険業界10年で見てきた中で、もっとも現実的な判断軸でした。 実利回り(IRR)とは何か|表面利回りとの違い 比較に入る前に、用語を整理します。 表面利回り:保険会社が提示する「予定利率」「返戻率」など。総払込額に対する増加額を単純に比率化したもの 実利回り(IRR:内部収益率):「いつ払って、いつ受け取るか」のキャッシュフロー時間軸を組み込んだ年率換算の利回り。投資商品の利回りと比較できる唯一の指標 たとえば「30年で返戻率120%」と聞くと一見大きく見えますが、IRR換算すると年率約0.6%です。表面利回りはマーケティング上の数値、IRRが現実の数値、と覚えておくと判断を間違えにくくなります。 なお、本記事の試算はすべて2025〜2026年時点の公開情報および各社販売設計例から逆算した概算値であり、実際の契約条件・付帯保障内容・予定利率改定によって変動します。最終判断は契約書の設計書と直近の予定利率で行ってください。 主要積立保険6タイプの実利回り比較【円建て・ドル建て・変額別】 代表的な積立保険6タイプを、概算ベースで一覧にします。具体的な商品名はあくまで「カテゴリ代表例」として挙げています。 商品タイプ代表商品例表面利回り(予定利率/返戻率換算)実利回り(IRR概算)NISAインデックス(年5%想定)との差円建て終身保険各社の低解約返戻金型終身予定利率 約0.5〜1.0%約0.3〜0.7%大きい(複利差で数百万円規模)個人年金保険日本生命「みらいのカタチ」年金保険 等返戻率 約110〜125%(30年)約0.4〜1.2%中〜大ドル建て終身保険各社のドル建て一時払・平準払終身予定利率 約3.0〜4.0%約1.0〜2.0%(為替+コスト控除後)中(為替変動リスク込み)変額保険各社の変額終身・変額個人年金ファンド連動信託報酬控除後で投信よりやや劣後同等運用が低コストで可能学資保険各社の学資保険返戻率 約103〜108%(17〜18年)約0.3〜0.8%大きい養老保険各社の養老保険返戻率 約103〜108%(10〜30年)約0.3〜0.7%大きい 上表のIRR概算値は、2025〜2026年時点の各社公開設計書・販売設計例・予定利率の一般的な水準をもとに逆算した概算です。実際の数値は契約年・健康状態・特約付加・予定利率の改定により変動します。本記事の数値は「商品カテゴリの大まかな水準」を示すもので、個別契約の最終判断は最新の設計書に基づいてください。 ここから1つずつ詳細を見ていきます。 明治安田生命「つみたてだいすき」は得か?|実利回りを試算 「つみたてだいすき」(明治安田生命の積立保険)は、毎月の保険料を一定期間払い込んで、満期で受け取る平準払い型の積立保険です。販売現場では「銀行に預けるよりは増える」「強制力があって貯まる」という訴求でよく勧められます。 ここでは、よく案内される設計に近い月1万円・10年払い込み・満期一括受取を前提に、概算IRRを試算します。具体の返戻率は契約年・健康条件で変動するため、ここでは「総払込額120万円→満期受取126万円(返戻率105%)」を仮置きします。 項目値月払い保険料10,000円払込期間10年(120ヶ月)総払込額1,200,000円満期受取額(仮定)1,260,000円返戻率(表面)105%実利回り(IRR概算)年率 約0.9% 返戻率105%は「10年で5%増えた」という見え方ですが、毎月積み立てている時間軸を反映するとIRRは年0.9%程度に落ち着きます。 参考:IRR(実利回り)の計算過程 上記の年率0.9%という数値は、以下のキャッシュフローからExcelのXIRR関数で逆算したものです。 経過年キャッシュフロー(円)備考1年目-120,000月1万円×12ヶ月の払込2年目-120,000同上3〜9年目各 -120,000同上10年目-120,000払込最終年10年目満期+1,260,000満期受取金 このキャッシュフローをExcel/Google Sheetsに貼り付け、=XIRR(値の範囲, 日付の範囲) を実行すると年率約0.9%が算出されます。返戻率105%(10年で5%増)という見え方と、年率0.9%という数値の差は、「お金を払ってから受け取るまでの時間」を年率に均す処理から生まれています。 ※本記事のNISA試算はすべて「毎月積立・年率5%複利・手数料および税金は考慮外」の単純シミュレーションです。将来のリターンを保証するものではなく、市場環境により元本割れの可能性もあります。 同じ月1万円を10年間、NISAでインデックス投信(年5%想定)に積み立てた場合の評価額は約155万円となり、両者の差は約29万円です。 10年で30万円弱の差なら許容範囲、と感じる人もいると思います。ただし「積立保険を10年継続できる人は、その後の20年も同じ習慣を維持できる」傾向が強いです。同じペースを30年続けると差は数百万円規模に広がります。 日本生命「みらいのカタチ」個人年金は得か?|実利回りとデメリット 日本生命「みらいのカタチ」は、終身保険・年金保険・医療保険などをパーツで組み合わせる商品群の総称です。ここでは個人年金保険部分にフォーカスします。 個人年金保険の魅力としてよく挙げられるのが、**個人年金保険料控除(年最大4万円)**です。所得税率10%・住民税率10%の年収帯(概ね課税所得330万円以下)なら、年間8,000円程度の節税効果があります。 しかし、利回り側を冷静に見ると以下のとおりです。 項目値(概算)月払い保険料10,000円払込期間30年総払込額3,600,000円受取総額(10年確定年金など)約4,000,000〜4,300,000円返戻率約111〜119%実利回り(IRR概算)年率 約0.7〜1.2% ここに節税効果を加算しても、トータルの実質リターンは年1.0〜1.5%程度にしか届きません。同じ30年で同額をiDeCoに拠出した場合、所得控除(年12〜27.6万円拠出可、所得税+住民税で同率の節税)と運用益非課税が両方効くため、想定利回り3%でも実質的な手残り効率は個人年金保険を大幅に上回ります。 主なデメリットを3つ整理しておきます。 流動性が低い:途中解約で元本割れの可能性が高い インフレに弱い:名目固定利率なので、物価上昇局面では実質目減りする 保険会社の信用リスク:30年単位で1社の破綻リスクを背負う 「みらいのカタチ」自体は柔軟性のある商品設計ですが、年金保険パートに関してはiDeCoの方が税優遇・運用効率の両面で優位というのが、FP視点での評価です。 ドル建て終身保険は解約したほうがいい?|表面と実質の利回りギャップ ここ数年、超低金利環境下で「ドル建て終身保険」の販売が増えました。提案書には「予定利率3〜4%」と書かれていることが多く、円建て商品と比べて見栄えが良いのは事実です。 ただし、表面の予定利率と実質利回りの間には大きなギャップがあります。 控除要因概算インパクト保険関係費用(死亡保障・運営コスト)年 -0.8〜-1.5%為替手数料(円→ドル、ドル→円)一般的に片道50銭〜1円/ドル為替変動リスク円高方向に振れた場合は元本割れリスク 予定利率3.5%の商品でも、コスト控除後のドルベースIRRは概ね年1.5〜2.5%、円換算で受け取った場合の最終的な実利回りは為替次第で年0〜2%程度のレンジに落ちることが多いです。 「予定利率3.5%」を期待してドル建て終身保険に加入すると、為替リスクを取った割にリターンが米国株インデックス投資より低いという結果になりがちです。米国株インデックス(S&P500)の長期想定利回りはドルベースで年6〜8%が一般的に語られる水準で、同じ為替リスクを取るならインデックス投信の方が圧倒的に効率が良いです。 ドル建て終身保険が向いているのは、「死亡保障をドル資産で持ちたい」かつ「30年以上保有可能」かつ「為替変動を許容できる」人に限定されます。「なんとなく利回りが良さそうだから」で入るのは、機会損失が大きすぎます。 変額保険の実利回りはなぜNISAに劣後するのか 変額保険(変額終身・変額個人年金)は「投資型の保険」と訴求され、表面的にはNISAと似た構造に見えます。実際は以下の要因で長期リターンがNISAインデックス投資に劣後するケースが大半です。 ...

2026年6月18日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO

予定利率1.6%でも利回りは1%台?明治安田の積立保険をNISA比較

保険業界10年・投資歴11年・FP2級の HIKO です。保険会社で10年働いたあと IT企業へ転職し、家計と投資の発信をしています。 ※当記事はアフィリエイトリンク(PR)を含みます。また、本記事で扱う数値は 2026年6月の報道による情報 をもとにしており、商品名や条件は公式の最新情報をご自身でご確認ください。投資・契約の判断は自己責任でお願いします。 2026年6月、明治安田生命が平準払い(毎月払い)の積立保険の予定利率を、現行の1.4%から1.6%へ引き上げると報じられました。報道によると、契約から10年たった満期で受け取れる金額は払込総額の110%になり、これは2026年4月に続く同年2度目の引き上げとのことです。建付け(5年払込・10年満期)から、これは当ブログで以前検証した「じぶんの積立」とみられる商品ですが、公式での裏取りは取れていないため、本記事では報道ベースの慎重な表現で進めます。 ニュースを見て「予定利率が上がったなら、今が買い時では?」と感じた方も多いはずです。本記事では、その予定利率1.6%・満期110%という数字を、実質利回り(IRR)に翻訳して冷静に見ていきます。 結論:利上げは朗報だが、IRRで見ると依然「年1%台」 先に結論を3点に整理します。 利上げは確かに朗報:満期返戻率が報道前の108.3%から110%へ上がるなら、実質利回り(IRR)は年率約1.07%から 年率約1.28% へ改善します(いずれも本記事の試算)。 ただしNISAとは役割が違う:積立保険は「満期まで保有すれば払込総額を上回る設計の確定リターン商品」、NISAインデックスは「元本割れリスクと引き換えに高い期待リターンを狙う商品」。同じ土俵で「どちらが得」とは言い切れません。なお保険は預金保険の対象外で、保険会社が破綻した場合は生命保険契約者保護機構による補償(責任準備金の原則90%まで等)に拠ることになり、預金と完全に同じ安全性ではない点には留意が必要です。 「予定利率が上がった=今すぐ買い時」という話には乗らない:予定利率1.6%という数字と、あなたが手にする実質利回りは別物です。数字の見え方に流されず、自分の家計の中での役割で判断するのが現実的です。 ここから先は、報道された数字と一般的な税制値を使って、順番に整理していきます。 報道された内容を整理する まず、2026年6月の報道で示された内容を整理します。以下はすべて報道ベースの数値であり、公式の最新条件はご自身でご確認ください。 項目報道された内容対象平準払い(毎月払い)の積立保険予定利率1.4% → 1.6%(2026年7月申込分から)払込期間5年保険期間10年10年満期時の受取払込総額の110%例(月2万円の場合)払込総額120万円に対し満期132万円(+12万円)引き上げの背景国内金利の上昇を反映。2026年内2度目の引き上げ 報道では「投資信託などに比べて元本割れのリスクが少なく、銀行預金よりも金利は高い」という商品の位置づけも示されていました(報道の文言)。ただし、これはあくまで満期まで保有した場合の話で、途中解約時は解約返戻率が100%を下回り元本割れする期間があること、将来的に商品条件が変更される可能性があること、保険である以上は保険会社の信用力に依存することは、地の文として補っておきます。元本保証ではなく「満期まで保有すれば払込総額を上回る設計の確定リターン商品」と捉えるのが正確です。 なお、当ブログで以前検証した時点(2026年5月)の満期返戻率は108.3%でした。今回の報道どおりであれば、満期返戻率が110%へ上がる点が新しい情報になります。 予定利率1.6%・満期110%をIRRに翻訳すると年率いくらか ここが本記事の核です。「予定利率1.6%」と聞くと、年1.6%で増えるように感じます。しかし、私たちが実際に手にする利回りは、もっと低くなります。 報道の例にならって、月2万円×60ヶ月(5年)払い込み、その後5年据え置いて10年満期で132万円を受け取るケースで計算します。 払込総額:20,000円 × 60ヶ月 = 1,200,000円 満期受取額:1,200,000円 × 110% = 1,320,000円 増加額:120,000円 ポイントは「120万円を一括で預けたわけではない」「毎月2万円ずつ5年かけて積み立て、その後5年は据え置いた」という時間構造です。最後に積んだお金は数年しか運用されず、最初に積んだお金だけが約10年運用されます。 この時間価値を考慮した内部収益率(IRR)を計算すると、次のようになります。 満期返戻率実質利回り(IRR・年率換算)110%(今回の報道)約1.28%108.3%(報道前・参考)約1.07% 返戻率110%という見た目に対し、実質利回りは年率約1.28%。利上げによって約0.2ポイント改善した計算ですが、依然として年1%台です。「予定利率1.6%」という数字とは、はっきり差があります。 ※IRRは、毎月末に2万円を5年間(計60回)払い込み、最後の払込から5年後に満期金132万円を一括で受け取る前提で、月次キャッシュフローから内部収益率を求めて年率換算したものです(手数料・税・配当等の細目は加味しない簡易試算)。前提が変われば数値も変わります。 なぜ「予定利率1.6%」と「実質利回り」はズレるのか ここがFPとして一番お伝えしたい部分です。両者がズレる理由は大きく2つあります。 1つ目は、予定利率がかかるのは「払い込んだお金のうち、運用に回る部分」だけだからです。 保険には保険会社の運営経費(付加保険料)や、わずかでも付帯する保障コストが含まれます。払込総額のすべてに予定利率1.6%がそのまま乗るわけではありません。 2つ目は、先ほど触れた時間構造です。 積立保険は「毎月コツコツ積む→さらに数年据え置く」という形のため、お金ごとに運用される期間がバラバラです。満期時点の「払込総額に対する増加率(返戻率110%)」を、毎年の利回り(IRR)に直すと、必ず小さく見えます。 だからこそ、「予定利率◯%」や「返戻率◯%」という表示は、商品同士を比べる物差しとしては不十分です。私はいつも、こうした商品を見るときは返戻率を一度IRRに翻訳してから判断するようにしています。今回のように予定利率が引き上げられたニュースでも、まず実質利回りに直してみると、過度に期待しすぎず冷静に見られます。 同じ月2万円をNISAに入れたら、10年後どうなるか では、同じ月2万円を NISAつみたて投資枠で全世界株インデックスに5年間積み立て、その後5年間そのまま保有した場合の評価額を試算します。 株式市場では長期的に年率数%〜7%程度のリターンが期待されることがありますが、将来の成果は保証されません。ここでは幅を取って3%・5%・7%の3シナリオで比較します。 シナリオ10年後評価額(NISA)積立保険(満期110%)差額年率3%(保守)約1,497,341円1,320,000円+約177,000円年率5%(中央値弱め)約1,730,988円1,320,000円+約411,000円年率7%(強気)約1,997,117円1,320,000円+約677,000円 月2万円×5年積立・10年後評価額(NISA vs 積立保険・満期110%) 1320000円 積立保険110% 1497341円 NISA年率3% 1730988円 NISA年率5% 1997117円 NISA年率7% 数値は本記事の試算(NISAは年率3/5/7%・運用益非課税)。期待値であり確定リターンではありません。 NISA枠なので運用益はすべて非課税です。控えめな年率3%でも約18万円、年率5%なら約41万円、年率7%なら約68万円の差になります。 ...

2026年6月17日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO

収入保障保険はいらない?遺族年金から逆算する必要保障額の求め方【FPが判定】

「収入保障保険って、結局うちには必要なの?」 この疑問に、先に結論からお答えします。収入保障保険は、多くの独身の方や、お互いの収入で自立できている共働き世帯には不要です。一方で、子どもがいて世帯収入の大半を自分が担っている家庭では、必要になるケースがあります。 判断の軸は次の3つです。 遺族年金で足りない分だけ入る。それ以上は不要 独身の方、資産が十分にある方には不要 入るなら、必ず複数社の保険料を比較する 私は保険業界に10年身を置いたあとIT企業へ転職し、現在はFP2級の知識をベースに資産形成の情報を発信しています。この記事では「業界の中から見てきた立場」と「ひとりの生活者としての立場」の両方から、収入保障保険の判定基準と必要額の計算方法を解説します。 あなたに必要か、30秒で判定 まずは下のチャートで判定してください。当てはまった時点で、あなたの答えは出ています。 あなたの状況判定扶養家族がいない(独身など)不要。この記事はここで閉じてOKです共働きで、配偶者が自分の収入で生活を維持できる原則不要(不足額次第で少額のみ検討)金融資産が、遺族の生活費の不足分をカバーできる不要。保険より資産で備えられています子どもがいて、世帯収入の大半を自分が担っている要検討。この先を読んでください ポイントは「死亡保障は、困る人がいるときだけ必要」という一点です。誰も経済的に困らないなら、保険料はそのままNISAやiDeCoに回したほうが合理的です。 「要検討」に当てはまった方は、読み進める前に保険料の相場感だけ先に確認しておくと、このあとの判断が早くなります。収入保障保険は30代なら月2,000〜3,000円台から入れる商品です。 収入保障保険の仕組みと「割安」のカラクリ 収入保障保険は、契約者が亡くなった場合に、遺族が毎月のお給料のように保険金を受け取れる保険です。たとえば「月10万円を保険期間満了まで受け取る」という形ですね。 普通の定期保険(死亡時に一括で3,000万円など)と比べて、保険料が明らかに安い。ここで「安い=お得?それとも何か裏がある?」と疑問に思う方が多いのですが、カラクリはシンプルです。 保障の総額が、年々減っていくからです。 契約直後に亡くなれば「月10万円×残り25年=3,000万円」を受け取れますが、満了の5年前なら「月10万円×5年=600万円」。受け取り総額が時間とともに減る分、保険会社のリスクも減る。だから安いのです。 「保障が減るなんて損では?」と思うかもしれませんが、実はここが収入保障保険の最も合理的なところです。遺族に必要なお金も、子どもの成長とともに減っていくからです。子どもが5歳の家庭と、大学卒業間近の家庭では、残すべきお金がまったく違います。死亡保険金を3,000万円で固定する定期保険は、後半になるほど「保障の払い過ぎ」になりやすい。必要額の減り方に保障の減り方を合わせた収入保障保険のほうが、実態に合っている世帯は少なくありません。 業界にいた立場からひとつ付け加えると、営業の現場では、収入保障保険よりも保険料が高い商品が優先的に提案されるケースもあります。提案された商品が自分の必要額に合っているかは、勧められた側が自分で確認するしかありません。そのための計算方法を、後ほど実演します。 入る前に知っておきたいデメリット3つ 合理的な保険だと書きましたが、弱点がないわけではありません。「入ってから後悔した」とならないために、デメリットを先に押さえておきましょう。 ① 長生きリスクには対応できない 収入保障保険はあくまで死亡(および所定の高度障害)に備える掛け捨ての保険です。無事に満期を迎えれば、支払った保険料は戻りません。「老後資金が足りない」という長生き側のリスクには1円も役立たないのです。 死亡保障と老後資金準備は、混ぜずに分けて考えるのが原則です。老後資金はNISAやiDeCo・企業型DCで作る。収入保障保険に「貯蓄も兼ねた安心」を期待すると、目的がぶれて後悔のもとになります。 ② 解約返戻金がほぼない 保険料が安い理由のひとつは、解約返戻金をなくす(またはごくわずかにする)ことでコストを削っているからです。途中で解約しても、お金はほとんど戻りません。 これは「掛け捨てだから損」という話ではなく、割安な保険料はこの設計と引き換えだということです。逆に言えば、「途中でやめたら損だから」と必要以上に高い保障で契約してしまうと、見直しの身動きが取りにくくなります。最初から必要額ぴったりで入るのが大切です。 ③ 家族構成が変われば不要になる 収入保障保険の必要性は「自分の収入に依存する家族がいるか」で決まります。つまり、離婚した・子どもが独立した・配偶者の収入が増えたといった変化があれば、必要性そのものが消えたり大きく縮んだりします。 独身に戻ったのに保険料を払い続けている、というのは典型的なムダです。ライフイベントのたびに「この保障、まだ要るか?」を見直す前提で付き合う保険だと理解しておいてください。 この3つを踏まえたうえで、それでも「子どもが独立するまでの死亡保障」が必要な世帯にとっては、収入保障保険は候補になります。では、いくら必要なのか。次章で計算します。 必要額はいくら?モデルケースで計算 モデルケース:35歳会社員(年収600万円)、配偶者(パート年収100万円)、子ども5歳の3人世帯 先に結果からお見せします。 項目金額(月額)遺族に必要な生活費約22万円遺族年金(公的保障)約14万円不足額約8万円 → このケースでは、「月額8万円・保障期間は子どもが独立する22歳まで(17年間)」の収入保障保険が目安になります。 では、なぜこの数字になるのか。順番に分解します。 ステップ1:遺族年金がいくら出るかを知る 会社員が亡くなった場合、18歳年度末までの子がいる配偶者には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2階建てで年金が支給されます。 遺族基礎年金(2026年度・令和8年4月分からの価額) 基本額:847,300円/年 子の加算(1人目・2人目):各243,800円/年 ※金額は日本年金機構の公表値(昭和31年4月2日以後生まれの場合)です。 モデルケース(子1人)では、847,300円+243,800円=1,091,100円/年(月約9.1万円)。 遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。概算式は次のとおり。 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数 × 3/4 ※加入月数が300月未満の場合は300月とみなして計算 年収600万円(平均標準報酬額50万円)なら、500,000円 × 5.481/1000 × 300月 × 3/4 ≒ 約61.7万円/年(月約5.1万円)。 ...

2026年6月9日 · 最終更新: 2026年6月10日 · HIKO

UR賃貸の家賃値上げは断れる?借地借家法との関係をわかりやすく解説

「UR賃貸は公的住宅だから家賃は上がらない」——そう思っている人は多いのではないでしょうか。礼金・仲介手数料・更新料・保証人がいらないUR賃貸は、長く住むほどお得に感じられる住まいです。 ですが結論から言うと、UR賃貸でも家賃は値上げされることがあります。そして「公的だから借地借家法は関係ない」というのも誤解です。 先に「断れるのか」への答えを言うと、借主に即時の応諾義務はなく、納得できなければ協議・調停・訴訟で争えるというのが正確なところです(詳しくは後半で解説します)。この記事では、UR賃貸の家賃改定の仕組みと、私たち入居者を守る借地借家法の関係を、UR入居中の30代会社員の目線で整理してみます。 UR賃貸にも借地借家法は適用される まず押さえておきたいのが、UR(独立行政法人都市再生機構)の賃貸住宅であっても、入居者との関係は通常の建物賃貸借契約だということです。したがって、賃貸借契約の基本法である借地借家法がそのまま適用されます。 借地借家法の第32条には「借賃増減請求権」という規定があります。これは、家賃が次の事情で不相当になったとき、貸主・借主のどちらからでも将来に向かって家賃の増額・減額を請求できるという権利です。 土地・建物に対する税金など、負担の増減があったとき 土地・建物の価格の上昇・低下など、経済事情が変動したとき 周辺の似た物件(近傍同種)の家賃と比べて不相当になったとき つまり貸主であるURからは「値上げ請求」が、入居者からは「値下げ請求」ができる、という双方向の仕組みです。 URの「継続家賃改定ルール」とは では、UR独自のルールはどうなっているのでしょうか。UR賃貸住宅の家賃は法律上、近傍同種の住宅の家賃を基準に決めることとされています。そして住んでいる人の家賃(継続家賃)の見直しは、居住者代表を含む有識者でつくる諮問機関がまとめた**「継続家賃改定ルール」**に沿って行われます(UR都市機構「継続家賃の改定について」)。 ポイントは次のとおりです。 改定は、入居時期などに応じて定められた見直しの時期に行われる 改定前の継続家賃と近傍同種家賃との間に、5%を超える乖離がある住宅が対象 直近の家賃変更日(変更がなければ入居日)から2年に満たない住宅は対象外 ここが重要で、入居してまだ2年経っていない場合は、そもそも値上げの対象になりません。また、引き上げ対象になる世帯のうち、低所得の高齢者世帯や子育て世帯などには、改定後の家賃を原則として改定前と同額に据え置く特別措置も用意されています。年金生活で住民税非課税の世帯や、子どもがいる世帯は守られやすい仕組みになっているわけです。 実際にURで値上げされた事例はある 「ルールがあるのはわかったけど、実際に上がった例はあるの?」という疑問もあるでしょう。あります。 たとえば2014年度には、市場家賃より低い住戸を対象に継続家賃改定が実施されました。このときは消費税率引き上げと重なったため、引き上げ分について一定期間の免除措置が取られましたが、値上げ自体は実施されています。継続して住んでいる人でも、数百円〜千円規模の小幅な改定はあり得るということです。 そして近年話題になったのが、定期借家契約の住戸で、契約満了時に大幅な家賃の引き上げが提示され、退去する住民も出たと報じられたケースです。「安心して長く住める」というUR住宅のイメージに、疑問の声が上がった出来事でした。これは次に説明する契約形態の違いが背景にあります。 「普通借家」か「定期借家」かが分かれ目 この事例で注目すべきは、契約形態の違いです。 一般的なUR賃貸の多くは普通借家契約(自動更新・更新料なし)で、この場合は前述の継続家賃改定ルールが適用され、値上げがあっても小幅にとどまります。一方、定期借家契約は契約期間の満了で一度終了し、再契約時にほぼ市場家賃の新条件が提示されます。継続家賃の「緩やかな改定」ではなく、一気に相場水準まで跳ね上がる可能性があるのです。 ですから、自分の契約がどちらなのかを確認しておくことが、想定すべきリスクを知るうえで欠かせません。 UR家賃値上げの対象になるか、3ステップで確認する ここまでの内容を組み合わせると、「自分の部屋が家賃改定の対象になり得るか」は入居中でも自分で確認できます。値上げ通知が来てから慌てて調べるより、落ち着いているうちに一度やっておくのがおすすめです。 ステップ1:契約書で「普通借家」か「定期借家」かを確認する 賃貸借契約書の契約形態の欄を見ます。前述のとおり、普通借家なら小幅な改定にとどまりやすく、定期借家なら満了時に市場家賃水準が提示される可能性を想定しておきます。 ステップ2:直近の家賃変更日(または入居日)から2年経っているか数える 直近の家賃変更日(変更がなければ入居日)から2年未満なら、そもそも改定の対象外です。 ステップ3:周辺の似た物件(近傍同種)の相場と自分の家賃を比べる 改定対象は継続家賃と近傍同種家賃の乖離が5%を超える住宅です。周辺相場より自分の家賃が5%超安ければ将来の改定対象になり得ますし、相場と同水準なら大きな値上げは起きにくいと見込めます。 この3ステップで「上がるとしたらどの程度か」の見当がつけば、通知が来たときも冷静に内容を確認できます。 では、値上げは「断れる」のか 最後に本題です。値上げを断れるのか。 借地借家法32条は借主保護の強い規定で、借主による減額請求権を排除する特約は無効とされています。一方で増額については、一定期間は増額しないという特約が有効とされる余地があります。いずれにせよ、貸主が一方的に主張すれば値上げが自動的に通るわけではなく、「不相当」かどうかは周辺相場・経済事情・税負担の増減といった客観的な事情に基づいて判断されます。主観だけでは認められません。 大切なのは、借主は増額請求に直ちに応じる義務はないという点です。貸主と借主の意見が合わない間は、借主は自分が相当と考える額(通常はこれまでの家賃)を払い続けることができます。家賃をきちんと払い続けていれば、正当な事由なく契約が終了することはありません。 そして話し合いがまとまらなければ、原則としてまず調停を申し立て、それでも決まらなければ訴訟となり、最終的には裁判所が妥当な家賃額を判断します。 つまり「URだから絶対に断れない」のではなく、納得できなければ協議→調停→訴訟という法的な道筋があり、その間に一方的な退去を迫られるわけではない、というのが正確な答えです。ただし現実には、URは周辺相場より割安なケースが多く、争うコストと見込みを天秤にかける必要があります。近傍同種家賃との比較で値上げの合理性が認められやすい局面もあります。 値上げを拒否したら、その後どうなる? 「拒否したら追い出されるのでは」と不安に感じる人もいるかもしれませんが、前述のとおり、同意しないあいだも従来の家賃を払い続けている限り、正当な事由なく契約を解除されることはありません。 問題になるのは、貸主側が「増額後の家賃でなければ受け取らない」と受領を拒むケースです。この場合でも、借主は従来の家賃額を法務局に供託することで支払ったのと同じ扱いになり、家賃滞納にはあたりません(民法494条以下の供託制度)。「受け取ってもらえないから払えず滞納扱いになる」という事態は、制度上は避けられる仕組みになっています。 供託や協議を経てもまとまらなければ調停・訴訟に進みますが、いきなり退去や強制執行になるわけではありません。通知が来ても署名を急がず、まずは改定理由と近傍同種家賃の根拠をURの窓口に確認するところから始めるのが現実的です。 値上げされても住み続けた方が得なケースが多い 値上げ通知が来ると「いっそ引っ越したほうがいいのでは」と考えたくなりますが、金額を並べてみると、住み続けたほうが家計の負担は軽く済むケースが多いのが実際のところです。 理由は大きく2つあります。ひとつは、そもそもUR賃貸は近傍同種の相場より割安に設定されていることが多く、継続家賃改定ルールに沿った小幅な値上げがあっても、改定後の家賃が周辺相場をなお下回っているケースが少なくないことです。もうひとつは、住み替えそのものに、家賃差とは別の一時費用が重くのしかかることです。 一般的な住み替えでは、たとえば次のような費用がかかります。 新居の初期費用(礼金・仲介手数料・敷金・鍵交換・保証会社利用料など、民間物件なら家賃の数ヶ月分になることも珍しくありません) 引越業者への費用(時期や距離、荷物量で変わりますが、数万円〜十数万円が目安です) 新居と現在の家賃差(間取りや築年数の条件をそろえると、相場水準の民間物件は今より高くなることが多くあります) 仮に値上げ額が月1,000円だったとすると、年間の増加は12,000円です。一方、住み替えにかかる初期費用と引越費用の合計が数十万円規模になれば、その差を埋めるのに何年もかかる計算になります。さらに引っ越し先の家賃が今より高ければ、負担はむしろ増えてしまいます。 もちろん通勤やライフスタイルの変化で住み替えが必要になる場面はありますし、値上げ幅が大きい定期借家の再契約では話が変わってきます。ただ、普通借家の小幅な改定に限って言えば、「値上げ額」と「住み替えにかかる総コスト」を並べて比べてみると、住み続けたほうが結果的に負担が軽く収まることが多い、という点は押さえておいて損はありません。 値上げ通知後に住み替えを検討して見送る人が多い理由 実際、値上げ通知をきっかけに住み替えを検討し始めても、最終的には「やっぱり今の部屋に住み続ける」という判断に落ち着く人が多いと言われます。物件を探し始めてから、次のような壁に気づくパターンです。 まず、同じ家賃帯で探すと部屋が狭くなりがちです。UR賃貸は同条件の民間物件と比べて専有面積に余裕があることが多く、いざ引っ越し先を探すと「今より狭くなるのに家賃は変わらない、あるいは高くなる」という現実に直面したという声は少なくありません。 次に、家賃が思ったより高くつくことです。ネットで見た家賃だけを比べて安いと感じても、礼金・仲介手数料・更新料といったUR賃貸にはない費用まで含めて計算し直すと、トータルでは割高になっていた、と気づく人も多いようです。 こうして「探せば探すほど、今の部屋の条件の良さが分かった」という理由で、値上げを受け入れて住み続ける選択をする人が多いわけです。値上げ通知が来たときは、感情的に引っ越しへ動く前に、まず住み替えの総コストと新居の条件を具体的に見積もってみることが、後悔しない判断につながります。 よくある疑問(Q&A) URから家賃値上げの通知が来たらどうすればいい? 増額に直ちに同意する義務はないので、慌てて署名せず順に確認しましょう。(1)通知内容(新家賃・改定理由・適用時期)(2)自分の契約が普通借家か定期借家か(3)周辺の家賃相場と比べて提示額が不相当でないか、を確認し、納得できなければURの窓口や専門機関に相談すれば十分です。 URに家賃の値下げを請求できる? できます。借地借家法32条は増額だけでなく減額請求も認めています。周辺相場の下落や経済事情の変化で、現在の家賃が近傍同種家賃より高すぎると考えられる場合は、借主からURへ減額を請求できます。合意できなければ調停・訴訟で判断される流れです。 UR賃貸の家賃値上げは、いくら上がる? 契約形態によって幅が大きく変わります。普通借家の継続家賃改定は数百円〜千円規模の小幅な見直しが一般的ですが、定期借家の再契約ではほぼ市場家賃が提示され、エリアによっては月数千円〜1万円以上になることもあります。まず自分の契約形態と近傍同種家賃との差を確認するのが出発点です。 UR賃貸で家賃が「上がらない」のはどんな場合? 前述の継続家賃改定ルール(普通借家)では、そもそも改定対象にならない住戸が多いためです。具体的には、直近の家賃変更日から2年未満、継続家賃と近傍同種家賃の乖離が5%以内、といったケースが対象外です。逆に、相場より大きく割安なまま2年以上住む普通借家や、契約満了を迎える定期借家では、値上げの可能性を想定しておくとよいでしょう。 UR入居中の私の受け止め 私自身も都市部のUR賃貸に住んでいます。礼金・更新料・仲介手数料がかからない構造に魅力を感じて選んだ住まいですが、「公的だから一生家賃は上がらない」とは考えていません。借地借家法32条と継続家賃改定ルールを一度自分で読んでみて、「普通借家なら大幅な値上げは起きにくいが、ゼロではない」と理解できたことで、かえって安心して住めるようになりました。 家賃は家計における最大級の固定費です。値上げ通知が来てから慌てるより、入居中の今のうちに自分の契約形態と周辺相場を把握しておくことが、いちばんの備えだと感じています。 ...

2026年6月7日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO

積立保険は解約すべき?30代が「やめていい5つの条件」を具体数字で解説

保険業界に10年在籍し、FP2級を取得したHIKOです。「解約すると損ですよね」という声は、貯蓄型保険をめぐってもっともよく聞くフレーズです。ただ、その言葉の裏にある「惰性で払い続けている」状態のほうが、実は大きな損になっているケースが多い、というのが業界に身を置いて見えてきた実感です。 結論から言うと、以下の5つのうち2つ以上に当てはまるなら解約を検討すべきです。 保険料が手取りの5%以上を占めている 積立保険の利回りが年1%未満 返戻率が100%になるまで15年以上ある NISAやiDeCoをまだ使っていない 扶養家族がいないのに死亡保障が500万円以上ある このまま放置すると、数十万円〜100万円単位で差が出る可能性があります。 「解約=損」というより、「判断せず放置すること」が損になるケースが多いです。仕組みと判断基準を整理しますので、手元の保険証券と照らし合わせながら読んでみてください。 参考までに、生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和4年度)」によれば、1世帯あたりの年間払込保険料は平均37万円前後とされています。月額に直すと3万円超。生涯で見れば1,000万円規模の支出です。だからこそ「払い続けることが正解か」を一度数字で確認する価値があります。 解約返戻金とは何か 積立保険を途中で解約したとき、保険会社から受け取れるお金を解約返戻金(かいやくへんれいきん)といいます。 積立保険の保険料には、大きく分けて2つの用途があります。 保障コスト(死亡保障部分): 万が一のときに保険金を支払うための費用 積立部分: 解約返戻金や満期保険金の原資となるお金 保険会社はこの積立部分を運用し、一定期間後に「払った保険料より多い金額」が戻ってくるように設計しています。ただし、途中で解約すると積立部分がまだ育っていないため、払込総額より少ない金額しか戻ってきません。 返戻率の目安 解約返戻金が払込総額に対してどの程度の割合かを示す数値を返戻率といいます。 加入からの期間返戻率の目安(商品による)1〜3年50〜70%程度(大きく元本割れ)5〜10年80〜95%程度(元本割れ)15〜20年100%前後(損益分岐点)満期105〜110%程度 返戻率が100%を下回っている期間に解約すると、払い込んだ総額より少ない金額しか戻りません。これが「解約すると損」と言われる根拠です。 ただし、この「損」はあくまでも払った保険料との比較です。「今すぐ解約する場合」と「今後も払い続けた場合」を比べて、どちらが自分の状況に合っているかを判断する必要があります。 なお、ここで挙げた返戻率はいわゆる「低解約返戻金型」を含む一般的な終身・養老タイプの目安です。商品によっては10年経過時点で返戻率70%台で頭打ちになるものもあるため、必ず手元の設計書で確認してください。 積立保険とNISAの差は10年で約29万円、20年で約145万円 「利回りの差」という言葉だと実感しにくいので、具体的な数字で確認してみます。 前提:毎月1万円を積み立てた場合(税金・手数料は考慮外。月複利で計算) 10年積立 積立保険(年利1%)→ 約126万円(元本120万円) インデックス投資(年利5%)→ 約155万円 差額:約29万円 20年積立 積立保険(年利1%)→ 約266万円(元本240万円) インデックス投資(年利5%)→ 約411万円 差額:約145万円 10年で29万円の差が、20年では145万円まで広がります。これが複利の効果です。30年積立まで伸ばすと、差額は400万円を超えます。 積立保険の利回りが0.5〜1.5%にとどまるのは、保険料の一部が保障コストや会社経費に回るためです。一方、NISAで全世界株式インデックスに長期投資した場合の期待リターンは年率4〜6%程度(過去の長期実績ベース)とされており、運用効率の差が時間とともに拡大します。 ただし「NISAなら必ず勝てる」ではない ここで一つ重要な注意点があります。インデックス投資は元本保証ではなく、暴落時に積立を止めてしまうと複利効果も止まります。 年利5%という数字は、あくまで過去の長期平均からの期待値です。特定の10年間や20年間で必ず5%出るわけではなく、運の悪い時期に始めれば年利2〜3%にとどまる可能性もあります。 実際、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでは、含み損30%超の局面で積立を止めてしまった方も少なくありません。積立を止めた瞬間に「下がったところで損切り、上がるところに乗れない」最悪のパターンに入ります。 「NISAなら必ず保険より得」ではなく、「長期で淡々と続けられる前提なら期待値が高い」というのが正確な理解です。 逆に「相場が荒れても20年続ける自信がない」のであれば、積立保険の「強制貯蓄機能」のほうが結果的に手元にお金が残るケースもあります。これは判断基準3でも触れます。 税制まで含めると差はさらに広がる ここまでは「運用利回り」だけの比較でした。税制を加えると評価が変わります。 積立保険側のメリット:生命保険料控除 年間8万円超の保険料を払うと、生命保険料控除(一般)で所得税4万円・住民税2.8万円の所得控除を受けられます。所得税率20%・住民税10%の方で、年間約1万円の節税効果。10年で約10万円、20年で約20万円です。 ただし注意点が2つあります。 すでに他の終身保険や医療保険で「一般生命保険料控除」の枠を使い切っている場合、この積立保険を解約しても節税メリットは減りません(追加メリットがゼロだったため) 解約返戻金が払込総額より大きい場合、差額は一時所得として課税対象です。ただし50万円の特別控除があるため、運用益が小さい契約ではほぼ非課税です NISA側のメリット:運用益が完全非課税 通常、運用益には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。前述の20年シミュレーションでは運用益が約171万円。これに対して通常口座なら約34万円の税金がかかるところ、NISAでは0円です。 純差はNISA優位になりやすい ざっくり整理すると以下の通りです(毎月1万円・20年・他の生保契約なしの場合)。 項目積立保険NISA運用益約26万円約171万円税制メリット(控除/非課税)約20万円(生保料控除)約34万円(運用益非課税)一時所得課税50万円控除内で非課税─合計手取り約286万円約445万円 差額は約160万円。これはあくまで「他の生保契約なし・所得税率20%」のケースで、契約状況や所得帯で変動します。ただし、長期になるほどNISAの非課税効果が拡大する構造は変わりません。 保険業界10年で見えた「惰性で続けている人」の共通パターン 業界に身を置いて見えてきたのは、「もったいない」という感覚だけで払い続けているケースの多さです。 加入から10年以上が経ち、返戻率が80%台のまま止まっている商品を、「いつか100%になるはず」と信じて払い続けている、というパターンは典型的です。ところが設計書をきちんと確認すると、返戻率が100%を超えるのはさらに10年先、あるいはそもそも満期まで保有しても105%程度にしかならない、という商品も珍しくありません。 もう一つ多いのが、「保険に入っておけばとりあえず安心」という状態が続いているパターンです。加入時に設定した保障額が、今のライフステージに合っていないことに気づいていない、というのは一般的によくある話です。独身のころに加入した大きな死亡保障を、10年以上そのまま払い続けているケースなどが典型です。 こうしたパターンに共通しているのは、「最初に比較検討した」のは加入時だけで、その後は一度も見直していない、という点です。保険は一度入ると「払い続けることが正解」に見えやすい商品です。だからこそ、定期的に数字を確認することが重要です。 よくある設計の一例を挙げます。月2万円・20年払いの積立保険で、10年経過時点の解約返戻金が約180万円(払込総額240万円)というものです。そのまま満期まで払い続けた場合、受取額は260万円前後という設計になります。 この場合、「あと10年で+80万円」か「今解約して投資に回すか」の比較になります。年率換算すると約1%前後にとどまるため、保障ニーズがなければ見直しの優先度は高いと判断できます。 なお、金融庁が公表しているNISA口座開設数は2024年末時点で2,500万口座を超えており、30代の利用率も急速に上昇しています。「保険でコツコツ貯める」が当たり前だった世代から、「非課税口座で運用する」が標準になりつつある流れは押さえておくべきです。 あなたは解約を検討すべき?チェックリスト 以下のうち、当てはまるものを確認してみてください。 ...

2026年5月31日 · 最終更新: 2026年6月11日 · HIKO

オリックス生命「エンキャン」はNISAより得?|返戻率139.5%を実利回りで比較した結果

平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。年収300万円台で社会人をスタートし、保険業界で10年勤めたあと IT 企業へ転職、いまは FP2級として家計と投資を発信しています。投資歴は2015年からの11年。コナカ(7494)で9年超の塩漬けや、青山商事で-310,960円の含み損確定など、失敗もそれなりに経験してきました。 2025年12月にオリックス生命が「Yen Can(エンキャン)」という円建ての終身保険を発売しました。「円建てで増える終身保険」「払い終わったあとは払込総額を上回る」という打ち出しで、貯蓄性を気にする30代から「これってNISAより良いの?」という疑問が出てきそうな商品です。 この記事では、エンキャンを題材に「貯蓄できる終身保険は結局おトクなのか」を、低解約返戻金型の仕組み・返戻率・払込総額の関係から整理し、同じ金額を新NISAでインデックス積立した場合と比べてみます。 本記事は特定の保険商品の購入・解約を勧めるものではありません。保険・投資いずれも最終的な判断は契約者ご自身で、設計書・約款・最新の予定利率や目論見書を確認したうえで行ってください。商品情報は2026年5月時点で公式サイト等を参照したものです。なお、本記事はアフィリエイトリンクを含みます。 この記事の要点 低解約返戻金型は「払込中の解約返戻金を約7割に抑える代わりに保険料を割安にする」設計 返戻率は「払込からどれだけ寝かせたか」で決まり、実利回り(IRR)に直すと年1.3〜1.4%(実測)の水準にとどまる 同じ金額を新NISAでインデックス積立した場合、過去実績ベースの想定利回りでは差が大きく開く 保障が必要なら「掛け捨て+NISA」に分けるのが私の考え方 オリックス生命「エンキャン」とは|円建ての低解約返戻金型終身保険 まず商品の基本情報を整理します。以下はオリックス生命の公式サイトおよびオリックスグループのニュースリリース(2026年5月時点)から確認した内容です。 出典:オリックス生命公式サイト(2026年5月確認) 項目内容商品名(愛称)Yen Can(エンキャン)正式名称無配当 指定通貨建(円建)低解約返戻金型終身保険提供会社オリックス生命保険発売2025年12月2日通貨円建て(為替リスクなし)加入年齢男性15〜78歳・女性15〜80歳保険金額200万円から(100万円単位)告知2項目受取額契約時に確定 ポイントは「円建て」「告知2項目」「受取額が契約時に確定」の3点です。ここ数年は予定利率の高さを訴求できる「ドル建て終身保険」が貯蓄性商品の主役でしたが、エンキャンは為替リスクを取りたくない層に向けた円建ての終身保険、という位置づけになります。 なお、名前が似ているため混同されがちですが、エンキャンはオリックス生命の商品です。アフラックなど他社の商品ではありません。 低解約返戻金型の仕組み|「払込中は7割」がカギ エンキャンを理解するうえで一番大事なのが「低解約返戻金型」という設計です。 低解約返戻金型とは、保険料の払込期間中の解約返戻金を、通常の終身保険の約70%に抑える代わりに、毎月の保険料を割安にするタイプの終身保険です。オリックス生命の公式サイトでも、エンキャンは払込期間中の解約返戻金を「低く設定しない場合の70%」に抑える設計だと説明されています。 仕組みを言葉で整理すると、こうなります。 払込期間中(たとえば10年や20年)に解約すると、返戻金が払込総額を大きく下回る(元本割れ) 払込が満了したあとに解約すると、返戻金が払込総額を上回る(返戻率100%超) 払込後に寝かせる年数が長いほど、返戻率は上がっていく つまり「払込中は流動性をほぼ捨てる代わりに、保険料を抑えて満了後の返戻率を高くしている」商品です。途中でやめると損をする、という構造は低解約返戻金型に共通する特徴です。 エンキャンの返戻率|公式の試算例で見る払込総額との関係 公式サイトには、契約例として「30歳女性・基本保険金額1,000万円・10年払込」の数値が掲載されています(2026年5月時点)。これを使って、返戻率と払込総額の関係を見てみます。 項目値契約者30歳女性基本保険金額1,000万円月払保険料39,310円払込期間10年総払込額約4,717,200円(39,310円×120回) この前提での解約返戻率(公式試算例)は次のとおりです。 解約タイミング返戻率(公式試算例)払込満了直後(10年後)107.4%払込から10年寝かせ(20年後)122.5%払込から20年寝かせ(30年後)139.5% 返戻率だけ見ると「30年で139.5%」は大きく感じます。ただし、これは「払い込んだお金を何年寝かせたか」で決まる数字で、寝かせる年数が長いほど返戻率が上がるのは当然です。判断に使うべきなのは返戻率そのものではなく、時間を年率に直した**実利回り(IRR)**です。 返戻率139.5%は年利何%?|実利回り(IRR)に直して考える 返戻率と実利回りは別物です。ここを混同すると判断を間違えます。 返戻率:総払込額に対して、受け取る解約返戻金が何%か。時間軸を含まない単純な比率 実利回り(IRR):「いつ払って、いつ受け取るか」という時間軸を年率に均した利回り。投資商品の利回りと横並びで比較できる唯一の指標 上の公式試算例(30歳女性・10年払込)について、「月39,310円を120回(10年)払い込み、満了後に据え置いて解約する」月次キャッシュフローからIRR(内部収益率)を実測すると、次のとおりになりました。 解約タイミング返戻率実利回り(IRR・実測)払込満了直後(10年後)107.4%年1.41%払込から10年寝かせ(20年後)122.5%年1.35%払込から20年寝かせ(30年後)139.5%年1.34% 上記IRRは「月39,310円を120回払い込み、満了後そのまま据え置いて解約する」という月次キャッシュフローから二分法でIRRを実測した値です。実際の返戻金は契約年齢・性別・保険金額・払込期間・予定利率改定で変わるため、正確な数値は必ず最新の設計書で確認してください。 ポイントは、**返戻率139.5%でも実利回りは年1.3〜1.4%**だということです。しかも返戻率が107.4%から139.5%へ大きく上がっても、実利回りはほとんど動きません。寝かせる年数が延びるぶん、年率に均すと差が薄まるからです。これは円建て終身保険という商品ジャンルの宿命で、エンキャンが特別に低いわけではありません。円建ての貯蓄性保険は構造的に実利回り年1%台に収まりやすい、と捉えておくのが現実的です。 円建て終身保険の実利回りが伸びにくい理由は、主に次の3つです。 保障コストの上乗せ:終身保険なので、死亡保障のためのコストが保険料から差し引かれる 予定利率の水準:円建ては運用先が国内債券中心になりやすく、予定利率自体が高くしにくい 長期固定・低流動性:途中でやめると元本割れする設計のため、流動性プレミアムが取れない 同じ金額を新NISAで積み立てたら?|インデックス積立との比較 ここからが本記事の本題です。エンキャンの月払保険料(公式試算例で月39,310円)と同じ金額を、新NISAでインデックス投信に積み立てたらどうなるか。あくまで考え方を示すための概算比較です。 まず前提を揃えます。 積立額:月39,310円(公式試算例の保険料に合わせる) 積立期間:10年(払込期間に合わせる) その後の据え置き:保険の「払込後に寝かせる」期間に合わせる NISA想定利回り:年3%・年5%・年7%の3パターン(過去実績ベースの想定。将来を保証する数字ではありません) 3パターンを置いたのは、単一の楽観シナリオで結論を出さないためです。年5%は全世界株式インデックスの長期平均としてよく語られる水準、年3%はかなり保守的に見たケース、年7%は強気のケースです。この前提で、10年積立後に運用を継続した場合の評価額の目安は次のようになります(エンキャン側は公式試算例の返戻金の実額)。 経過エンキャン(円建終身)NISA年3%NISA年5%NISA年7%10年後約507万円約548万円約607万円約672万円20年後約578万円約737万円約988万円約1,323万円30年後約658万円約990万円約1,610万円約2,602万円 NISA側はいずれも「月39,310円を10年積み立て、その後は積立をやめて想定利回りで据え置き運用を継続した場合」の月初複利の概算です。手数料・税金・暴落・将来期待リターンの低下は織り込んでいません。年3〜7%は過去実績ベースの想定で、将来を保証するものではなく元本割れもあり得ます。エンキャン側は公式試算例の返戻金の実額です。 注目してほしいのは、最も保守的な年3%想定でも、長期ではエンキャン(30年後の返戻金658万円)をNISA(990万円)が上回るという点です。楽観的な前提に頼らなくても、長期では差がつきやすい構造だということです。もちろんこの差は運用利回り次第で縮みもしますし、NISAには死亡保障がありません。次の章で、この比較の落とし穴も書いておきます。 30年後の到達額イメージ(月39,310円・概算) 658万円 エンキャン 990万円 NISA年3% 1610万円 NISA年5% 2602万円 NISA年7% エンキャンは公式試算例の返戻金実額(30年後)、NISAは10年積立後に年3〜7%で据え置き運用を継続した月初複利の概算。年3〜7%は過去実績ベースの想定で、将来を保証する数値ではありません。 この比較の落とし穴|終身保険には「死亡保障」がある ここまで利回りでNISAが優位という整理をしてきましたが、これだけでは片手落ちです。エンキャンは終身保険なので、運用部分とは別に「一生涯の死亡保障(死亡・所定の高度障害)」がついています。NISAにはこれがありません。 ...

2026年5月30日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO