30代の転職は「職種を変えず業界を変える」が正解だった|保険業界10年→IT企業の実体験
新卒から約10年、保険業界で働きました。営業ではなく内勤の立場です。30代半ばでIT企業に移りましたが、職種は変えていません。今も同じ仕事をしています。 「30代の転職」と検索すると、異業種にチャレンジするか、同業他社で年収を上げるか、という二択で語られがちです。でも実際に動いてみて一番腹落ちしたのは、業界と職種、変えるのは片方だけで十分ということでした。その実感を正直に書きます。 30代の転職は「業界」か「職種」か、片方だけ変える 転職には、変えられる軸が2つあります。業界と職種です。 両方いっぺんに変えると、面接で語れる実績がほぼゼロになります。「未経験ですが頑張ります」は20代までのカードで、30代がこれを出すと年収が大きく下がります。逆に両方とも変えないと、それは転職というより配置換えに近く、環境の閉塞感は解消されません。 私が選んだのは職種を固定して業界だけ変えるやり方でした。職種はそのまま、保険業界からIT業界へ移った形です。 この選び方の何がよかったかというと、職務経歴書が書けたことです。「この職種で何年、何をやってきたか」が一本の線でつながっているので、業界が変わっても実績の説明が破綻しません。逆に職種を変えていたら、10年分の経験の大半が説明できない持ち物になっていたはずです。 保険業界10年で身につき、IT企業でも通用したこと 異業界に移って実際に評価されたのは、専門知識ではなく次の2つでした。 英語で仕事を回した経験 保険業界時代、英語を使う仕事をしていた時期がありました。当時は「この分野の知識は潰しが効かない」と思っていましたが、実際に評価されたのは英語で対外的な文書を作り、時差のある相手と調整を回した経験そのものでした。中身の専門性ではなく、進め方が評価されたということです。 6名規模のチームを回した経験 複数人のチームで案件を運営していました。30代の転職では、自分ひとりで何ができるかより、人を巻き込んで何を動かしたかのほうが強く効きます。ここは業界と完全に無関係でした。 逆に、業界の専門知識は1ミリも評価されなかった これが一番大きな学びでした。 10年かけて覚えた業界固有の知識、制度、用語、業界内の力学。業界を出た瞬間に、ほぼ価値がゼロになります。面接で聞かれたのは「保険業界で何を知っているか」ではなく、「その環境で何をどう動かしたか」だけでした。 つまり、持ち運べるのは知識ではなくやり方です。 これは転職しない人にとっても効く話だと思っています。今の会社で身につけているものが「その会社でしか通じない知識」なのか「どこでも通じるやり方」なのかを一度切り分けてみると、自分の市場価値の輪郭が見えます。前者ばかり増えている状態は、居心地はよくても資産にはなっていません。 30代の転職で年収はどうなったか 結論から言うと、上がりました。 ただし、これを「30代で転職すれば年収は上がる」と一般化するつもりはありません。上がった理由ははっきりしていて、業界ごとの給与水準の差です。同じ職種でも、業界が違えば相場が違います。私は自分の職種の市場価格が高いほうの業界に移動しただけで、能力が上がったから年収が上がったわけではありません。 ここが「職種を変えない転職」の一番わかりやすいメリットです。職種を固定すると、業界間の給与水準の差がそのまま年収差として乗ってきます。逆に職種まで変えると、未経験スタートの分がマイナスに効いて、業界差のプラスを打ち消してしまいます。 一方で、転職して初めて気づいたコストもあります。退職金や企業年金の扱いが変わることです。私自身は転職後に企業型DC(確定拠出年金)に加入していますが、この制度は転職のたびに手続きが発生します。年収の上げ幅だけを見て動くと、ここを見落とします。 あわせて読みたい:企業型DCって何?転職したら損しない?30代が知っておくべき全知識 転職活動で使ったのはビズリーチだけ 転職サービスをいくつも並行して使う人もいますが、私が使ったのはビズリーチだけです。 理由は単純で、スカウト型のほうが自分の市場価値がわかりやすかったからです。職務経歴書を書いて置いておくと、どういう業界の、どういうポジションから声がかかるかが見えます。これは求人サイトを自分で検索していても絶対にわからない情報でした。 実際、私は「保険業界の中でしか通用しない人間だ」と思い込んでいました。それが崩れたのは、まったく違う業界の企業から、同じ職種で声がかかったときです。自分の値札は自分では見えません。 なお、転職サービスは登録した時点で転職が確定するものではありません。職務経歴書を書いて置いてみるだけでも、自分の経歴の穴が見えるという意味で価値があります。私も最初に書いた職務経歴書は、実績の数字がひとつも入っておらず、後から全面的に書き直しました。 職務経歴書は「数字が入っているか」だけ見る 30代の職務経歴書で決定的に差がつくのは、実績が数値化されているかどうかです。 弱い例:「幅広い業務を担当しました」 強い例:「年間◯件の案件を担当し、◯名のチームで運営」 業界が変わっても、数字は共通言語として伝わります。私自身、最初の職務経歴書には数字がゼロで、これでは何ができる人間なのかまったく伝わらない状態でした。営業職ではなく数字が出しにくい仕事でも、「何人規模の案件を回したか」「年間で何件対応したか」なら書けます。 副業は「転職より簡単」ではありません 収入を増やす手段として副業もありますが、こちらは正直に書きます。私の副業はこのブログで、収益はほぼゼロです。 始めて3ヶ月ほど経ちますが、広告審査には2回落ちました。アクセスも1日あたり十数人という規模です。「月10万円稼げる副業」といった記事をよく見かけますが、少なくとも私が実際に手を動かした範囲では、副業で安定収入を作るのは本業と同じかそれ以上の労力がかかります。 それでも続けているのは、収入というより自分の経験を言語化する訓練になっているからです。ただ、家計の不安を解消する手段として副業を第一手に選ぶのは、私の実感としては遠回りです。30代なら、まず本業の市場価値を確認するほうが確実に早いと思っています。 副業を始める場合の実務的な注意点は2つだけ押さえてください。 就業規則の確認:副業禁止規定に違反すると懲戒のリスクがあります 住民税の納付方法:副業所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。住民税を「自分で納付(普通徴収)」にしないと、勤務先に副業収入が伝わることがあります 30代の転職で失敗しないための3つの前提 職種そのまま業界を変える 給与水準の差がそのまま乗る 実績が説明できる ★★★★★ 業界そのまま職種を変える 社内異動で試せる 年収は据え置きになりやすい ★★★☆☆ 業界も職種も変える 大きく環境が変わる 30代は年収ダウンの覚悟が要る ★★☆☆☆ そのうえで、私が実際にやってよかったこと・やらずに後悔しかけたことを3つ挙げます。 1. 在職中に動く 転職活動は在職中が鉄則です。辞めてから動くと、資金と精神の両面で追い詰められ、条件を妥協しやすくなります。 2. 職務経歴書を先に書く 求人を探す前に書きます。書いてみると、自分の10年に何が積み上がっていて何が積み上がっていないかが可視化されます。これは転職しない場合でも役に立ちます。 3. 年収の額面だけで判断しない 企業年金、退職金制度、持株会、健康保険など、額面に出てこない部分で条件は変わります。私は転職後、給与から積み立てる形の企業型DCに加入しています。この手の制度は入社してから初めて詳細を知ることも多いので、可能なら選考の段階で確認しておくべきでした。 あわせて読みたい:健康保険組合と協会けんぽの違い|転職前に確認したい付加給付・保険料率をFP2級が試算 あわせて読みたい:自社持株会は危険?2年やって分かったメリットとやめる基準 まとめ 30代の転職は、業界と職種のどちらか片方だけを変えるのが現実的 職種を固定して業界を変えると、業界ごとの給与水準の差がそのまま年収に乗る 業界を出ると、業界固有の知識はほぼ価値がなくなる。持ち運べるのは知識ではなくやり方 職務経歴書は数字が入っているかがすべて。転職しなくても書く価値がある 副業は本業以上に時間がかかる。収入を増やしたいなら、まず本業の市場価値の確認が先 お金の不安は、節約だけでは頭打ちになります。収入側を動かす選択肢を持っておくことが、30代の家計にとっては一番効きます。 あわせて読みたい 手取りが少ないと感じた原因は家賃だった|手取り35万・貯金ゼロ→月5万改善した話 固定費を下げる方法|まず見直すべき3つと優先順位【30代会社員が解説】 HIKO 保険業界10年勤務・30代IT会社員ブロガー 保険業界10年勤務後、IT企業に転職。生命保険・損害保険の「売り手側の論理」を知った上で、本当に必要な家計管理・投資の情報を発信。NISAや固定費削減の実体験をもとに、30代サラリーマンのお金の不安を減らすことを目指しています。 保険業界10年 IT転職 NISA実践中 固定費削減経験あり