ビジネスブレイン太田昭和(9658)を9年持ったら取得単価利回りが12%になりました
SNSで「年間配当金300万円達成」という投稿を見ると、多くの人がこう逆算します。 「配当利回り4%として、元本は7,500万円か。すごいな」と。 私自身も、配当300万円の人を見るたびに「元本7,500万円か…」と勝手に計算していました。でも、自分の保有株の数字を改めて見直したとき、この逆算は長期で持っている人にはまったく当てはまらないと気づきました。 きっかけは、私が9年前に買って、いまも持ち続けている1つの株でした。 配当利回りは「今の株価」に対する数字でしかない 配当利回りは、こう計算します。 配当利回り(%)= 1株あたり配当金 ÷ 今の株価 × 100 ここで大事なのは、分母が「今の株価」だということです。 たとえば配当が1株50円の株があったとして、今の株価が1,000円なら利回りは5%です。でも同じ会社の株を、株価400円のときに買っていた人にとっては、50 ÷ 400 で利回り12.5%ということになります。 同じ会社の、同じ配当金です。なのに、利回りはまるで違う。 何が違うかというと、買ったときの株価が違うだけです。 つまり「配当利回り4%」というのは、今この瞬間に買う人にとっての数字であって、もう何年も前に安く買って持っている人には当てはまりません。 YOC(取得単価ベース利回り)という考え方 この「買ったときの株価で計算した利回り」を、英語でYield on Cost(イールド・オン・コスト)、略してYOCと呼びます。日本語にすると取得単価ベースの利回りです。 一般的な配当利回り … 1株配当 ÷ 今の株価 YOC … 1株配当 ÷ 自分が買ったときの株価 長期で配当株を持っていると、この2つの数字はどんどん離れていきます。 理由は2つあります。 株価が上がると、後から買う人の利回り(今の株価ベース)は下がるが、安く買った自分のYOCは変わらない 増配が続くと、分子の配当そのものが増えていくので、自分のYOCはさらに上がっていく 時間をかけて持っているほど、自分だけ高い利回りで配当を受け取れる状態になっていく、ということです。 もちろん、これは万能の話ではありません。増配が止まったり、減配したりすればYOCは育ちません。株価が買値を下回ったまま戻らないこともあります。YOCが勝手に育つのは、あくまで「増配が続き、株価も大きく崩れなかった」場合に限る、という前提は最初に押さえておいてください(私自身の失敗例は後半で正直に書きます)。 実例:9年かけて、私のYOCは12%近くまで育った 抽象論だけだとピンと来ないので、私の保有株で説明します。私はビジネスブレイン太田昭和(9658)を、いまは600株持っています。平均取得単価は約385円です。 なお、ビジネスブレイン太田昭和は、会計や経営の分野に強いシステム会社です。企業向けの会計システムやERP、人事給与などの業務システムの開発・運用、経営や会計まわりのコンサルティングを手がけており、東証プライムに上場しています(コードの9658はこの会社を指します)。社名の「太田昭和」は、設立当時に出資元だった監査法人の名前に由来していますが、現在は資本関係はありません。ここでは「どんな会社か」のイメージだけ共有しておきます。 ただ、最初から600株を385円で買えたわけではありません。実際は9年かけて、買って・売って・また買って、その間に2回の株式分割をはさんでいます。きれいな話ではないので、正直に経緯を書きます。 2017年3月:最初に100株を1,045円で購入 2020年7月:1株が2株になる株式分割(保有100株 → 200株に) 2020年9月:そのうち100株を1,400円で売却(残り100株) 2024年9月:もう一度100株を1,785円ほどで買い増し(合計200株) 2026年4月:1株が3株になる株式分割(保有200株 → 600株に) この結果、いまの平均取得単価は分割後ベースで約385円に下がりました。途中で一度利益確定の売却をしたこと、2回の分割で株数が増えたこと、この2つが効いて、自分の取得単価がどんどん下がっていったわけです。 ここで利回りを2通りで見てみます。 計算の分母ざっくりの利回りこれから買う人今の株価(約1,025円)4.6%前後私(取得単価ベース=YOC)約385円約12% 楽天証券の私の保有画面(取引明細)より。2017年の買付から、途中の売却と2回の株式分割を経て、平均取得単価が385円まで下がっていることが確認できます 直近の予想1株配当(分割後)はおよそ47円です。これを今の株価で割ると利回りは4.6%前後ですが、私の取得単価385円で割ると、47 ÷ 385 で約12%になります。 同じ株の、同じ配当を受け取っているのに、今から買う人の利回りは4.6%前後、私の取得単価ベースだと12%近くです。 何か特別なことをしたわけではありません。安いときに買い、途中で一度利確し、分割で株数が増えるなかで持ち続けただけです。私が相場を読んだわけではなく、結果的に取得単価が下がっていったというのが正直なところです。 ここで念のため書いておきますが、これはあくまで私の取得単価が結果的にこうなったというだけの話で、ビジネスブレイン太田昭和という銘柄を「買うべき」とすすめているわけではありません。同じ株でも、今から1,025円で買う人の利回りは4.6%前後であって、私の12%ではないということが、まさにこの記事で言いたいことです。 ちなみに、これはこの株特有の現象ではありません。長く増配や成長を続けてきた会社であれば、同じことが起こり得ます。私自身が保有しているJTもそうで、長く持っている人ほどYOCが育っている可能性があります(※いずれも私が銘柄を推奨しているわけではなく、増配・分割が続いた場合に起きる現象の一般的な例です)。 だから「元本7,500万円」の逆算は外れる ここで最初の話に戻ります。 「年間配当300万円なら、利回り4%で元本7,500万円」という逆算。 でも、もしその人が私のように取得単価ベースで利回り8%や10%の株を中心に持っていたら、必要な元本は半分以下になります。 利回り4%で年300万円 … 元本7,500万円 利回り8%で年300万円 … 元本3,750万円 利回り10%で年300万円 … 元本3,000万円 もちろん全部の株がYOC10%になるわけではありません。私のポートフォリオにも、まったく増配の恩恵を受けられなかった株はあります。後で正直に書きます。 ...