企業型DCって何?転職したら損しない?30代が知っておくべき全知識
保険業界10年を経てIT企業に転職したHIKOです。保険会社には企業型DCがなく、転職して初めて「自分で運用先を選ぶ年金制度」に向き合いました。入社手続きの書類に「企業型DC加入について」という紙が入っていて、運用先を自分で選ばないと定期預金に全額振り分けられると知ったときは焦りました。同じように「よくわからないまま放置している」30代に向けて、使ってわかったことを整理します。 「企業型DC」という言葉、聞いたことはあっても「よくわからない」という方は多いと思います。 会社が積み立ててくれる制度だから放置でいいか、と思っているなら注意が必要です。運用先を選ばないと、増えないお金として30年後に後悔することになります。 そもそも、退職金そのものが以前より当てにしにくくなっています。厚生労働省「就労条件総合調査」によると、勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した人の1人平均退職給付額(大学・大学院卒/管理・事務・技術職)は、平成15年調査の2,499万円から令和5年調査では1,896万円まで下がりました。20年で約600万円の減少です。 ここは誤読されやすいので補足します。この調査の対象は「大企業」ではありません。令和5年調査は常用労働者30人以上を雇用する民営企業から抽出した約6,400社が対象(令和5年1月1日現在)で、中堅・中小を含んだ平均が1,896万円です。また平成15年調査の学歴区分は「大学卒」、令和5年調査は「大学・大学院卒」なので、厳密に同じ系列の比較ではありません。それでも、退職給付制度がある企業で定年まで勤め上げた人の平均がこの水準、という事実は変わりません。 退職金が細っているぶん、自分で運用先を決められる企業型DCをどう扱うかの重みは増しています。 企業型DCとは?3分でわかる基本 企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、会社を通じて毎月一定額を積み立て、従業員が自分で運用先を選ぶ年金制度です。 なお企業型DCには、会社が退職金原資として上乗せ拠出するタイプのほかに、選択制DC(給与原資型)と呼ばれるタイプがあります。選択制DCは給与の一部をDC掛金に振り替える仕組みで、会社が上乗せしてくれるわけではありません。私自身が加入しているのはこの選択制のほうです。どちらのタイプかで「得か損か」の考え方が変わるので、まず自分の会社の制度がどちらかを確認してください。 従来の確定給付型退職金制度と根本的に異なるのは、運用成績によって将来もらえる額が変わるという点です。定期預金にそのまま積み立てれば30年後も元本とわずかな利息しかありませんが、インデックスファンドで運用すれば2〜3倍になる可能性があります。 「会社が勝手にやってくれる」制度ではなく、「会社が積み立てて、育て方は自分が決める」制度です。 項目内容積み立てる人会社(事業主掛金)+本人のマッチング拠出も可運用先の選択自分で選ぶ上限額(他制度なし)月5.5万円(2026年12月1日施行の改正で月6.2万円へ)受取開始年齢原則60〜75歳の間で選択税制優遇運用益が非課税 拠出限度額は2026年12月1日施行の改正で引き上げられます。厚生労働省の事務連絡(令和8年7月13日)にも「現行の5.5万円から6.2万円に引き上がる」と明記されています。根拠は令和7年政令第442号と令和8年厚生労働省令第111号です。規約で施行令を引用している会社は規約変更なしで自動的に6.2万円へ上がりますが、金額をベタ書きしている会社は規約変更をしない限り5.5万円のままなので、自分の会社がどちらかは規約で確認する必要があります。 iDeCoとの違いは? よく混同される「iDeCo(個人型確定拠出年金)」との違いを整理します。 項目企業型DCiDeCo掛け金を払う人会社(事業主掛金)+本人のマッチング拠出自分上限額(会社員)月5.5万円まで(他制度なし)企業年金なしなら月2.3万円/企業型DC加入者は月2万円節税効果運用益が非課税掛金も所得控除+運用益非課税転職したら手続きが必要そのまま継続可 iDeCoの上限は「会社員なら一律で月2万円」ではありません。確定拠出年金法施行令第36条では、勤務先に企業年金がない会社員(第2号加入者)は月2万3,000円、企業型DCに加入している人や確定給付企業年金などの他制度に加入している人は月2万円と区分が分かれています。後者は事業主掛金等が月3万5,000円を超えると、超えた分だけiDeCoの枠が削られます。 企業型DCとiDeCoの違いは、掛金が会社の制度を通じて拠出されるか、自分で金融機関に申し込んで拠出するかという点にあります。 上乗せ拠出型の企業型DCであれば、掛金は会社が退職金原資として出してくれるものなので、運用先を選ばずに放置するのはもったいない制度です。一方の選択制DCは自分の給与を振り替えているので、社会保険料の算定基礎が下がる(=将来の厚生年金や傷病手当金などが目減りする可能性がある)という裏側も含めて判断する必要があります。いずれにしても、加入している以上は運用先を選ばずに放置しないことが要点です。 運用先を放置すると損する理由 企業型DCで最もやりがちなミスが「デフォルト(初期設定)のまま放置」です。 多くの企業では、加入手続き時に運用先を指定しないと元本確保型(定期預金や保険)に全額振り分けられます。 実際、運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」(2025年3月末)では、企業型DCで元本確保型のみで運用している人の割合は21.2%です。年々下がってはいます(2021年3月末32.1%→2025年3月末21.2%)が、iDeCoの16.9%より高い水準が続いています。 企業型DCのほうが放置されやすいのには、構造的な理由があります。 入社時に自動加入となり、商品を選んでいる意識が薄いまま始まる 運用教育が入社時の単発で終わり、変更するタイミングを逃しやすい 自分のIDで運用画面にログインしたことがないまま年数が経つ 投資経験がないと「とりあえず元本確保型」を選んでそのまま忘れる つまり「危険な選択をした」のではなく、選び直す機会を持たないまま時間が過ぎている人が多い、というのが実態に近いと感じます。 ここで注意したいのは、DC専用の定期預金の利率は運営管理機関ごとに違い、店頭の定期預金とも一致しないことです。市中金利が上がった局面では店頭金利も動いています(三井住友銀行の円預金金利はスーパー定期1年で0.500%、10年で1.250%=2026年8月12日現在の掲載値)。自分のDCの利率は、必ず運用商品一覧の画面で実際の数値を確認してください。「定期預金だから年0.0何%」と決めつけて判断しないほうが安全です。 一方、インデックスファンド(全世界株式や全米株式)を選んでいれば、長期では年3〜7%程度の成長が期待できます(過去の実績をもとにした一般的な期待値で、将来の成果を保証するものではありません)。 20年間・毎月1万円を積み立てた場合、想定年利で受取額はこれだけ変わります。 想定年利0.1%:約242万円 想定年利5%:約411万円 約170万円の差です。「放置は損」というよりも「機会を捨てている」状態です。 20年・月1万円積立の想定年利別の受取額(万円) 242万円 年0.1%と仮定 411万円 年5%と仮定 いずれも仮定の年利による試算です。実際のDC定期預金の利率は運営管理機関ごとに異なるため、自分の画面で確認してください。 私が転職直後に真っ先にやったのが、この運用先の変更です。会社のDC専用サイトにログインして、外国株式インデックスファンド(MSCIコクサイ連動・信託報酬0.275%)への振り分けを設定しました。30分もかかりませんでした。その後、ラインナップにより信託報酬の低いS&P500インデックスファンド(0.198%)が追加されたタイミングで、そちらへ一本化しています。 元本確保型が向いている人もいる 前提として書いておきます。元本確保型が誰にとっても悪い選択肢、というわけではありません。次のような方には合理的な選び方です。 退職まで5年を切っている:相場が下落したときに回復を待つ時間がありません 生活防衛資金が不足している:DC残高にも安全資産を置いておきたい局面があります 値動きで眠れなくなる:精神的な耐性は本人にしかわかりません NISAなど他の口座で十分にリスクを取っている:DCをバランス調整に使う考え方があります 大事なのは、自分で比べたうえで選んでいるかどうかです。この記事で問題にしているのは元本確保型そのものではなく、選択肢を比べないまま放置している状態のほうです。 転職したときの手続き 転職時に企業型DCを「どう持ち運ぶか」は必ず考えておく必要があります。放置すると管理手数料だけが引かれ続ける状態になります。 パターン①:転職先にも企業型DCがある場合 前の会社のDC資産を移換(ポータビリティ)できます。転職後6ヶ月以内に手続きが必要です。放置すると自動移換されますが、自動移換先の口座では管理手数料がかかり続け、かつ運用先が制限されます。早めに手続きをしましょう。 パターン②:転職先に企業型DCがない場合 iDeCoに移換します。iDeCo口座を開設して、資産を受け取る形で移換手続きを行います。これにより引き続き運用を続けることができます。 iDeCoの口座は一度開いたら長期間使い続けるので、運営管理手数料がかからず・低コストのインデックスファンドが揃っている証券会社を選ぶのが鉄則です。私が記事内で比較・整理してきた中では、運営管理手数料0円・取扱商品40種類(松井証券調べ。法令上の商品数はターゲットシリーズを1商品とするため31商品)の松井証券などが候補になります。 なお、iDeCoは運営管理手数料が0円の金融機関を選んでも、国民年金基金連合会への手数料が掛金納付の都度105円かかります(新規加入・資産移換時には別途2,829円)。これに加えて事務委託先金融機関の手数料もかかりますが、こちらはiDeCo公式サイトも「機関により異なる」としており金額を公表していません。「手数料が完全にゼロ」ではない点は押さえたうえで、申込先の手数料表で実額を確認してください。 iDeCoへの移換先として|松井証券 運営管理手数料0円・取扱商品40種類(松井証券調べ/法令上は31商品)・電話サポートHDI三つ星15年連続。企業型DCからiDeCoへの移換先として、長期保有との相性が良い1社です。 松井証券でiDeCo口座を開く → ※アフィリエイトリンクを含みます。 パターン③:自営業・フリーランスになる場合 iDeCoに移換するか、国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換先は手数料がかかるため、早めにiDeCoへの移換手続きを行うことをおすすめします。 ...