保険業界に10年在籍したのちIT企業へ転職した、平成時代を生きた30代のHIKOです。FP2級保有、年収300万円台からのスタートで投資歴は11年(2015年NISA開始)。失敗もしながら資産形成を続けています。今回は「保険外交員に積立保険を勧められたけれど、本当に得なのか」と悩む30代会社員に向けて、主要な積立保険の実利回り(IRR)を概算で比較し、NISAやiDeCoとの機会損失差まで整理します。

先に 住友生命Chakinの実利回り検証記事 を書いたところ、検索からの流入が想像以上にありました。Chakinは新商品ですが、既存の「明治安田生命 つみたて」「日本生命 みらいのカタチ」「ドル建て終身保険」「学資保険」「養老保険」「変額保険」も、考え方の枠組みは同じです。本記事はそのクラスター記事として、検討対象になりやすい6タイプを横並びで見られるようにまとめます。

この記事の要点

  • 積立保険のIRRは年0.3〜1.5%が中心
  • NISA/iDeCoの期待リターンとの差は長期で大きく開く
  • ただし「強制貯蓄」「相続対策」など保険が合理的なケースもある

結論|積立保険の実利回りはNISAやiDeCoの数分の一

最初に結論を出します。日本で売られている主要な積立保険の実利回りは、概ね年0.3〜1.5%のレンジに収まります。一方、NISAやiDeCoで全世界株式・S&P500などのインデックス投信を積み立てた場合、過去実績の長期想定利回りは**年3〜5%**で語られることが一般的です。

(注:NISA・iDeCoの「年3〜5%」は過去の長期インデックス投信実績から語られる目安で、将来を保証する数値ではありません。詳細な前提は記事末尾の免責に記載しています)

両者の差は単年で見ると小さく見えますが、20〜30年の積立では複利で数百万円〜1,000万円規模の機会損失になり得ます。「積立保険=悪」という極論ではなく、**「同じ金額を税優遇つき投資に回した場合との差を必ず計算する」**ことが、30代の資産形成では非常に重要です。

ただし、保険には「死亡保障」「就業不能保障」など投資商品にはない機能があります。本記事では「保障」と「貯蓄」を切り分けて考え、貯蓄部分の実利回りに絞って評価します。これは保険業界10年で見てきた中で、もっとも現実的な判断軸でした。


実利回り(IRR)とは何か|表面利回りとの違い

比較に入る前に、用語を整理します。

  • 表面利回り:保険会社が提示する「予定利率」「返戻率」など。総払込額に対する増加額を単純に比率化したもの
  • 実利回り(IRR:内部収益率):「いつ払って、いつ受け取るか」のキャッシュフロー時間軸を組み込んだ年率換算の利回り。投資商品の利回りと比較できる唯一の指標

たとえば「30年で返戻率120%」と聞くと一見大きく見えますが、IRR換算すると年率約0.6%です。表面利回りはマーケティング上の数値、IRRが現実の数値、と覚えておくと判断を間違えにくくなります。

なお、本記事の試算はすべて2025〜2026年時点の公開情報および各社販売設計例から逆算した概算値であり、実際の契約条件・付帯保障内容・予定利率改定によって変動します。最終判断は契約書の設計書と直近の予定利率で行ってください。


主要積立保険6タイプの実利回り比較【円建て・ドル建て・変額別】

代表的な積立保険6タイプを、概算ベースで一覧にします。具体的な商品名はあくまで「カテゴリ代表例」として挙げています。

商品タイプ代表商品例表面利回り(予定利率/返戻率換算)実利回り(IRR概算)NISAインデックス(年5%想定)との差
円建て終身保険各社の低解約返戻金型終身予定利率 約0.5〜1.0%約0.3〜0.7%大きい(複利差で数百万円規模)
個人年金保険日本生命「みらいのカタチ」年金保険 等返戻率 約110〜125%(30年)約0.4〜1.2%中〜大
ドル建て終身保険各社のドル建て一時払・平準払終身予定利率 約3.0〜4.0%約1.0〜2.0%(為替+コスト控除後)中(為替変動リスク込み)
変額保険各社の変額終身・変額個人年金ファンド連動信託報酬控除後で投信よりやや劣後同等運用が低コストで可能
学資保険各社の学資保険返戻率 約103〜108%(17〜18年)約0.3〜0.8%大きい
養老保険各社の養老保険返戻率 約103〜108%(10〜30年)約0.3〜0.7%大きい

上表のIRR概算値は、2025〜2026年時点の各社公開設計書・販売設計例・予定利率の一般的な水準をもとに逆算した概算です。実際の数値は契約年・健康状態・特約付加・予定利率の改定により変動します。本記事の数値は「商品カテゴリの大まかな水準」を示すもので、個別契約の最終判断は最新の設計書に基づいてください。

ここから1つずつ詳細を見ていきます。


明治安田生命「つみたてだいすき」は得か?|実利回りを試算

「つみたてだいすき」(明治安田生命の積立保険)は、毎月の保険料を一定期間払い込んで、満期で受け取る平準払い型の積立保険です。販売現場では「銀行に預けるよりは増える」「強制力があって貯まる」という訴求でよく勧められます。

ここでは、よく案内される設計に近い月1万円・10年払い込み・満期一括受取を前提に、概算IRRを試算します。具体の返戻率は契約年・健康条件で変動するため、ここでは「総払込額120万円→満期受取126万円(返戻率105%)」を仮置きします。

項目
月払い保険料10,000円
払込期間10年(120ヶ月)
総払込額1,200,000円
満期受取額(仮定)1,260,000円
返戻率(表面)105%
実利回り(IRR概算)年率 約0.9%

返戻率105%は「10年で5%増えた」という見え方ですが、毎月積み立てている時間軸を反映するとIRRは年0.9%程度に落ち着きます。

参考:IRR(実利回り)の計算過程

上記の年率0.9%という数値は、以下のキャッシュフローからExcelのXIRR関数で逆算したものです。

経過年キャッシュフロー(円)備考
1年目-120,000月1万円×12ヶ月の払込
2年目-120,000同上
3〜9年目各 -120,000同上
10年目-120,000払込最終年
10年目満期+1,260,000満期受取金

このキャッシュフローをExcel/Google Sheetsに貼り付け、=XIRR(値の範囲, 日付の範囲) を実行すると年率約0.9%が算出されます。返戻率105%(10年で5%増)という見え方と、年率0.9%という数値の差は、「お金を払ってから受け取るまでの時間」を年率に均す処理から生まれています。

※本記事のNISA試算はすべて「毎月積立・年率5%複利・手数料および税金は考慮外」の単純シミュレーションです。将来のリターンを保証するものではなく、市場環境により元本割れの可能性もあります。

同じ月1万円を10年間、NISAでインデックス投信(年5%想定)に積み立てた場合の評価額は約155万円となり、両者の差は約29万円です。

10年で30万円弱の差なら許容範囲、と感じる人もいると思います。ただし「積立保険を10年継続できる人は、その後の20年も同じ習慣を維持できる」傾向が強いです。同じペースを30年続けると差は数百万円規模に広がります。


日本生命「みらいのカタチ」個人年金は得か?|実利回りとデメリット

日本生命「みらいのカタチ」は、終身保険・年金保険・医療保険などをパーツで組み合わせる商品群の総称です。ここでは個人年金保険部分にフォーカスします。

個人年金保険の魅力としてよく挙げられるのが、**個人年金保険料控除(年最大4万円)**です。所得税率10%・住民税率10%の年収帯(概ね課税所得330万円以下)なら、年間8,000円程度の節税効果があります。

しかし、利回り側を冷静に見ると以下のとおりです。

項目値(概算)
月払い保険料10,000円
払込期間30年
総払込額3,600,000円
受取総額(10年確定年金など)約4,000,000〜4,300,000円
返戻率約111〜119%
実利回り(IRR概算)年率 約0.7〜1.2%

ここに節税効果を加算しても、トータルの実質リターンは年1.0〜1.5%程度にしか届きません。同じ30年で同額をiDeCoに拠出した場合、所得控除(年12〜27.6万円拠出可、所得税+住民税で同率の節税)と運用益非課税が両方効くため、想定利回り3%でも実質的な手残り効率は個人年金保険を大幅に上回ります。

主なデメリットを3つ整理しておきます。

  • 流動性が低い:途中解約で元本割れの可能性が高い
  • インフレに弱い:名目固定利率なので、物価上昇局面では実質目減りする
  • 保険会社の信用リスク:30年単位で1社の破綻リスクを背負う

「みらいのカタチ」自体は柔軟性のある商品設計ですが、年金保険パートに関してはiDeCoの方が税優遇・運用効率の両面で優位というのが、FP視点での評価です。


ドル建て終身保険は解約したほうがいい?|表面と実質の利回りギャップ

ここ数年、超低金利環境下で「ドル建て終身保険」の販売が増えました。提案書には「予定利率3〜4%」と書かれていることが多く、円建て商品と比べて見栄えが良いのは事実です。

ただし、表面の予定利率と実質利回りの間には大きなギャップがあります。

控除要因概算インパクト
保険関係費用(死亡保障・運営コスト)年 -0.8〜-1.5%
為替手数料(円→ドル、ドル→円)一般的に片道50銭〜1円/ドル
為替変動リスク円高方向に振れた場合は元本割れリスク

予定利率3.5%の商品でも、コスト控除後のドルベースIRRは概ね年1.5〜2.5%、円換算で受け取った場合の最終的な実利回りは為替次第で年0〜2%程度のレンジに落ちることが多いです。

「予定利率3.5%」を期待してドル建て終身保険に加入すると、為替リスクを取った割にリターンが米国株インデックス投資より低いという結果になりがちです。米国株インデックス(S&P500)の長期想定利回りはドルベースで年6〜8%が一般的に語られる水準で、同じ為替リスクを取るならインデックス投信の方が圧倒的に効率が良いです。

ドル建て終身保険が向いているのは、「死亡保障をドル資産で持ちたい」かつ「30年以上保有可能」かつ「為替変動を許容できる」人に限定されます。「なんとなく利回りが良さそうだから」で入るのは、機会損失が大きすぎます。


変額保険の実利回りはなぜNISAに劣後するのか

変額保険(変額終身・変額個人年金)は「投資型の保険」と訴求され、表面的にはNISAと似た構造に見えます。実際は以下の要因で長期リターンがNISAインデックス投資に劣後するケースが大半です。

1. 特別勘定の信託報酬がNISA向け投信より高い

変額保険の運用は「特別勘定」と呼ばれる投信類似の仕組みで行われますが、信託報酬は概ね**年1.5〜2.0%が一般的です。一方、NISAで使える低コストインデックス投信(eMAXIS Slim全世界株式など)は年0.05〜0.15%**で運用できます。年率コスト差は1.5%前後に達します。

2. 保険関係費用の二重取り

変額保険には特別勘定の信託報酬とは別に、死亡保障コスト・契約管理費用が積み上がります。トータルの実質的な運用コストは年率2〜3%程度に達することがあり、市場リターンの大半をコストで失います。

3. NISAとの構造比較

項目変額保険NISA(インデックス積立)
信託報酬/運用コスト年1.5〜2.0%+保険関係費用年0.05〜0.15%
死亡保障あり(最低保証額あり)なし
税優遇生命保険料控除(年最大4万円)運用益非課税
流動性解約控除ありいつでも売却可
元本保証死亡時の最低保証はあり、満期時の元本保証はなしなし

4. 死亡保障の最低保証は魅力か

変額保険の特徴である「死亡保障の最低保証」は、運用が大幅マイナスでも死亡時には設定保険金額が支払われる仕組みです。ただし、同じ保障額を掛け捨ての定期保険で確保すれば保険料は数分の一で済むため、コストパフォーマンスは劣ります。

「保障」と「運用」を1商品にまとめる商品設計の宿命として、それぞれを別商品(掛け捨て+NISA)に分けたほうが効率的というのが、コスト面から見たFPの一般的な評価です。


学資保険・養老保険の実利回りは何%?低い理由を分解

学資保険の返戻率は、現在の予定利率水準で**17〜18年積み立てて約103〜108%が一般的です。IRR換算すると年率0.3〜0.8%**となり、銀行預金よりはやや上、という水準です。

養老保険も構造は近く、「保障期間中に死亡したら保険金、満期まで生きていたら満期金」という商品ですが、保障コストが上乗せされるため**実利回りは円建て終身保険と同水準(年0.3〜0.7%)**にとどまります。

学資保険・養老保険の利回りが低い理由は3つあります。

  1. 予定利率自体が低い:低金利環境で運用先が国内債券中心のため
  2. 保障コストの上乗せ:純粋な貯蓄商品ではないので、死亡保障コストが差し引かれる
  3. 長期固定:途中解約ペナルティが大きく、流動性プレミアムが取れない

子どもの教育資金準備には、「掛け捨ての死亡保障(収入保障保険など)+NISA積立」の組み合わせの方が、保障とリターンの両面で効率が良いケースが多いです。

ただし、これは子どもが居る世帯前提の話で、私のように夫婦二人暮らし(子どもなし)の場合は学資保険そのものが不要です。本記事では「子どもあり世帯の選択肢」として整理しています。


積立保険よりNISA・iDeCoが先な3つの理由

ここまでの数字を踏まえて、なぜ積立保険より先にNISAやiDeCoを使うべきかを整理します。

理由1:実利回りの差が複利で大きく開く

比較項目新NISAiDeCo積立保険
想定利回り年3〜5%(インデックス積立)年3〜5%(インデックス積立)年0.3〜1.5%
流動性高い(いつでも売却可)60歳まで原則引き出し不可解約控除あり・元本割れリスク
税優遇運用益非課税拠出時所得控除+運用益非課税生命保険料控除(年最大4万円)
死亡保障なしなしあり
信用リスク投信の運用会社・信託銀行で分別管理同左保険会社1社に集中

月3万円・30年積立で比較した場合の概算到達額は以下のとおりです。

制度想定利回り30年後評価額(概算)
新NISA(インデックス積立)年5%約2,500万円
新NISA(インデックス積立)年3%約1,750万円
iDeCo(インデックス積立)年5%+所得控除分約2,500万円+節税200〜300万円
円建て積立保険年0.7%約1,200万円

※上記は過去の全世界株式・S&P500などの長期平均リターンを参考にした単純シミュレーションです。将来のリターンを保証するものではなく、相場環境によっては長期低迷・元本割れの可能性もあります。30年間の複利計算は元本変動・暴落・取り崩しタイミング・為替変動・将来期待リターンの低下を一切織り込んでいません。

積立保険と新NISA(年5%想定)の差は約1,300万円になります。30年という時間が複利を最大化する一方、利回りの差を残酷に拡大します。

一方で、実際の投資リターンは市場環境によって大きく変動します。将来30年間にわたり年5%前後のリターンが継続する保証はなく、長期低迷局面では差額が縮小する可能性もあります

ただしこれは前提条件が成立した場合の差であり、運用環境次第ではNISA側が想定を下回る可能性も十分にあります。重要なのは「保険とNISAの想定差を一度は計算してみる」という姿勢です。

理由2:税優遇の質が違う

  • NISAの運用益非課税:本来かかる20.315%の税金がゼロ
  • iDeCoの所得控除:年収500万円帯(所得税10%・住民税10%)なら、拠出額の20%が即時節税
  • 生命保険料控除:所得税で最大4万円、住民税で最大2.8万円控除(年間8,000円程度の節税)

iDeCoの所得控除は「拠出した瞬間に手元に戻る節税効果」なので、運用利回りに上乗せされる確実なリターンとして機能します。同じ「節税商品」と言っても、効率はまったく違います。

理由3:流動性とコントロール権

積立保険は「途中解約=元本割れ」のリスクがあり、ライフイベントの変化に弱いです。30代は転職・結婚・出産・住宅購入など、家計の流れが大きく変わるイベントが集中する時期です。「途中で減額・停止できない」固定費を増やすこと自体がリスクになります。

NISAは流動性が高く、家計が苦しくなったら積立を止めるだけで済みます。iDeCoは引き出しはできませんが、拠出額の減額・停止はいつでも可能です。


保険業界10年で見てきた「売れ筋商品」と、私がNISAを選んだ理由

ここからは、業界に身を置いた立場からの実感です。

私自身は保険業界に10年在籍しました。業界全体を見ていて、貯蓄性商品として売れ筋だったのは「ドル建て終身保険」と「個人年金保険」の2つです。理由はシンプルで、「予定利率が高く見える」「節税できる」「将来のために必要」という3つの言葉が刺さりやすいからです。

低金利環境が続き、円建て商品の利回り訴求が難しかった背景もありました。販売側に悪意があるというよりは、金利環境と顧客ニーズが合致した結果として、これらが主力商品になっていたという構造的な要因が大きいと考えています。

そして私自身が資産形成の中心に据えたのは、積立保険ではなくNISAでした。理由は2つあります。

  1. 実利回りを計算すると、どう見ても積立保険はNISAに負けていた
  2. 30年単位の固定費を1社に預けるリスクを取りたくなかった

実際、私はNISA(旧制度)を2015年から続けていて、配当だけで税引後累計約90万円(2015〜2024年)を受け取っています。途中、青山商事で-31万円の失敗もしましたが、トータルでは積立保険を10年続けた場合と比較して大きく上回っています。失敗込みでも、税優遇のある株式投資の方が積立保険より効率が良いという実感があります。

業界全体を見ても、「保障は掛け捨ての最低限にして、NISAやiDeCoを優先する」という考え方は、近年むしろ標準的になりつつあります。制度面でも、今のNISA・iDeCoは個人の長期資産形成にとって過去のどの時代より有利な設計です。


積立保険が合理的に選ばれるケース

ここまでの数字で「積立保険=非効率」という整理をしてきましたが、それでも積立保険を選ぶことが合理的な人もいます。代表例を挙げます。

ケース1:強制貯蓄性が必要な人

「給与振込口座にお金が残っていると使ってしまう」「NISAだと暴落時に解約してしまいそう」というタイプの人にとって、解約控除や満期前提という強制力は実利回り低下を補って余りある価値になり得ます。

ケース2:投資の値動きに耐えられない人

株式インデックスの暴落(30〜50%下落)局面で、生活が立ち行かなくなる・夜眠れなくなるレベルの不安を抱える人は、利回りより「元本ほぼ確保」を優先する選択も合理的です。投資のメンタル耐性は人によって大きく異なります。

ケース3:相続対策(一定の高額資産家)

死亡保険金には法定相続人×500万円の非課税枠があり、預貯金として相続させるより税務効率が良いケースがあります。資産規模が相続税課税ラインを超える世帯では、終身保険を相続税対策の一部として活用する選択は十分合理的です。

ケース4:障害のある家族の生活保障

障害のある子どもや家族の長期的な生活費確保には、確定給付の保険商品が向く場面があります。投資の不確実性を背負わせたくない場面で、確定額が約束される保険の価値は大きくなります。

ケース5:自営業者の資産隔離

個人事業主・自営業者にとって、保険は事業資産と切り離して保全できる手段として機能します。倒産・差押のリスクを織り込むと、利回り効率より保全性を優先する判断はあり得ます。

上記に当てはまる場合、本記事の「実利回りでNISA/iDeCoが優位」という結論は必ずしも当てはまりません。自分のライフプラン・性格・家族構成に応じて判断軸を選ぶことが大切です。


解約すべき/続けても良い積立保険の判断基準

ここまでの整理を踏まえて、「今加入している積立保険を続けるか解約するか」の判断軸を提示します。詳細な解約判断基準は積立保険の解約判断記事で5条件を整理していますが、ここでは利回り視点に絞ります。

解約検討してよい条件(2つ以上当てはまるなら見直し)

  • 実利回り(IRR)が年1.0%未満
  • NISAやiDeCoの非課税枠をまだ使い切っていない
  • 加入から10年以上経過していて、解約返戻金が払込元本に近い水準まで戻っている
  • ドル建て・変額型で、為替や運用方針の理解が曖昧なまま加入した
  • 保険料が手取りの5%以上を占めている

続けてもよい条件

  • 加入してまだ数年で、解約控除が大きく元本割れ幅が大きい
  • 「死亡保障」と「貯蓄」をワンストップで管理したい明確な意思がある
  • 既にNISA・iDeCoを満額活用していて、追加で長期非課税枠的な機能が欲しい
  • 保険会社の予定利率が現在の市場金利を上回っており、解約損より将来増加見込みが大きい

「解約するか・続けるか」の最終判断は、「今すぐ解約した場合の解約返戻金」と「解約せず満期まで持った場合の受取額」の差を、IRRで比較することでほぼ決まります。設計書を取り寄せて、計算してから判断してください。

なお、解約手続き自体は思っているより簡単で、コールセンター連絡→書類送付→記入返送→2〜4週間で振込、という流れが一般的です。「解約は損」という呪縛より、「これからの30年の機会損失」を見たほうが、冷静に判断できると思います。


目的別|どれを選ぶのが合理的か

ここまで利回り比較をしてきましたが、「結局どれを選ぶべきか」を目的別に整理します。

目的第1候補補足
貯蓄重視(流動性確保)新NISAいつでも売却可、運用益非課税
節税+老後資金iDeCo拠出時所得控除+運用益非課税
教育費(強制積立性を重視)新NISA+掛け捨て死亡保障学資保険は実利回り0.3〜0.8%で機会損失大
死亡保障の確保掛け捨ての定期/収入保障保険同保障額なら積立型より圧倒的に安い
相続対策(一部の高額資産家)終身保険死亡保険金の非課税枠活用シーンに限定
投資初心者の最初の一歩新NISAでインデックス積立月1万円から始められる

大まかには、「保障」と「貯蓄・運用」を分けて、それぞれに最適な道具を使うのが合理的です。積立保険は「保障」と「貯蓄」を1商品で兼ねようとした結果、両方の効率が落ちている、という構造です。


まとめ|実利回りで比較すれば、優先順位は明確になる

最後に、本記事の要点を整理します。

  • 主要な積立保険の実利回りは**年0.3〜1.5%**のレンジ
  • NISAやiDeCoの想定利回り(年3〜5%)と比較すると、30年積立で1,000万円単位の機会損失になり得る
  • ドル建て終身保険は表面利回り3〜4%でも、実利回りは年1〜2%程度
  • 学資・養老保険は構造的に低利回りで、子どもの教育資金は「掛け捨て+NISA」の組み合わせの方が効率的
  • 個人年金保険より、所得控除と運用益非課税が両立するiDeCoの方が節税・運用効率ともに優位
  • 変額保険は信託報酬と保険関係費用の二重取りで、同等運用がNISAなら年0.05〜0.15%のコストで実現できる
  • 強制貯蓄性が必要な人、相続対策、自営業者の資産隔離など、積立保険が合理的に選ばれるケースもある
  • 解約・続行の判断は「実利回りIRR」で必ず比較する

保険は「保障」のための商品で、「貯蓄・運用」の手段としては効率が悪いというのが、保険業界10年・FP2級の現場感覚です。今のNISA・iDeCo制度は、過去のどの時代と比べても個人にとって圧倒的に有利な設計になっています。先に枠を使い切ってから、余力で保障商品を検討する順番が、合理的です。

NISAやiDeCoの始め方は NISA初心者向け記事iDeCo初心者向け記事 にまとめています。証券口座開設で迷う場合は 証券口座比較記事 も参考にしてください。

実際、積立保険を見直した人が最初にやるべきなのは、「保障を減らす」ではなく**「税優遇口座を先に埋める」**ことです。NISAの非課税枠を埋め、それでも余裕があればiDeCoで所得控除を取りに行く、という順序が手取り効率の面でもっとも効きます。

iDeCoは「拠出した瞬間に節税」という確実なリターンが効くので、積立保険の生命保険料控除より節税効率が高いです。

iDeCoの代表的な金融機関を比較

金融機関運営管理手数料商品ラインナップサポート
SBI証券0円業界最多水準Webチャット中心
楽天証券0円主要インデックス充実電話・Web
松井証券0円必要十分なインデックス電話相談が手厚い

主要ネット証券3社はいずれも運営管理手数料0円で、商品ラインナップにも大きな差はありません。商品数重視ならSBI証券、楽天経済圏との連携重視なら楽天証券を選ぶ人も多いです。一方で、初めてのiDeCoで電話相談を使いたい人や、画面操作に不安がある30代会社員には、サポート品質で選ばれている松井証券が現実的な選択肢になりやすいです

松井証券のiDeCoで節税しながら老後資金を作る
運営管理手数料0円・電話サポート充実。積立保険の生命保険料控除より、iDeCoの所得控除のほうが節税効果が大きい。保険から投資への乗り換え先として現実的な選択肢です。
松井証券iDeCoを見る →
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よくある質問(FAQ)

Q1. 積立保険は途中解約すると損ですか?

加入から初期10年程度は解約控除が大きく、解約返戻金が払込元本を下回るケースが多いです。ただし「これから30年払い続けるリスク」と「今解約して機会損失を止めるメリット」を比較するのが本来の判断軸です。設計書を取り寄せて、解約返戻金と満期予定額の差をIRRで比較してから判断してください。

Q2. ドル建て終身保険はやめたほうがいいですか?

「為替リスクを理解した上で、30年以上保有でき、円高局面でも生活に影響がない」人以外は慎重に検討すべきです。表面利率3〜4%という見え方に対し、コスト・為替手数料控除後の実利回りは年0〜2%程度に落ちることが多く、米国株インデックス投資(ドルベース年6〜8%)と比較するとリターン効率は劣ります。

Q3. 学資保険とNISAはどっちがいいですか?

「元本ほぼ確保+強制積立性」を最重視するなら学資保険、「期待リターン重視+家計柔軟性」を取るならNISA積立、というのが基本的な分かれ目です。ただし学資保険のIRRは年0.3〜0.8%にとどまるため、教育資金準備の効率では「掛け捨ての死亡保障+NISA積立」の組み合わせが優位になりやすい構造です。


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本記事で示した試算はすべて公開情報からの概算であり、実際の契約条件・予定利率・運用結果を保証するものではありません。投資・保険商品の選択は元本割れリスクを伴います。 最終判断は契約書の設計書、最新の予定利率、ご自身のライフプランに基づき、必要に応じて中立的なFP等に相談のうえ行ってください。