「収入保障保険って、結局うちには必要なの?」

この疑問に、先に結論からお答えします。収入保障保険は、多くの独身の方や、お互いの収入で自立できている共働き世帯には不要です。一方で、子どもがいて世帯収入の大半を自分が担っている家庭では、必要になるケースがあります。

判断の軸は次の3つです。

  1. 遺族年金で足りない分だけ入る。それ以上は不要
  2. 独身の方、資産が十分にある方には不要
  3. 入るなら、必ず複数社の保険料を比較する

私は保険業界に10年身を置いたあとIT企業へ転職し、現在はFP2級の知識をベースに資産形成の情報を発信しています。この記事では「業界の中から見てきた立場」と「ひとりの生活者としての立場」の両方から、収入保障保険の判定基準と必要額の計算方法を解説します。

あなたに必要か、30秒で判定

まずは下のチャートで判定してください。当てはまった時点で、あなたの答えは出ています。

あなたの状況判定
扶養家族がいない(独身など)不要。この記事はここで閉じてOKです
共働きで、配偶者が自分の収入で生活を維持できる原則不要(不足額次第で少額のみ検討)
金融資産が、遺族の生活費の不足分をカバーできる不要。保険より資産で備えられています
子どもがいて、世帯収入の大半を自分が担っている要検討。この先を読んでください

ポイントは「死亡保障は、困る人がいるときだけ必要」という一点です。誰も経済的に困らないなら、保険料はそのままNISAやiDeCoに回したほうが合理的です。

「要検討」に当てはまった方は、読み進める前に保険料の相場感だけ先に確認しておくと、このあとの判断が早くなります。収入保障保険は30代なら月2,000〜3,000円台から入れる商品です。

収入保障保険の仕組みと「割安」のカラクリ

収入保障保険は、契約者が亡くなった場合に、遺族が毎月のお給料のように保険金を受け取れる保険です。たとえば「月10万円を保険期間満了まで受け取る」という形ですね。

普通の定期保険(死亡時に一括で3,000万円など)と比べて、保険料が明らかに安い。ここで「安い=お得?それとも何か裏がある?」と疑問に思う方が多いのですが、カラクリはシンプルです。

保障の総額が、年々減っていくからです。

契約直後に亡くなれば「月10万円×残り25年=3,000万円」を受け取れますが、満了の5年前なら「月10万円×5年=600万円」。受け取り総額が時間とともに減る分、保険会社のリスクも減る。だから安いのです。

「保障が減るなんて損では?」と思うかもしれませんが、実はここが収入保障保険の最も合理的なところです。遺族に必要なお金も、子どもの成長とともに減っていくからです。子どもが5歳の家庭と、大学卒業間近の家庭では、残すべきお金がまったく違います。死亡保険金を3,000万円で固定する定期保険は、後半になるほど「保障の払い過ぎ」になりやすい。必要額の減り方に保障の減り方を合わせた収入保障保険のほうが、実態に合っている世帯は少なくありません。

業界にいた立場からひとつ付け加えると、営業の現場では、収入保障保険よりも保険料が高い商品が優先的に提案されるケースもあります。提案された商品が自分の必要額に合っているかは、勧められた側が自分で確認するしかありません。そのための計算方法を、後ほど実演します。

入る前に知っておきたいデメリット3つ

合理的な保険だと書きましたが、弱点がないわけではありません。「入ってから後悔した」とならないために、デメリットを先に押さえておきましょう。

① 長生きリスクには対応できない

収入保障保険はあくまで死亡(および所定の高度障害)に備える掛け捨ての保険です。無事に満期を迎えれば、支払った保険料は戻りません。「老後資金が足りない」という長生き側のリスクには1円も役立たないのです。

死亡保障と老後資金準備は、混ぜずに分けて考えるのが原則です。老後資金はNISAやiDeCo・企業型DCで作る。収入保障保険に「貯蓄も兼ねた安心」を期待すると、目的がぶれて後悔のもとになります。

② 解約返戻金がほぼない

保険料が安い理由のひとつは、解約返戻金をなくす(またはごくわずかにする)ことでコストを削っているからです。途中で解約しても、お金はほとんど戻りません。

これは「掛け捨てだから損」という話ではなく、割安な保険料はこの設計と引き換えだということです。逆に言えば、「途中でやめたら損だから」と必要以上に高い保障で契約してしまうと、見直しの身動きが取りにくくなります。最初から必要額ぴったりで入るのが大切です。

③ 家族構成が変われば不要になる

収入保障保険の必要性は「自分の収入に依存する家族がいるか」で決まります。つまり、離婚した・子どもが独立した・配偶者の収入が増えたといった変化があれば、必要性そのものが消えたり大きく縮んだりします。

独身に戻ったのに保険料を払い続けている、というのは典型的なムダです。ライフイベントのたびに「この保障、まだ要るか?」を見直す前提で付き合う保険だと理解しておいてください。

この3つを踏まえたうえで、それでも「子どもが独立するまでの死亡保障」が必要な世帯にとっては、収入保障保険は候補になります。では、いくら必要なのか。次章で計算します。

必要額はいくら?モデルケースで計算

モデルケース:35歳会社員(年収600万円)、配偶者(パート年収100万円)、子ども5歳の3人世帯

先に結果からお見せします。

項目金額(月額)
遺族に必要な生活費約22万円
遺族年金(公的保障)約14万円
不足額約8万円

→ このケースでは、「月額8万円・保障期間は子どもが独立する22歳まで(17年間)」の収入保障保険が目安になります。

では、なぜこの数字になるのか。順番に分解します。

ステップ1:遺族年金がいくら出るかを知る

会社員が亡くなった場合、18歳年度末までの子がいる配偶者には、遺族基礎年金遺族厚生年金の2階建てで年金が支給されます。

遺族基礎年金(2026年度・令和8年4月分からの価額)

  • 基本額:847,300円/年
  • 子の加算(1人目・2人目):各243,800円/年

※金額は日本年金機構の公表値(昭和31年4月2日以後生まれの場合)です。

モデルケース(子1人)では、847,300円+243,800円=1,091,100円/年(月約9.1万円)

遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。概算式は次のとおり。

平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数 × 3/4 ※加入月数が300月未満の場合は300月とみなして計算

年収600万円(平均標準報酬額50万円)なら、500,000円 × 5.481/1000 × 300月 × 3/4 ≒ 約61.7万円/年(月約5.1万円)

合計すると、遺族年金は月約14.2万円。「公的保障だけで月14万円も出る」という事実を知らずに保険に入っている人は、本当に多いです。保険を考える前に、まず公的保障から。これはFPの鉄則です。

ステップ2:遺族に必要な生活費を見積もる

一般に、遺族の生活費は現在の生活費の70%前後が目安とされています(亡くなった方の食費・小遣い・保険料などが減るためです)。

モデルケースの現在の生活費を月31万円とすると、31万円 × 70% ≒ 月約22万円。なお、配偶者のパート収入(月約8万円)を生活費の原資に織り込むなら、必要保障額はさらに圧縮できます。今回は保守的に、収入は織り込まず計算しています。

ステップ3:不足額を出す

22万円 − 14.2万円 ≒ 月約8万円。これが、保険で埋めるべき金額です。

ちなみに、このモデルケース(35歳男性・非喫煙者・月8万円保障・保障期間17年程度)なら、月額保険料の目安は2,000〜3,000円台です。※実際の保険料は商品・健康状態・喫煙歴・保証期間の設定によって変わります。「月8万円の保障」と聞くと高そうに感じますが、必要額に絞れば負担はこの程度に収まります。

あなたの場合は?

項目モデルケースあなたの場合
現在の生活費 × 70%22万円 
遺族基礎年金(月額)9.1万円 
遺族厚生年金(月額)5.1万円 
不足額(必要保障月額)8万円 

ねんきん定期便があれば、遺族厚生年金はより正確に見積もれます。また、住宅ローンを組んでいて団体信用生命保険(団信)に加入している場合、死亡時にローン返済が消えるため、生活費から住居費を差し引いて計算してください。ここを忘れると保障の入り過ぎになります。

自分で計算してみてもよく分からない、という方は、保険ショップや無料のFP相談で必要保障額を試算してもらうのも一つの方法です。その場合も「遺族年金を引いた不足分だけ」という軸を持って臨めば、過剰な保障を提案されてもその場で気づけます。

補足:2028年度の制度改正

遺族厚生年金は2028年度から、子のない配偶者への給付が原則5年の有期給付に段階的に見直される予定です。18歳年度末までの子がいる世帯への影響は限定的ですが、制度は変わるものです。保険の見直しは数年ごとに行うことをおすすめします。

選ぶときの3つのチェックポイント

必要月額が決まったら、商品選びです。見るべきポイントは3つだけ。

① 保険期間の設定 末子が独立する年齢(大学卒業なら22歳)を基準に設定します。長くしすぎると保険料の無駄、短すぎると保障の穴になります。

② 最低支払保証期間 満了直前に亡くなった場合でも、最低2年または5年分は支払われる仕組みです。保証期間が長いほど保険料は上がるので、資産状況に応じて2年で十分なケースが多いです。

③ 健康体割引(非喫煙者割引)の有無 タバコを吸わない方、血圧などが基準内の方は、割引適用で保険料が2〜3割下がる商品があります。該当する方は、割引のある保険会社を選ばない理由がありません。

最後に、業界にいたからこそ言わせてください。1社の提案だけで決めるのはやめてください。 同じ保障内容でも、保険料は会社によって2〜3割違います。月2,000円の差でも、17年間で40万円以上。この差額をNISAに回せば、さらに大きな差になります。

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保障は必要額だけ掛け捨てで備えて、貯蓄と老後資金はNISAで作る。私自身が2015年から11年使い続けている口座です。投信のクレカ積立とポイント還元が使えます。
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まとめ

  • 収入保障保険は「遺族年金で足りない分だけ」入る
  • 独身・共働きで自立可能・資産十分なら不要
  • デメリットは3つ:老後資金にはならない/解約返戻金がほぼない/家族構成が変われば不要になる
  • 会社員世帯なら遺族年金だけで月14万円前後の公的保障がある(モデルケース)
  • 必要月額=生活費の70%前後 − 遺族年金。団信があれば住居費も引く
  • モデルケース(35歳・非喫煙・月8万円保障・17年)の保険料目安は月2,000〜3,000円台
  • 入るなら複数社比較が必須。健康体割引も忘れずに

保険は「不安だから」ではなく「数字で必要だから」入るもの。この記事の表に自分の数字を入れて、納得してから判断してください。

※本記事は2026年度(令和8年4月分から)の年金額に基づく一般的な情報提供であり、特定の保険商品の勧誘・推奨を目的とするものではありません。加入・見直しの最終判断はご自身の状況に基づいて行ってください。

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