株主優待で選んだコナカは9年塩漬け、業績を見た巴工業は含み益+30%|優待株で確認する3つの数字

この記事は連載「ラスト一押しの株主優待」の第1回です。業績・財務で持ちたいと判断した会社に、優待が「最後のひと押し」として付いてくる——そんな順番で私が実際に保有している優待銘柄を、1記事1銘柄で紹介していく連載です。 「株主優待が魅力的だから、この株を買おう」 11年前の私はこの考え方で銘柄を選び、9年5ヶ月の塩漬けを経験しました。一方で、業績と配当方針を確認した上で保有している優待つきの銘柄は、含み益+30%で優待のワインも毎年届いています。 結論を先に書きます。優待だけを最初の理由に株を買うと、私のように失敗することがあります。優待は株を買う最初の判断材料ではなく、業績・財務で持ちたいと判断した会社の「最後のひと押し」にするべきでした。 この順番を逆にした私の失敗と、今うまくいっている保有銘柄の対比を、実際の数字で書きます。 平成時代を生きた30代・川崎市在住のHIKOです。投資歴11年・FP2級。2015年に年収300万円台でNISAを始め、コナカの塩漬けと青山商事の-310,960円を経験してきました。この記事は私の体験談と一般的なチェック観点の整理であり、特定銘柄の購入を勧めるものではありません。 ※当記事にはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。 優待で選んだコナカ(7494):9年5ヶ月の塩漬け 2015年5月、人生で初めて買った単元株がスーツ専門店のコナカでした。738円×100株、投資額73,800円です。 選んだ理由は3つでした。 知っている会社だから安心 100株7万円台で買える 株主優待でスーツがお得に買える 業績や財務は一切調べていません。「優待だけ」というより「知名度・手頃さ・優待」の3点セットですが、共通しているのはどれも会社の中身を見ていないことです。 その後、株価は200〜400円台で長く推移し、9年5ヶ月そのまま塩漬けになりました。2024年11月、旧NISAの非課税期間終了にあわせてクロス取引(旧NISAで売却→同日に特定口座で買い戻し)を実施し、損益を整理した結果がこれです。 項目金額旧NISA売買の確定損(738円買い→247円売り)-49,100円旧NISA配当累計(16回・非課税)+16,000円特定口座スイング益(2020〜2021年)+2,190円特定口座配当+980円確定損益合計-29,930円 配当を9年受け取り続けても、株価下落をカバーできませんでした。しかも旧NISAの損失は損益通算ができないため、-49,100円は税制上「無かったこと」になります。買う理由の1つだった優待(コナカ・フタタ・SUIT SELECT等で使える20%割引券)自体は現在も継続していますが、株価が7割下がった損失を埋められるものではありませんでした。 このときの詳しい経緯は2015年のNISA個別株失敗談に書いています。 業績を見て保有している巴工業(6309):含み益+30%とワイン 一方、現在の保有銘柄に巴工業という会社があります。遠心分離機などの機械製造と化学工業製品の商社という2つの事業を持つ会社です。 2026年5月時点の私の保有状況はこうです。 項目数値保有株数300株取得単価1,369円評価額537,900円含み損益+127,200円(+30.97%) 優待は200株以上の保有でワイン1本が年1回届きます(600株以上で2本。基準日は毎年10月31日・継続1年以上の保有が条件。出典:巴工業「株主優待制度」 https://www.tomo-e.co.jp/ir/benefit.html )。私も実際に受け取っており、これは素直にうれしい優待です。 ただし、私がこの株を持ち続けている理由はワインではありません。業績と配当方針です。 売上・営業利益が右肩上がり 決算期売上高営業利益2020年10月期392億円23億円2021年10月期451億円28億円2022年10月期456億円33億円2023年10月期496億円40億円2024年10月期521億円47億円2025年10月期594億円54億円 出典:IR BANK 巴工業 業績推移( https://irbank.net/6309/results ) 5年で売上は約1.5倍、営業利益は2倍以上になっています。営業利益率も5%台から9%台へ改善しています。 配当も増えている 決算期年間1株配当2020年10月期48円2021年10月期50円2022年10月期53円2023年10月期110円2024年10月期145円 出典:IR BANK 巴工業 配当推移( https://irbank.net/6309/dividend )。なお2025年5月に1対3の株式分割を実施しているため、2025年10月期以降の1株配当額は上の表と単純比較できません。 会社は連結配当性向40%以上を目標に掲げており、実績もその水準で推移しています。優待を抜きにしても、配当と業績だけで保有の説明がつく。これがコナカとの一番の違いです。 念のため繰り返しますが、巴工業を買うことを勧めているわけではありません。株価は今後下がるかもしれませんし、優待も廃止されるかもしれません。「業績で説明できる株を持ち、優待はおまけ」という選び方の実例として挙げています。 同じ「優待株」でもここまで差がつく コナカと巴工業の損益比較 ¥-29930 コナカ(確定損益) ¥127200 巴工業(含み益) コナカは2024年11月クロス取引までの確定損益(配当込)、巴工業は2026年5月12日時点の含み益。投資額はコナカ73,800円・巴工業410,700円で異なります どちらも「優待のある株」です。違いは、買う前(あるいは持ち続ける判断のとき)に業績と配当を見たかどうかだけです。 私が優待株で見ている3つの数字 コナカの失敗と、JPX・JT・オリックスでの優待廃止経験(詳細は優待入門の記事に書きました)を経て、優待のある銘柄では次の3つの数字を確認するようになりました。これは一般的なチェック観点としても通用する内容だと思います。 ① 優待を抜いた配当利回り 優待相当額を含めた「総合利回り」ではなく、配当だけの利回りをまず見ます。 理由は単純で、優待はいつでも廃止されるからです。JT・オリックスのような人気優待でも「配当への一本化」を理由に廃止されました。優待が消えても配当だけで持つ理由が残るか。残らないなら、その銘柄は優待ありきの選択になっています。 ② 業績の方向(売上・営業利益・配当性向) 直近5年程度の売上高と営業利益が伸びているか、横ばいか、下がっているかを見ます。あわせて配当性向(利益のうち配当に回す割合)に無理がないかも確認します。配当性向が100%を超えているような会社は、利益以上の配当を出している状態で、減配や優待廃止が起きやすい構造です。 ...

2026年6月11日 · 最終更新: 2026年7月10日 · HIKO

収入保障保険はいらない?遺族年金から逆算する必要保障額の求め方【FPが判定】

「収入保障保険って、結局うちには必要なの?」 この疑問に、先に結論からお答えします。収入保障保険は、多くの独身の方や、お互いの収入で自立できている共働き世帯には不要です。一方で、子どもがいて世帯収入の大半を自分が担っている家庭では、必要になるケースがあります。 判断の軸は次の3つです。 遺族年金で足りない分だけ入る。それ以上は不要 独身の方、資産が十分にある方には不要 入るなら、必ず複数社の保険料を比較する 私は保険業界に10年身を置いたあとIT企業へ転職し、現在はFP2級の知識をベースに資産形成の情報を発信しています。この記事では「業界の中から見てきた立場」と「ひとりの生活者としての立場」の両方から、収入保障保険の判定基準と必要額の計算方法を解説します。 あなたに必要か、30秒で判定 まずは下のチャートで判定してください。当てはまった時点で、あなたの答えは出ています。 あなたの状況判定扶養家族がいない(独身など)不要。この記事はここで閉じてOKです共働きで、配偶者が自分の収入で生活を維持できる原則不要(不足額次第で少額のみ検討)金融資産が、遺族の生活費の不足分をカバーできる不要。保険より資産で備えられています子どもがいて、世帯収入の大半を自分が担っている要検討。この先を読んでください ポイントは「死亡保障は、困る人がいるときだけ必要」という一点です。誰も経済的に困らないなら、保険料はそのままNISAやiDeCoに回したほうが合理的です。 「要検討」に当てはまった方は、読み進める前に保険料の相場感だけ先に確認しておくと、このあとの判断が早くなります。収入保障保険は30代なら月2,000〜3,000円台から入れる商品です。 収入保障保険の仕組みと「割安」のカラクリ 収入保障保険は、契約者が亡くなった場合に、遺族が毎月のお給料のように保険金を受け取れる保険です。たとえば「月10万円を保険期間満了まで受け取る」という形ですね。 普通の定期保険(死亡時に一括で3,000万円など)と比べて、保険料が明らかに安い。ここで「安い=お得?それとも何か裏がある?」と疑問に思う方が多いのですが、カラクリはシンプルです。 保障の総額が、年々減っていくからです。 契約直後に亡くなれば「月10万円×残り25年=3,000万円」を受け取れますが、満了の5年前なら「月10万円×5年=600万円」。受け取り総額が時間とともに減る分、保険会社のリスクも減る。だから安いのです。 「保障が減るなんて損では?」と思うかもしれませんが、実はここが収入保障保険の最も合理的なところです。遺族に必要なお金も、子どもの成長とともに減っていくからです。子どもが5歳の家庭と、大学卒業間近の家庭では、残すべきお金がまったく違います。死亡保険金を3,000万円で固定する定期保険は、後半になるほど「保障の払い過ぎ」になりやすい。必要額の減り方に保障の減り方を合わせた収入保障保険のほうが、実態に合っている世帯は少なくありません。 業界にいた立場からひとつ付け加えると、営業の現場では、収入保障保険よりも保険料が高い商品が優先的に提案されるケースもあります。提案された商品が自分の必要額に合っているかは、勧められた側が自分で確認するしかありません。そのための計算方法を、後ほど実演します。 入る前に知っておきたいデメリット3つ 合理的な保険だと書きましたが、弱点がないわけではありません。「入ってから後悔した」とならないために、デメリットを先に押さえておきましょう。 ① 長生きリスクには対応できない 収入保障保険はあくまで死亡(および所定の高度障害)に備える掛け捨ての保険です。無事に満期を迎えれば、支払った保険料は戻りません。「老後資金が足りない」という長生き側のリスクには1円も役立たないのです。 死亡保障と老後資金準備は、混ぜずに分けて考えるのが原則です。老後資金はNISAやiDeCo・企業型DCで作る。収入保障保険に「貯蓄も兼ねた安心」を期待すると、目的がぶれて後悔のもとになります。 ② 解約返戻金がほぼない 保険料が安い理由のひとつは、解約返戻金をなくす(またはごくわずかにする)ことでコストを削っているからです。途中で解約しても、お金はほとんど戻りません。 これは「掛け捨てだから損」という話ではなく、割安な保険料はこの設計と引き換えだということです。逆に言えば、「途中でやめたら損だから」と必要以上に高い保障で契約してしまうと、見直しの身動きが取りにくくなります。最初から必要額ぴったりで入るのが大切です。 ③ 家族構成が変われば不要になる 収入保障保険の必要性は「自分の収入に依存する家族がいるか」で決まります。つまり、離婚した・子どもが独立した・配偶者の収入が増えたといった変化があれば、必要性そのものが消えたり大きく縮んだりします。 独身に戻ったのに保険料を払い続けている、というのは典型的なムダです。ライフイベントのたびに「この保障、まだ要るか?」を見直す前提で付き合う保険だと理解しておいてください。 この3つを踏まえたうえで、それでも「子どもが独立するまでの死亡保障」が必要な世帯にとっては、収入保障保険は候補になります。では、いくら必要なのか。次章で計算します。 必要額はいくら?モデルケースで計算 モデルケース:35歳会社員(年収600万円)、配偶者(パート年収100万円)、子ども5歳の3人世帯 先に結果からお見せします。 項目金額(月額)遺族に必要な生活費約22万円遺族年金(公的保障)約14万円不足額約8万円 → このケースでは、「月額8万円・保障期間は子どもが独立する22歳まで(17年間)」の収入保障保険が目安になります。 では、なぜこの数字になるのか。順番に分解します。 ステップ1:遺族年金がいくら出るかを知る 会社員が亡くなった場合、18歳年度末までの子がいる配偶者には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2階建てで年金が支給されます。 遺族基礎年金(2026年度・令和8年4月分からの価額) 基本額:847,300円/年 子の加算(1人目・2人目):各243,800円/年 ※金額は日本年金機構の公表値(昭和31年4月2日以後生まれの場合)です。 モデルケース(子1人)では、847,300円+243,800円=1,091,100円/年(月約9.1万円)。 遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。概算式は次のとおり。 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数 × 3/4 ※加入月数が300月未満の場合は300月とみなして計算 年収600万円(平均標準報酬額50万円)なら、500,000円 × 5.481/1000 × 300月 × 3/4 ≒ 約61.7万円/年(月約5.1万円)。 ...

2026年6月9日 · 最終更新: 2026年6月10日 · HIKO

UR賃貸の家賃値上げは断れる?借地借家法との関係をわかりやすく解説

「UR賃貸は公的住宅だから家賃は上がらない」——そう思っている人は多いのではないでしょうか。礼金・仲介手数料・更新料・保証人がいらないUR賃貸は、長く住むほどお得に感じられる住まいです。 ですが結論から言うと、UR賃貸でも家賃は値上げされることがあります。そして「公的だから借地借家法は関係ない」というのも誤解です。 先に「断れるのか」への答えを言うと、借主に即時の応諾義務はなく、納得できなければ協議・調停・訴訟で争えるというのが正確なところです(詳しくは後半で解説します)。この記事では、UR賃貸の家賃改定の仕組みと、私たち入居者を守る借地借家法の関係を、UR入居中の30代会社員の目線で整理してみます。 UR賃貸にも借地借家法は適用される まず押さえておきたいのが、UR(独立行政法人都市再生機構)の賃貸住宅であっても、入居者との関係は通常の建物賃貸借契約だということです。したがって、賃貸借契約の基本法である借地借家法がそのまま適用されます。 借地借家法の第32条には「借賃増減請求権」という規定があります。これは、家賃が次の事情で不相当になったとき、貸主・借主のどちらからでも将来に向かって家賃の増額・減額を請求できるという権利です。 土地・建物に対する税金など、負担の増減があったとき 土地・建物の価格の上昇・低下など、経済事情が変動したとき 周辺の似た物件(近傍同種)の家賃と比べて不相当になったとき つまり貸主であるURからは「値上げ請求」が、入居者からは「値下げ請求」ができる、という双方向の仕組みです。 URの「継続家賃改定ルール」とは では、UR独自のルールはどうなっているのでしょうか。UR賃貸住宅の家賃は法律上、近傍同種の住宅の家賃を基準に決めることとされています。そして住んでいる人の家賃(継続家賃)の見直しは、居住者代表を含む有識者でつくる諮問機関がまとめた**「継続家賃改定ルール」**に沿って行われます(UR都市機構「継続家賃の改定について」)。 ポイントは次のとおりです。 改定は、入居時期などに応じて定められた見直しの時期に行われる 改定前の継続家賃と近傍同種家賃との間に、5%を超える乖離がある住宅が対象 直近の家賃変更日(変更がなければ入居日)から2年に満たない住宅は対象外 ここが重要で、入居してまだ2年経っていない場合は、そもそも値上げの対象になりません。また、引き上げ対象になる世帯のうち、低所得の高齢者世帯や子育て世帯などには、改定後の家賃を原則として改定前と同額に据え置く特別措置も用意されています。年金生活で住民税非課税の世帯や、子どもがいる世帯は守られやすい仕組みになっているわけです。 実際にURで値上げされた事例はある 「ルールがあるのはわかったけど、実際に上がった例はあるの?」という疑問もあるでしょう。あります。 たとえば2014年度には、市場家賃より低い住戸を対象に継続家賃改定が実施されました。このときは消費税率引き上げと重なったため、引き上げ分について一定期間の免除措置が取られましたが、値上げ自体は実施されています。継続して住んでいる人でも、数百円〜千円規模の小幅な改定はあり得るということです。 そして近年話題になったのが、定期借家契約の住戸で、契約満了時に大幅な家賃の引き上げが提示され、退去する住民も出たと報じられたケースです。「安心して長く住める」というUR住宅のイメージに、疑問の声が上がった出来事でした。これは次に説明する契約形態の違いが背景にあります。 「普通借家」か「定期借家」かが分かれ目 この事例で注目すべきは、契約形態の違いです。 一般的なUR賃貸の多くは普通借家契約(自動更新・更新料なし)で、この場合は前述の継続家賃改定ルールが適用され、値上げがあっても小幅にとどまります。一方、定期借家契約は契約期間の満了で一度終了し、再契約時にほぼ市場家賃の新条件が提示されます。継続家賃の「緩やかな改定」ではなく、一気に相場水準まで跳ね上がる可能性があるのです。 ですから、自分の契約がどちらなのかを確認しておくことが、想定すべきリスクを知るうえで欠かせません。 UR家賃値上げの対象になるか、3ステップで確認する ここまでの内容を組み合わせると、「自分の部屋が家賃改定の対象になり得るか」は入居中でも自分で確認できます。値上げ通知が来てから慌てて調べるより、落ち着いているうちに一度やっておくのがおすすめです。 ステップ1:契約書で「普通借家」か「定期借家」かを確認する 賃貸借契約書の契約形態の欄を見ます。前述のとおり、普通借家なら小幅な改定にとどまりやすく、定期借家なら満了時に市場家賃水準が提示される可能性を想定しておきます。 ステップ2:直近の家賃変更日(または入居日)から2年経っているか数える 直近の家賃変更日(変更がなければ入居日)から2年未満なら、そもそも改定の対象外です。 ステップ3:周辺の似た物件(近傍同種)の相場と自分の家賃を比べる 改定対象は継続家賃と近傍同種家賃の乖離が5%を超える住宅です。周辺相場より自分の家賃が5%超安ければ将来の改定対象になり得ますし、相場と同水準なら大きな値上げは起きにくいと見込めます。 この3ステップで「上がるとしたらどの程度か」の見当がつけば、通知が来たときも冷静に内容を確認できます。 では、値上げは「断れる」のか 最後に本題です。値上げを断れるのか。 借地借家法32条は借主保護の強い規定で、借主による減額請求権を排除する特約は無効とされています。一方で増額については、一定期間は増額しないという特約が有効とされる余地があります。いずれにせよ、貸主が一方的に主張すれば値上げが自動的に通るわけではなく、「不相当」かどうかは周辺相場・経済事情・税負担の増減といった客観的な事情に基づいて判断されます。主観だけでは認められません。 大切なのは、借主は増額請求に直ちに応じる義務はないという点です。貸主と借主の意見が合わない間は、借主は自分が相当と考える額(通常はこれまでの家賃)を払い続けることができます。家賃をきちんと払い続けていれば、正当な事由なく契約が終了することはありません。 そして話し合いがまとまらなければ、原則としてまず調停を申し立て、それでも決まらなければ訴訟となり、最終的には裁判所が妥当な家賃額を判断します。 つまり「URだから絶対に断れない」のではなく、納得できなければ協議→調停→訴訟という法的な道筋があり、その間に一方的な退去を迫られるわけではない、というのが正確な答えです。ただし現実には、URは周辺相場より割安なケースが多く、争うコストと見込みを天秤にかける必要があります。近傍同種家賃との比較で値上げの合理性が認められやすい局面もあります。 値上げを拒否したら、その後どうなる? 「拒否したら追い出されるのでは」と不安に感じる人もいるかもしれませんが、前述のとおり、同意しないあいだも従来の家賃を払い続けている限り、正当な事由なく契約を解除されることはありません。 問題になるのは、貸主側が「増額後の家賃でなければ受け取らない」と受領を拒むケースです。この場合でも、借主は従来の家賃額を法務局に供託することで支払ったのと同じ扱いになり、家賃滞納にはあたりません(民法494条以下の供託制度)。「受け取ってもらえないから払えず滞納扱いになる」という事態は、制度上は避けられる仕組みになっています。 供託や協議を経てもまとまらなければ調停・訴訟に進みますが、いきなり退去や強制執行になるわけではありません。通知が来ても署名を急がず、まずは改定理由と近傍同種家賃の根拠をURの窓口に確認するところから始めるのが現実的です。 値上げされても住み続けた方が得なケースが多い 値上げ通知が来ると「いっそ引っ越したほうがいいのでは」と考えたくなりますが、金額を並べてみると、住み続けたほうが家計の負担は軽く済むケースが多いのが実際のところです。 理由は大きく2つあります。ひとつは、そもそもUR賃貸は近傍同種の相場より割安に設定されていることが多く、継続家賃改定ルールに沿った小幅な値上げがあっても、改定後の家賃が周辺相場をなお下回っているケースが少なくないことです。もうひとつは、住み替えそのものに、家賃差とは別の一時費用が重くのしかかることです。 一般的な住み替えでは、たとえば次のような費用がかかります。 新居の初期費用(礼金・仲介手数料・敷金・鍵交換・保証会社利用料など、民間物件なら家賃の数ヶ月分になることも珍しくありません) 引越業者への費用(時期や距離、荷物量で変わりますが、数万円〜十数万円が目安です) 新居と現在の家賃差(間取りや築年数の条件をそろえると、相場水準の民間物件は今より高くなることが多くあります) 仮に値上げ額が月1,000円だったとすると、年間の増加は12,000円です。一方、住み替えにかかる初期費用と引越費用の合計が数十万円規模になれば、その差を埋めるのに何年もかかる計算になります。さらに引っ越し先の家賃が今より高ければ、負担はむしろ増えてしまいます。 もちろん通勤やライフスタイルの変化で住み替えが必要になる場面はありますし、値上げ幅が大きい定期借家の再契約では話が変わってきます。ただ、普通借家の小幅な改定に限って言えば、「値上げ額」と「住み替えにかかる総コスト」を並べて比べてみると、住み続けたほうが結果的に負担が軽く収まることが多い、という点は押さえておいて損はありません。 値上げ通知後に住み替えを検討して見送る人が多い理由 実際、値上げ通知をきっかけに住み替えを検討し始めても、最終的には「やっぱり今の部屋に住み続ける」という判断に落ち着く人が多いと言われます。物件を探し始めてから、次のような壁に気づくパターンです。 まず、同じ家賃帯で探すと部屋が狭くなりがちです。UR賃貸は同条件の民間物件と比べて専有面積に余裕があることが多く、いざ引っ越し先を探すと「今より狭くなるのに家賃は変わらない、あるいは高くなる」という現実に直面したという声は少なくありません。 次に、家賃が思ったより高くつくことです。ネットで見た家賃だけを比べて安いと感じても、礼金・仲介手数料・更新料といったUR賃貸にはない費用まで含めて計算し直すと、トータルでは割高になっていた、と気づく人も多いようです。 こうして「探せば探すほど、今の部屋の条件の良さが分かった」という理由で、値上げを受け入れて住み続ける選択をする人が多いわけです。値上げ通知が来たときは、感情的に引っ越しへ動く前に、まず住み替えの総コストと新居の条件を具体的に見積もってみることが、後悔しない判断につながります。 よくある疑問(Q&A) URから家賃値上げの通知が来たらどうすればいい? 増額に直ちに同意する義務はないので、慌てて署名せず順に確認しましょう。(1)通知内容(新家賃・改定理由・適用時期)(2)自分の契約が普通借家か定期借家か(3)周辺の家賃相場と比べて提示額が不相当でないか、を確認し、納得できなければURの窓口や専門機関に相談すれば十分です。 URに家賃の値下げを請求できる? できます。借地借家法32条は増額だけでなく減額請求も認めています。周辺相場の下落や経済事情の変化で、現在の家賃が近傍同種家賃より高すぎると考えられる場合は、借主からURへ減額を請求できます。合意できなければ調停・訴訟で判断される流れです。 UR賃貸の家賃値上げは、いくら上がる? 契約形態によって幅が大きく変わります。普通借家の継続家賃改定は数百円〜千円規模の小幅な見直しが一般的ですが、定期借家の再契約ではほぼ市場家賃が提示され、エリアによっては月数千円〜1万円以上になることもあります。まず自分の契約形態と近傍同種家賃との差を確認するのが出発点です。 UR賃貸で家賃が「上がらない」のはどんな場合? 前述の継続家賃改定ルール(普通借家)では、そもそも改定対象にならない住戸が多いためです。具体的には、直近の家賃変更日から2年未満、継続家賃と近傍同種家賃の乖離が5%以内、といったケースが対象外です。逆に、相場より大きく割安なまま2年以上住む普通借家や、契約満了を迎える定期借家では、値上げの可能性を想定しておくとよいでしょう。 UR入居中の私の受け止め 私自身も都市部のUR賃貸に住んでいます。礼金・更新料・仲介手数料がかからない構造に魅力を感じて選んだ住まいですが、「公的だから一生家賃は上がらない」とは考えていません。借地借家法32条と継続家賃改定ルールを一度自分で読んでみて、「普通借家なら大幅な値上げは起きにくいが、ゼロではない」と理解できたことで、かえって安心して住めるようになりました。 家賃は家計における最大級の固定費です。値上げ通知が来てから慌てるより、入居中の今のうちに自分の契約形態と周辺相場を把握しておくことが、いちばんの備えだと感じています。 ...

2026年6月7日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO

ビジネスブレイン太田昭和(9658)を9年持ったら取得単価利回りが12%になりました

SNSで「年間配当金300万円達成」という投稿を見ると、多くの人がこう逆算します。 「配当利回り4%として、元本は7,500万円か。すごいな」と。 私自身も、配当300万円の人を見るたびに「元本7,500万円か…」と勝手に計算していました。でも、自分の保有株の数字を改めて見直したとき、この逆算は長期で持っている人にはまったく当てはまらないと気づきました。 きっかけは、私が9年前に買って、いまも持ち続けている1つの株でした。 配当利回りは「今の株価」に対する数字でしかない 配当利回りは、こう計算します。 配当利回り(%)= 1株あたり配当金 ÷ 今の株価 × 100 ここで大事なのは、分母が「今の株価」だということです。 たとえば配当が1株50円の株があったとして、今の株価が1,000円なら利回りは5%です。でも同じ会社の株を、株価400円のときに買っていた人にとっては、50 ÷ 400 で利回り12.5%ということになります。 同じ会社の、同じ配当金です。なのに、利回りはまるで違う。 何が違うかというと、買ったときの株価が違うだけです。 つまり「配当利回り4%」というのは、今この瞬間に買う人にとっての数字であって、もう何年も前に安く買って持っている人には当てはまりません。 YOC(取得単価ベース利回り)という考え方 この「買ったときの株価で計算した利回り」を、英語でYield on Cost(イールド・オン・コスト)、略してYOCと呼びます。日本語にすると取得単価ベースの利回りです。 一般的な配当利回り … 1株配当 ÷ 今の株価 YOC … 1株配当 ÷ 自分が買ったときの株価 長期で配当株を持っていると、この2つの数字はどんどん離れていきます。 理由は2つあります。 株価が上がると、後から買う人の利回り(今の株価ベース)は下がるが、安く買った自分のYOCは変わらない 増配が続くと、分子の配当そのものが増えていくので、自分のYOCはさらに上がっていく 時間をかけて持っているほど、自分だけ高い利回りで配当を受け取れる状態になっていく、ということです。 もちろん、これは万能の話ではありません。増配が止まったり、減配したりすればYOCは育ちません。株価が買値を下回ったまま戻らないこともあります。YOCが勝手に育つのは、あくまで「増配が続き、株価も大きく崩れなかった」場合に限る、という前提は最初に押さえておいてください(私自身の失敗例は後半で正直に書きます)。 実例:9年かけて、私のYOCは12%近くまで育った 抽象論だけだとピンと来ないので、私の保有株で説明します。私はビジネスブレイン太田昭和(9658)を、いまは600株持っています。平均取得単価は約385円です。 なお、ビジネスブレイン太田昭和は、会計や経営の分野に強いシステム会社です。企業向けの会計システムやERP、人事給与などの業務システムの開発・運用、経営や会計まわりのコンサルティングを手がけており、東証プライムに上場しています(コードの9658はこの会社を指します)。社名の「太田昭和」は、設立当時に出資元だった監査法人の名前に由来していますが、現在は資本関係はありません。ここでは「どんな会社か」のイメージだけ共有しておきます。 ただ、最初から600株を385円で買えたわけではありません。実際は9年かけて、買って・売って・また買って、その間に2回の株式分割をはさんでいます。きれいな話ではないので、正直に経緯を書きます。 2017年3月:最初に100株を1,045円で購入 2020年7月:1株が2株になる株式分割(保有100株 → 200株に) 2020年9月:そのうち100株を1,400円で売却(残り100株) 2024年9月:もう一度100株を1,785円ほどで買い増し(合計200株) 2026年4月:1株が3株になる株式分割(保有200株 → 600株に) この結果、いまの平均取得単価は分割後ベースで約385円に下がりました。途中で一度利益確定の売却をしたこと、2回の分割で株数が増えたこと、この2つが効いて、自分の取得単価がどんどん下がっていったわけです。 ここで利回りを2通りで見てみます。 計算の分母ざっくりの利回りこれから買う人今の株価(約1,025円)4.6%前後私(取得単価ベース=YOC)約385円約12% 楽天証券の私の保有画面(取引明細)より。2017年の買付から、途中の売却と2回の株式分割を経て、平均取得単価が385円まで下がっていることが確認できます 直近の予想1株配当(分割後)はおよそ47円です。これを今の株価で割ると利回りは4.6%前後ですが、私の取得単価385円で割ると、47 ÷ 385 で約12%になります。 同じ株・同じ配当でも利回りはこんなに違う(9658) 4.6% 今から買う人 12% 私のYOC 1株配当47円(分割後・予想)を、現在の株価約1,025円で割ると4.6%前後、私の取得単価385円で割ると約12%。同じ配当でも、買ったときの株価で利回りはまったく変わります(数字は私の取得単価・取引の事実を示す例であり、銘柄推奨ではありません)。 同じ株の、同じ配当を受け取っているのに、今から買う人の利回りは4.6%前後、私の取得単価ベースだと12%近くです。 ...

2026年6月4日 · 最終更新: 2026年6月18日 · HIKO

朝日生命「あさひの一時払年金」はおすすめ?|退職金の置き場所としてFPが検証

平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。保険業界で10年働いたあと IT企業へ転職し、現在は FP2級として家計と投資の発信をしています。投資歴は2015年からの11年です。 この記事では、朝日生命の円建て確定年金「あさひの一時払年金」を取り上げます。退職金や満期保険金、相続で受け取ったお金など、「まとまった円資金をどこに置くか」で迷ったときに候補に挙がる商品です。先にお断りすると、私自身はこの商品に加入していません。資産形成のメインは NISA と企業型DCで進めているためです。あくまで保険業界で一時払商品を間近に見てきた経験と FP の知識をもとに、中立的に仕組みと使いどころを整理します。 この記事は商品の一般的な仕組みと公的な税制ルールをもとにした解説です。予定利率・受取額・税金の扱いは契約時期や契約形態、お住まいの状況によって変わります。加入を検討する際は、必ず最新の「ご契約のしおり」「重要事項説明書」と設計書をご自身で確認し、最終判断は自己責任で行ってください。本記事は特定商品の購入を勧誘するものではありません。 結論:「あさひの一時払年金」はこういう商品 最初に要点を3つにまとめます。 まとまった円資金を一括で預け、据置期間で年金原資を育てて、5年・10年・15年の確定年金として受け取る商品です。終身年金ではなく期間が決まった「確定年金」が軸で、医師の診査や健康状態の告知は不要です。 予定利率は契約時点で固定されます。 安定している反面、契約後に世の中の金利やインフレが進んでも受取額は増えません。逆に低金利期に契約すると、その低い利率で長く固定されることになります。 一時払の個人年金は、個人年金保険料控除の対象外です。 ここは誤解が多いところで、節税目的で選ぶ商品ではありません。あくまで「置き場所」としての性格が強い商品です。 これらを踏まえて、向く人・向かない人を後半で仕分けします。 「あさひの一時払年金」の基本的な仕組み 公式情報(2026年時点)をもとに、商品の骨格を整理します。なお契約年齢などの条件は商品改定で変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。 保険料の払い方:契約時に一時払保険料を朝日生命の金融機関口座へ振り込む一括払い 契約できる年齢:20〜70歳 告知:医師の診査や健康状態の告知は不要 年金の受け取り方:5年・10年・15年から選べる確定年金 据置期間:契約から年金開始までの据置期間を設定できる 予定利率:契約時点の予定利率で計算され、その後は固定。金利情勢によっては新規契約の取り扱いを停止することがある 年金開始後に被保険者が亡くなった場合:残りの年金支払期間に相当する未払いの年金現価が、年金受取人に支払われる ざっくり言うと、「一括でお金を預け、据置期間で年金原資を少しずつ育て、決まった期間にわたって取り崩しながら受け取る」円建ての商品です。株や投資信託のように値動きで増減するものではなく、契約時に受取イメージが固まる設計が特徴です。 仮に300万円を預けた場合のイメージ 「結局どのくらい増えるの?」というのが、いちばん気になるところだと思います。ただし、ここは正直にお伝えしておきます。実際の受取額は契約時点の予定利率で決まり、その水準は時期によって変わるため、具体的な金額をこの記事で断定することはできません。 その前提で、受取イメージを「金額」ではなく「構造」で捉えると分かりやすくなります。たとえば次のような組み合わせを考えます。 元本:300万円 据置期間:10年 年金支払期間:10年(5年・15年も選べる) この場合、契約から年金が始まるまでの据置10年間で年金原資が予定利率に応じて育ち、その原資をもとに11年目以降の10年間で年金として受け取っていく、という流れになります。受取総額が一時払保険料(この例なら300万円)を上回るかどうかは、据置期間の長さ・年金支払期間・そのときの予定利率の3つで変わります。 ポイントは2つです。1つは、据置期間が長いほど原資が育つ時間が増えること。もう1つは、増え方は契約時の予定利率に強く依存することです。低金利の時期に契約すれば、その低い利率で長く固定されます。だからこそ、契約前にその時点の予定利率を確認し、後述する個人向け国債や定期預金と並べて比べる作業が欠かせません。具体的な受取額は、必ず担当者に作ってもらう設計書で確認してください。 あさひの一時払年金のメリット 中立に見て、この商品の強みは次のとおりです。 値動きがなく、受取イメージを契約時に固定できる:株や投資信託のように日々増減しないので、相場を見て一喜一憂したくない人には精神的にラクです。 告知・診査が不要で入りやすい:健康状態に不安があっても、医師の診査や告知なしで申し込めます。 据置期間で年金原資を育てられる:すぐに使わないお金を、確定年金の形にして計画的な受け取りへ整えられます。 取り崩しの仕組みが自動化される:自分で資産を取り崩すのが苦手な人でも、決まった期間に自動で受け取れます。 遺族への引き継ぎ設計がある:年金開始後に被保険者が亡くなっても、残期間分の年金現価が受取人に支払われます。 あさひの一時払年金のデメリット 一方で、理解しておくべき弱点もはっきりしています。 インフレ・金利上昇に弱い:予定利率は契約時固定なので、契約後に物価や金利が上がっても受取額は増えません。 一時払は個人年金保険料控除の対象外:節税目的で選ぶ商品ではありません(詳細は後述)。 早期解約は元本割れする:契約後一定期間で解約すると、解約返戻金が一時払保険料を下回ります。 増える力は限定的:あくまで「安全に置く」商品で、長期で大きく増やす力は投資信託などに比べると小さいです。 金利情勢で取り扱いが止まることがある:新規契約が一時的にできなくなる場合があります。 ポイント1:予定利率の「固定」はメリットにもデメリットにもなる 一時払年金のいちばんの肝は予定利率です。 契約した時点の予定利率で受取額が決まり、その後は動きません。これは「契約後に金利が下がっても影響を受けない」という安心につながります。一方で、契約後にインフレが進んだり世の中の金利が上がったりしても、受取額は増えないという弱点も同じ理由から生まれます。 私が保険業界にいた頃から、一時払年金や一時払終身は「金利が動くと商品性がガラッと変わる」タイプの代表でした。実際このあさひの一時払年金も「金利情勢によっては新規の取り扱いができないことがある」と明記されています。これは裏を返せば、利率水準次第で魅力が大きく変わる商品だということです。 検討する際は、その時点の予定利率を確認したうえで、 同じ時期の 個人向け国債(変動10年) の適用利率 定期預金 の店頭金利 物価上昇率(インフレ) の見通し と並べて比べるのが現実的です。固定金利の安心料として納得できる水準かどうか、という見方をおすすめします。 ポイント2:一時払は「個人年金保険料控除」の対象外 ここはとても誤解が多い論点です。 毎月コツコツ払うタイプの個人年金保険には「個人年金保険料控除」がありますが、一時払の個人年金は、税制適格の個人年金保険料控除の要件(保険料払込期間10年以上など)を満たさないため、対象外です。一時払商品を「節税になるから」という理由で選ぶのは、出発点からずれてしまいます。 受取時の税金については、契約者と受取人が同じ人で確定年金を受け取る場合、毎年の年金は雑所得として所得税・住民税の対象になるのが一般的です。雑所得は「受け取った年金額から、それに対応する払込分(必要経費)を差し引いた残り」が課税対象になるため、受取額の全部に課税されるわけではありません。 注意したいのは契約形態です。契約者(お金を出す人)と年金受取人が違う場合は、年金開始時点で受取人に贈与税がかかるケースがあります。親が子のために契約する、夫が妻名義で受け取らせる、といった「名義の置き方」で税金の種類と金額が大きく変わるため、相続・贈与目的で使うときほど、契約前に税理士や担当者へ確認することをおすすめします。 ...

2026年6月3日 · 最終更新: 2026年6月12日 · HIKO

積立保険は解約すべき?30代が「やめていい5つの条件」を具体数字で解説

保険業界に10年在籍し、FP2級を取得したHIKOです。「解約すると損ですよね」という声は、貯蓄型保険をめぐってもっともよく聞くフレーズです。ただ、その言葉の裏にある「惰性で払い続けている」状態のほうが、実は大きな損になっているケースが多い、というのが業界に身を置いて見えてきた実感です。 結論から言うと、以下の5つのうち2つ以上に当てはまるなら解約を検討すべきです。 保険料が手取りの5%以上を占めている 積立保険の利回りが年1%未満 返戻率が100%になるまで15年以上ある NISAやiDeCoをまだ使っていない 扶養家族がいないのに死亡保障が500万円以上ある このまま放置すると、数十万円〜100万円単位で差が出る可能性があります。 「解約=損」というより、「判断せず放置すること」が損になるケースが多いです。仕組みと判断基準を整理しますので、手元の保険証券と照らし合わせながら読んでみてください。 参考までに、生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和4年度)」によれば、1世帯あたりの年間払込保険料は平均37万円前後とされています。月額に直すと3万円超。生涯で見れば1,000万円規模の支出です。だからこそ「払い続けることが正解か」を一度数字で確認する価値があります。 解約返戻金とは何か 積立保険を途中で解約したとき、保険会社から受け取れるお金を解約返戻金(かいやくへんれいきん)といいます。 積立保険の保険料には、大きく分けて2つの用途があります。 保障コスト(死亡保障部分): 万が一のときに保険金を支払うための費用 積立部分: 解約返戻金や満期保険金の原資となるお金 保険会社はこの積立部分を運用し、一定期間後に「払った保険料より多い金額」が戻ってくるように設計しています。ただし、途中で解約すると積立部分がまだ育っていないため、払込総額より少ない金額しか戻ってきません。 返戻率の目安 解約返戻金が払込総額に対してどの程度の割合かを示す数値を返戻率といいます。 加入からの期間返戻率の目安(商品による)1〜3年50〜70%程度(大きく元本割れ)5〜10年80〜95%程度(元本割れ)15〜20年100%前後(損益分岐点)満期105〜110%程度 返戻率が100%を下回っている期間に解約すると、払い込んだ総額より少ない金額しか戻りません。これが「解約すると損」と言われる根拠です。 ただし、この「損」はあくまでも払った保険料との比較です。「今すぐ解約する場合」と「今後も払い続けた場合」を比べて、どちらが自分の状況に合っているかを判断する必要があります。 なお、ここで挙げた返戻率はいわゆる「低解約返戻金型」を含む一般的な終身・養老タイプの目安です。商品によっては10年経過時点で返戻率70%台で頭打ちになるものもあるため、必ず手元の設計書で確認してください。 積立保険とNISAの差は10年で約29万円、20年で約145万円 「利回りの差」という言葉だと実感しにくいので、具体的な数字で確認してみます。 前提:毎月1万円を積み立てた場合(税金・手数料は考慮外。月複利で計算) 10年積立 積立保険(年利1%)→ 約126万円(元本120万円) インデックス投資(年利5%)→ 約155万円 差額:約29万円 20年積立 積立保険(年利1%)→ 約266万円(元本240万円) インデックス投資(年利5%)→ 約411万円 差額:約145万円 10年で29万円の差が、20年では145万円まで広がります。これが複利の効果です。30年積立まで伸ばすと、差額は400万円を超えます。 積立保険の利回りが0.5〜1.5%にとどまるのは、保険料の一部が保障コストや会社経費に回るためです。一方、NISAで全世界株式インデックスに長期投資した場合の期待リターンは年率4〜6%程度(過去の長期実績ベース)とされており、運用効率の差が時間とともに拡大します。 ただし「NISAなら必ず勝てる」ではない ここで一つ重要な注意点があります。インデックス投資は元本保証ではなく、暴落時に積立を止めてしまうと複利効果も止まります。 年利5%という数字は、あくまで過去の長期平均からの期待値です。特定の10年間や20年間で必ず5%出るわけではなく、運の悪い時期に始めれば年利2〜3%にとどまる可能性もあります。 実際、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックでは、含み損30%超の局面で積立を止めてしまった方も少なくありません。積立を止めた瞬間に「下がったところで損切り、上がるところに乗れない」最悪のパターンに入ります。 「NISAなら必ず保険より得」ではなく、「長期で淡々と続けられる前提なら期待値が高い」というのが正確な理解です。 逆に「相場が荒れても20年続ける自信がない」のであれば、積立保険の「強制貯蓄機能」のほうが結果的に手元にお金が残るケースもあります。これは判断基準3でも触れます。 税制まで含めると差はさらに広がる ここまでは「運用利回り」だけの比較でした。税制を加えると評価が変わります。 積立保険側のメリット:生命保険料控除 年間8万円超の保険料を払うと、生命保険料控除(一般)で所得税4万円・住民税2.8万円の所得控除を受けられます。所得税率20%・住民税10%の方で、年間約1万円の節税効果。10年で約10万円、20年で約20万円です。 ただし注意点が2つあります。 すでに他の終身保険や医療保険で「一般生命保険料控除」の枠を使い切っている場合、この積立保険を解約しても節税メリットは減りません(追加メリットがゼロだったため) 解約返戻金が払込総額より大きい場合、差額は一時所得として課税対象です。ただし50万円の特別控除があるため、運用益が小さい契約ではほぼ非課税です NISA側のメリット:運用益が完全非課税 通常、運用益には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。前述の20年シミュレーションでは運用益が約171万円。これに対して通常口座なら約34万円の税金がかかるところ、NISAでは0円です。 純差はNISA優位になりやすい ざっくり整理すると以下の通りです(毎月1万円・20年・他の生保契約なしの場合)。 項目積立保険NISA運用益約26万円約171万円税制メリット(控除/非課税)約20万円(生保料控除)約34万円(運用益非課税)一時所得課税50万円控除内で非課税─合計手取り約286万円約445万円 差額は約160万円。これはあくまで「他の生保契約なし・所得税率20%」のケースで、契約状況や所得帯で変動します。ただし、長期になるほどNISAの非課税効果が拡大する構造は変わりません。 保険業界10年で見えた「惰性で続けている人」の共通パターン 業界に身を置いて見えてきたのは、「もったいない」という感覚だけで払い続けているケースの多さです。 加入から10年以上が経ち、返戻率が80%台のまま止まっている商品を、「いつか100%になるはず」と信じて払い続けている、というパターンは典型的です。ところが設計書をきちんと確認すると、返戻率が100%を超えるのはさらに10年先、あるいはそもそも満期まで保有しても105%程度にしかならない、という商品も珍しくありません。 もう一つ多いのが、「保険に入っておけばとりあえず安心」という状態が続いているパターンです。加入時に設定した保障額が、今のライフステージに合っていないことに気づいていない、というのは一般的によくある話です。独身のころに加入した大きな死亡保障を、10年以上そのまま払い続けているケースなどが典型です。 こうしたパターンに共通しているのは、「最初に比較検討した」のは加入時だけで、その後は一度も見直していない、という点です。保険は一度入ると「払い続けることが正解」に見えやすい商品です。だからこそ、定期的に数字を確認することが重要です。 よくある設計の一例を挙げます。月2万円・20年払いの積立保険で、10年経過時点の解約返戻金が約180万円(払込総額240万円)というものです。そのまま満期まで払い続けた場合、受取額は260万円前後という設計になります。 この場合、「あと10年で+80万円」か「今解約して投資に回すか」の比較になります。年率換算すると約1%前後にとどまるため、保障ニーズがなければ見直しの優先度は高いと判断できます。 なお、金融庁が公表しているNISA口座開設数は2024年末時点で2,500万口座を超えており、30代の利用率も急速に上昇しています。「保険でコツコツ貯める」が当たり前だった世代から、「非課税口座で運用する」が標準になりつつある流れは押さえておくべきです。 あなたは解約を検討すべき?チェックリスト 以下のうち、当てはまるものを確認してみてください。 ...

2026年5月31日 · 最終更新: 2026年6月11日 · HIKO

オリックス生命「エンキャン」はNISAより得?|返戻率139.5%を実利回りで比較した結果

平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。年収300万円台で社会人をスタートし、保険業界で10年勤めたあと IT 企業へ転職、いまは FP2級として家計と投資を発信しています。投資歴は2015年からの11年。コナカ(7494)で9年超の塩漬けや、青山商事で-310,960円の含み損確定など、失敗もそれなりに経験してきました。 2025年12月にオリックス生命が「Yen Can(エンキャン)」という円建ての終身保険を発売しました。「円建てで増える終身保険」「払い終わったあとは払込総額を上回る」という打ち出しで、貯蓄性を気にする30代から「これってNISAより良いの?」という疑問が出てきそうな商品です。 この記事では、エンキャンを題材に「貯蓄できる終身保険は結局おトクなのか」を、低解約返戻金型の仕組み・返戻率・払込総額の関係から整理し、同じ金額を新NISAでインデックス積立した場合と比べてみます。 本記事は特定の保険商品の購入・解約を勧めるものではありません。保険・投資いずれも最終的な判断は契約者ご自身で、設計書・約款・最新の予定利率や目論見書を確認したうえで行ってください。商品情報は2026年5月時点で公式サイト等を参照したものです。なお、本記事はアフィリエイトリンクを含みます。 この記事の要点 低解約返戻金型は「払込中の解約返戻金を約7割に抑える代わりに保険料を割安にする」設計 返戻率は「払込からどれだけ寝かせたか」で決まり、実利回り(IRR)に直すと年1.3〜1.4%(実測)の水準にとどまる 同じ金額を新NISAでインデックス積立した場合、過去実績ベースの想定利回りでは差が大きく開く 保障が必要なら「掛け捨て+NISA」に分けるのが私の考え方 オリックス生命「エンキャン」とは|円建ての低解約返戻金型終身保険 まず商品の基本情報を整理します。以下はオリックス生命の公式サイトおよびオリックスグループのニュースリリース(2026年5月時点)から確認した内容です。 出典:オリックス生命公式サイト(2026年5月確認) 項目内容商品名(愛称)Yen Can(エンキャン)正式名称無配当 指定通貨建(円建)低解約返戻金型終身保険提供会社オリックス生命保険発売2025年12月2日通貨円建て(為替リスクなし)加入年齢男性15〜78歳・女性15〜80歳保険金額200万円から(100万円単位)告知2項目受取額契約時に確定 ポイントは「円建て」「告知2項目」「受取額が契約時に確定」の3点です。ここ数年は予定利率の高さを訴求できる「ドル建て終身保険」が貯蓄性商品の主役でしたが、エンキャンは為替リスクを取りたくない層に向けた円建ての終身保険、という位置づけになります。 なお、名前が似ているため混同されがちですが、エンキャンはオリックス生命の商品です。アフラックなど他社の商品ではありません。 低解約返戻金型の仕組み|「払込中は7割」がカギ エンキャンを理解するうえで一番大事なのが「低解約返戻金型」という設計です。 低解約返戻金型とは、保険料の払込期間中の解約返戻金を、通常の終身保険の約70%に抑える代わりに、毎月の保険料を割安にするタイプの終身保険です。オリックス生命の公式サイトでも、エンキャンは払込期間中の解約返戻金を「低く設定しない場合の70%」に抑える設計だと説明されています。 仕組みを言葉で整理すると、こうなります。 払込期間中(たとえば10年や20年)に解約すると、返戻金が払込総額を大きく下回る(元本割れ) 払込が満了したあとに解約すると、返戻金が払込総額を上回る(返戻率100%超) 払込後に寝かせる年数が長いほど、返戻率は上がっていく つまり「払込中は流動性をほぼ捨てる代わりに、保険料を抑えて満了後の返戻率を高くしている」商品です。途中でやめると損をする、という構造は低解約返戻金型に共通する特徴です。 エンキャンの返戻率|公式の試算例で見る払込総額との関係 公式サイトには、契約例として「30歳女性・基本保険金額1,000万円・10年払込」の数値が掲載されています(2026年5月時点)。これを使って、返戻率と払込総額の関係を見てみます。 項目値契約者30歳女性基本保険金額1,000万円月払保険料39,310円払込期間10年総払込額約4,717,200円(39,310円×120回) この前提での解約返戻率(公式試算例)は次のとおりです。 解約タイミング返戻率(公式試算例)払込満了直後(10年後)107.4%払込から10年寝かせ(20年後)122.5%払込から20年寝かせ(30年後)139.5% 返戻率だけ見ると「30年で139.5%」は大きく感じます。ただし、これは「払い込んだお金を何年寝かせたか」で決まる数字で、寝かせる年数が長いほど返戻率が上がるのは当然です。判断に使うべきなのは返戻率そのものではなく、時間を年率に直した**実利回り(IRR)**です。 返戻率139.5%は年利何%?|実利回り(IRR)に直して考える 返戻率と実利回りは別物です。ここを混同すると判断を間違えます。 返戻率:総払込額に対して、受け取る解約返戻金が何%か。時間軸を含まない単純な比率 実利回り(IRR):「いつ払って、いつ受け取るか」という時間軸を年率に均した利回り。投資商品の利回りと横並びで比較できる唯一の指標 上の公式試算例(30歳女性・10年払込)について、「月39,310円を120回(10年)払い込み、満了後に据え置いて解約する」月次キャッシュフローからIRR(内部収益率)を実測すると、次のとおりになりました。 解約タイミング返戻率実利回り(IRR・実測)払込満了直後(10年後)107.4%年1.41%払込から10年寝かせ(20年後)122.5%年1.35%払込から20年寝かせ(30年後)139.5%年1.34% 上記IRRは「月39,310円を120回払い込み、満了後そのまま据え置いて解約する」という月次キャッシュフローから二分法でIRRを実測した値です。実際の返戻金は契約年齢・性別・保険金額・払込期間・予定利率改定で変わるため、正確な数値は必ず最新の設計書で確認してください。 ポイントは、**返戻率139.5%でも実利回りは年1.3〜1.4%**だということです。しかも返戻率が107.4%から139.5%へ大きく上がっても、実利回りはほとんど動きません。寝かせる年数が延びるぶん、年率に均すと差が薄まるからです。これは円建て終身保険という商品ジャンルの宿命で、エンキャンが特別に低いわけではありません。円建ての貯蓄性保険は構造的に実利回り年1%台に収まりやすい、と捉えておくのが現実的です。 円建て終身保険の実利回りが伸びにくい理由は、主に次の3つです。 保障コストの上乗せ:終身保険なので、死亡保障のためのコストが保険料から差し引かれる 予定利率の水準:円建ては運用先が国内債券中心になりやすく、予定利率自体が高くしにくい 長期固定・低流動性:途中でやめると元本割れする設計のため、流動性プレミアムが取れない 同じ金額を新NISAで積み立てたら?|インデックス積立との比較 ここからが本記事の本題です。エンキャンの月払保険料(公式試算例で月39,310円)と同じ金額を、新NISAでインデックス投信に積み立てたらどうなるか。あくまで考え方を示すための概算比較です。 まず前提を揃えます。 積立額:月39,310円(公式試算例の保険料に合わせる) 積立期間:10年(払込期間に合わせる) その後の据え置き:保険の「払込後に寝かせる」期間に合わせる NISA想定利回り:年3%・年5%・年7%の3パターン(過去実績ベースの想定。将来を保証する数字ではありません) 3パターンを置いたのは、単一の楽観シナリオで結論を出さないためです。年5%は全世界株式インデックスの長期平均としてよく語られる水準、年3%はかなり保守的に見たケース、年7%は強気のケースです。この前提で、10年積立後に運用を継続した場合の評価額の目安は次のようになります(エンキャン側は公式試算例の返戻金の実額)。 経過エンキャン(円建終身)NISA年3%NISA年5%NISA年7%10年後約507万円約548万円約607万円約672万円20年後約578万円約737万円約988万円約1,323万円30年後約658万円約990万円約1,610万円約2,602万円 NISA側はいずれも「月39,310円を10年積み立て、その後は積立をやめて想定利回りで据え置き運用を継続した場合」の月初複利の概算です。手数料・税金・暴落・将来期待リターンの低下は織り込んでいません。年3〜7%は過去実績ベースの想定で、将来を保証するものではなく元本割れもあり得ます。エンキャン側は公式試算例の返戻金の実額です。 注目してほしいのは、最も保守的な年3%想定でも、長期ではエンキャン(30年後の返戻金658万円)をNISA(990万円)が上回るという点です。楽観的な前提に頼らなくても、長期では差がつきやすい構造だということです。もちろんこの差は運用利回り次第で縮みもしますし、NISAには死亡保障がありません。次の章で、この比較の落とし穴も書いておきます。 30年後の到達額イメージ(月39,310円・概算) 658万円 エンキャン 990万円 NISA年3% 1610万円 NISA年5% 2602万円 NISA年7% エンキャンは公式試算例の返戻金実額(30年後)、NISAは10年積立後に年3〜7%で据え置き運用を継続した月初複利の概算。年3〜7%は過去実績ベースの想定で、将来を保証する数値ではありません。 この比較の落とし穴|終身保険には「死亡保障」がある ここまで利回りでNISAが優位という整理をしてきましたが、これだけでは片手落ちです。エンキャンは終身保険なので、運用部分とは別に「一生涯の死亡保障(死亡・所定の高度障害)」がついています。NISAにはこれがありません。 ...

2026年5月30日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO

第一生命「ステップジャンプ」は得か損か|NISAと比較して見えた3つの注意点

平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。保険業界に10年身を置いたあと IT企業へ転職し、現在は FP2級として家計と投資の発信をしています。 最近「指数連動型」をうたう個人年金保険を見かける機会が増えました。第一生命の「指数連動型年金ステップジャンプ」もそのひとつです。指数に連動して年金原資が増える可能性があり、しかも一定期間を過ぎれば払い込んだ保険料が保証される、という建付けは、「NISAの値動きは怖いけれど、預金より増やしたい」という層にとって魅力的に映ります。 そこで本記事では「ステップジャンプは得か損か」という問いに対して、特定商品の良し悪しを断定するのではなく、NISA・インデックス投信と並べたときにどこを見て選べばよいのかを、公式の商品概要(2026年5月時点)と一般的な制度知識をもとに整理します。「ステップジャンプ」はあくまで具体例の一つとして扱います。投資判断・契約判断は最終的にご自身の責任で行ってください。 先に「ステップジャンプのデメリットだけ知りたい」という方向けに要点をまとめると、契約前に押さえておきたい注意点は大きく3つです。(1)連動する参照指数の具体名・計算ルールが一般向けページでは確認しづらい、(2)上限キャップや参加率によって指数の上昇分がそのまま反映されない設計が一般的、(3)長期保有前提で流動性が低く、保証や運用にかかるコストが信託報酬のように年率で明示されにくい、の3点です。いずれも「入るな」という話ではなく、下値保証という安心の対価として生じる構造的な制約です。詳しくは後述の「第一生命ステップジャンプのデメリット(注意点)」で公式情報をもとに整理します。 なお、当記事は商品の購入・契約を勧誘するものではなく、記事末尾の証券口座リンクにはアフィリエイトリンクを含みます。 結論:見るべきは「参照指数の中身」「保証の範囲」「コストの見えにくさ」の3点 先に結論を整理します。指数連動型の個人年金保険を検討するとき、私が着目するのは次の3点です。 連動する指数の中身が確認できるか:商品概要で参照指数の具体名が開示されていない場合、何にどれだけ連動するのかを契約前に把握しにくい 保証されるのは「元本」か「増加分」か:多くの指数連動型は、一定期間経過後の払込保険料(元本)は保証する一方で、増加分は運用成果次第で確定しません 手数料・控除コストが見えにくい:保険商品は運用益から差し引かれる費用が信託報酬のように明示されないことが多く、実質的なコストが比較しづらい そのうえで私自身は、税優遇と低コストが明確な NISA とインデックス投信、それに勤め先の企業型DCを資産形成の中心に置いています。理由は記事の後半で書きます。 ステップジャンプ vs NISA 一目比較表 まず、指数連動型個人年金(「ステップジャンプ」はその一例)と NISA インデックス投信を、主な観点でざっくり比べると次のようになります。記号は ◯(優れる・有利)/△(条件つき・どちらとも言えない)/✕(弱い・不利)の目安です。あくまで一般論としての整理で、優劣の断定ではありません。 観点指数連動型個人年金(例:ステップジャンプ)NISAインデックス投信元本保証◯(一定期間経過後は払込保険料を保証)✕(元本割れリスクあり)期待リターン△(上限・参加率で上振れが抑えられる設計が一般的)◯(指数に概ね連動・長期では高い期待値)流動性(換金しやすさ)✕(長期保有前提・途中解約は元本割れの可能性)◯(いつでも売却可)コストの透明性△(保証費用等が信託報酬のように明示されにくい)◯(信託報酬が年率で明示・低コスト)税制メリット△(個人年金保険料控除など条件つき)◯(運用益が非課税) この表だけ見ると NISA 寄りに見えますが、それは「元本保証」を最優先する人にとっての見え方が逆転するからです。元本割れを絶対に避けたい人にとっては、◯と✕が入れ替わって見えます。どちらが正解という話ではなく、何を最優先にするかで評価が変わる、という点が本質です。 「ステップジャンプ」の公式情報を整理する まず第一生命「指数連動型年金ステップジャンプ」の公式に書かれている内容(2026年5月時点)を、事実ベースで整理します。商品の文章をそのまま引用するのは避け、概要を要約します。 項目公式記載の内容商品種類指数連動型の個人年金保険連動対象「第一生命所定の参照指数」(世界各国の株式・債券・不動産などに分散した運用成果を反映)元本の扱い契約日から3年経過以後は、払い込んだ保険料が保証される3年経過前の解約払い込んだ保険料の累計額を下回ることがある年金総額の保証年金の総額として払込保険料の累計額を保証払込期間契約年齢に応じて5年〜50年払込方法月払・年一括払受取方法確定年金(一括受取・未払年金現価の一括受取も可)告知健康状態の告知不要 出典:第一生命「指数連動型年金ステップジャンプ」商品紹介ページ(https://www.dai-ichi-life.co.jp/promotion/stepjump/01/index.html /2026年5月時点で筆者確認)。 ここで押さえておきたいのは、「払込保険料の累計額は保証される」一方で、それを超える増加分は運用成果次第で確定しないという構造です。マイナス運用時も年金原資は減らない設計とされており、その意味で「下値は守りつつ、上振れを狙う」タイプの商品だと理解できます。 第一生命ステップジャンプのメリット 公式情報をもとに、FPの一般論として整理できるメリットを挙げます。いずれも「こういう人には合いやすい」という相性の話で、誰にとっても得という意味ではありません。 一定期間経過後は払込保険料が保証される:契約日から3年経過以後は、払い込んだ保険料が下回らない設計とされており、「元本割れだけは避けたい」という人の心理的なハードルは下がります マイナス運用でも年金原資が減らない建付け:相場が長期低迷した局面では、下値保証が効いて結果的に有利になる可能性があります 健康状態の告知が不要:持病などで医療保険・死亡保険に入りにくい人でも、貯蓄性の商品として検討の余地があります 自分で売買タイミングを判断しなくてよい:値動きを見て一喜一憂したくない、ほったらかしにしたいという人には精神的な負担が小さい設計です 個人年金保険料控除の対象になり得る:所定の条件を満たせば、年末調整・確定申告で保険料控除を受けられる場合があります(条件は契約内容次第) 第一生命ステップジャンプのデメリット(注意点) 一方で、契約前に押さえておきたい注意点も事実ベースで挙げます。「入るな」という話ではなく、比較検討の前に確認しておきたい弱みという位置づけです。 参照指数の具体名・計算ルールが一般向けページでは把握しにくい:何にどれだけ連動するのかを、契約締結前の書面まで見ないと確認しづらい点があります(後述します) 上限キャップ・参加率で上振れが抑えられるのが一般的:「指数連動」でも、指数が10%上がったときに10%そのまま反映されるとは限らず、計算式を通して目減りする設計が一般的です コスト(保証費用等)が信託報酬のように年率で明示されにくい:下値保証や運用にかかる費用が、NISA投信の信託報酬(年率0.1%前後)のように一目で比較できる形で示されないことが多いです 流動性が低い:長期保有が前提で、3年経過前を含めて途中解約は元本割れの可能性があります。ライフイベントで資金が必要になっても機動的に引き出しにくい構造です 税制メリットがNISAほど大きくない:NISAは運用益そのものが非課税ですが、個人年金保険の税優遇は保険料控除が中心で、条件や上限があります これらは商品の欠陥という意味ではなく、「下値保証という安心を得る代わりに生じる構造的な制約」です。安心の対価として何を差し出しているのかを理解したうえで選ぶことが大切だと考えます。 運用実績は一般向けページでは非開示 デメリットのなかでも、私が特に確認しづらいと感じたのが運用実績(過去のリターン推移)が一般向けページでは把握しにくいという点です。 私が確認した一般向けの商品紹介ページ(2026年5月時点)では、参照指数が過去にどれくらい動いたか、その結果として年金原資がどう推移したかといった運用実績の数値を見つけることができませんでした。参照指数が「第一生命所定の参照指数」という独自指数で、一般に流通するインデックス(オルカンのMSCI ACWI等)のように第三者が過去チャートを検証できない点も、実績を追いにくい一因だと考えられます。 対比として、NISAで買えるインデックス投信であれば、連動指数の過去リターンや基準価額の推移を、運用会社の月次レポートや目論見書で誰でも無料・契約前に確認できます。過去にどれだけ増えたか(減ったか)を契約前に検証できるかどうかは、実績の見えにくい商品を評価するうえで大きな差になると考えます。運用実績が事前に把握しづらい商品ほど、後述する参照指数の中身やキャップ・参加率といった計算ルールを書面で丁寧に確認する意味が増す、というのが私の受け止めです。 公式シミュレーションで示された利率の目安 一方で、公式ページのシミュレーション欄には利率の数値も一部示されています。私が確認した商品紹介ページ(登録番号 C25P0403・2026年3月6日版、2026年5月時点で筆者確認)のシミュレーション欄では、初年度の適用利率が年0.86%(これをもとにした計算利率0.80%)、年金受取開始日以後の予定利率が**年0.4%**と示されていました。あわせて、過去(2008年1月〜2023年12月)のマーケットの動きにもとづく試算である旨も記載されています。 これらはあくまで公式ページ掲載時点の一例で、実際に適用される利率や最終的な受取額は、契約時期・参照指数の動き・設計内容によって変わります。ここで意識しておきたいのは、「指数連動型」という言葉から株式指数並みの高いリターンをイメージしていると、示されている利率の前提や試算の基準期間との間にギャップが生まれやすい、という点です。試算がどの期間のどんな前提で作られているかまで含めて、最新の設計書で確認しておくと、想定との食い違いを避けやすいと考えます。 参照指数の不透明さをどう見るか 「ステップジャンプ」を見ていて、私が一番気になったのが参照指数の中身の見えにくさです。 私が確認した一般向けの商品紹介ページ(2026年5月時点)では、連動対象が「第一生命所定の参照指数」「世界各国の株式・債券・不動産などに分散」と説明される一方で、参照指数の具体名・構成銘柄・算出ルール(上限キャップや参加率の数値)までは確認できませんでした。 これを「隠している」と言いたいのではありません。保険商品では、こうした詳細が契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)や設計書で開示されるのが通常で、一般向けの紹介ページに全部載っていないこと自体は珍しくありません。問題は「悪意の有無」ではなく、契約前のハードルとして、書面まで取り寄せないと中身が分からないという情報の非対称です。 対比として、NISA で買えるインデックス投信を考えると違いがはっきりします。たとえばオルカン(全世界株式、ベンチマークは MSCI ACWI)であれば、連動する指数の名前・構成国・組入上位銘柄・指数との連動度合いが、運用会社の月次レポートや交付目論見書で誰でも無料で確認できます。何にどれだけ投資しているかが、契約前に・無料で・具体名まで分かるわけです。 指数連動型の年金保険を検討するなら、最低でも次の3点を書面で確認することをおすすめします。 参照指数の正式名称(一般に流通しているインデックスか、独自指数か) 上限キャップ・参加率など、指数の値動きを年金原資に反映する際の計算ルール 保証や運用にかかる費用(年率換算でいくらか) ここが確認できないまま「指数連動だから増える」と理解して契約すると、想定とのギャップが生まれやすい、というのが私の率直な感想です。 ...

2026年5月30日 · 最終更新: 2026年7月13日 · HIKO

ソーシャルレンディングの実績と損失|389万円11年で手取り+18,304円・バンカーズ全316本完結

※当記事にはアフィリエイトリンクを含みます。 2026年6月、私の口座で最後の案件まで償還が終わり、全316本の損益が確定しました。運用残高はゼロです。本記事は私の口座で起きた事実の最終確定・全記録です。 私の口座で起きた事実を、先にお伝えします。 389万円を11年運用した結果 項目金額投資元本(316本)3,890,000円税引前利益+122,653円源泉徴収-104,349円税引後利益+18,304円年率換算約0.04% 年利7〜12%で募集された商品群に389万円投じた結果、11年後の手取りは18,304円でした。 年利7〜12%の商品を316本買いましたが、結果として手取りは銀行預金とほぼ同水準でした。 これは「ソーシャルレンディングは儲からない」という一般化された主張ではなく、私の口座で発生した実数の記録です。同じ商品・同じ時期に出資した別の方の結果は異なります。本記事は私の入出金CSV(316本・1423トランザクション)を全件集計したうえで、運用報告書の数字を引用しながら11年を振り返ったものです。 なお、融資型クラウドファンディングは元本保証のない金融商品です。本記事は特定の運営会社・商品・通貨を推奨または批判するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。 平成時代を生きた30代・夫婦二人暮らし(子どもなし)・川崎市在住・FP2級のHIKOが書いています。投資歴は2015年スタートで11年目。年収300万円台から投資を始め、青山商事で-310,960円・JTで+376,930円の成功と失敗を経験してきました。 11年運用の収支構造(内訳) 「税引後+18,304円」を分解すると、こうなります。 項目金額投資元本(316本)3,890,000円元本償還(戻ってきた元本)3,868,806円分配累計(マイナス分配=元本割れ償還も含む)143,847円源泉徴収-104,349円税引前損益+122,653円税引後損益+18,304円戻らなかった元本(焦げ付き確定4本)21,194円最終預託金残高(出金済み)27,876円 元本389万円のうち3,868,806円は無事に戻ってきました(99.5%)。減ったのは焦げ付きが確定した4本の21,194円ぶんで、これは最終的に戻りませんでした。そして元本に上乗せされた分配累計143,847円から源泉徴収104,349円が差し引かれ、結果として手取りは+18,304円でした。 11年運用の収支構造(円) 3868806円 元本償還 143847円 分配累計 -104349円 源泉徴収 18304円 税引後損益 元本はほぼ戻った(99.5%)が、分配で乗った3.7%を源泉徴収2.7%が削り、手取りは0.47%に着地 「99%の元本が戻り、分配で3.7%足され、税金で2.7%引かれて、手取り0.47%」というのが11年の総括です。広告でよく見る「年率7〜10%」の表面利回りとは、ずいぶん違う数字に着地しました。 なぜ手取り0.04%に着地したのか|3つの構造要因 表面利回りと税引後手取りに大きな差が生まれた理由は、3つの構造要因があります。 1. 源泉徴収20.42%が利益のみから天引きされる 融資型クラウドファンディングの分配金は雑所得相当として、受け取り時点で20.42%が源泉徴収されます。 利益が出たファンドの分配金から源泉徴収104,349円が天引き 損失が出たファンドからは源泉は引かれない(そもそも分配がマイナス) 結果として、粗利122,653円に対して源泉徴収104,349円が発生 雑所得の課税関係は複雑で、確定申告での扱いは個別事情によります。詳細は税理士または税務署にご確認ください。本記事は私個人の口座で発生した数字の記録であり、税務上のアドバイスを目的としたものではありません。 2. 元本割れ案件が利益を相殺する 11年間に投じた316本のうち、一定数が元本割れで償還されました。元本割れした案件の損失分は、利益が出た案件の分配金とは自動通算されません(雑所得の通算可否は個別事情によります)。結果として「勝った案件の利益から源泉が引かれ、負けた案件の損失はそのまま手元の負担」という形で集計に反映されました。 3. 流動性がないため当初予定の3倍まで運用が延びることがある 融資型クラウドファンディングは償還日まで途中解約できません。後述する2026年5月22日同日償還の4本では、当初予定567〜750日が実際1,868〜2,112日(予定の2.6〜3.3倍)まで延びました。この間の機会費用は表面利回りに織り込まれていません。 通貨別の明暗|勝った通貨と負けた通貨 316本を通貨別に集計したのが下の表です。 通貨本数元本税引前損益実質利回りタンザニアシリング建て12210,000+96,182+45.8%メキシコペソ建て13140,000+42,583+30.4%ペルーソル建て440,000+11,969+29.9%米ドル建て24260,000+20,220+7.8%ユーロ建て12200,000+8,092+4.0%円建て【】付き56880,000-8,033-0.9%円建て古参(無印)1391,580,000-48,583-3.1%ロシアルーブル建て10110,000-21,366-19.4%シンガポールドル建て110,000-6,243-62.4% 集計してみると、高金利新興国通貨(タンザニアシリング・メキシコペソ・ペルーソル)が勝ち、円建てとロシアルーブル建てが負けという結果でした。 ...

2026年5月21日 · 最終更新: 2026年5月23日 · HIKO

日本生命「みらいのカタチ」のデメリットは?得か損かを元保険屋FPが試算|月4万→更新で7万円台になる構造

平成時代を生きた30代・川崎市在住の HIKO です。年収300万円台で社会人生活を始め、保険業界で10年働いたあと IT 企業へ転職、現在は FP2級として家計と投資の発信をしています。本記事では、日本生命の主力商品「みらいのカタチ」を、30歳男性のモデルケースで検証します。 本記事は 公式の設計書ではなく、終身保険一般の保険料水準と返戻率水準に基づくモデルケース試算 です。実際の保険料・返戻金は契約年齢・性別・予定利率・契約者配当の有無・組み合わせるパーツ構成によって変動するため、最終判断は必ず設計書(個別見積もり)でご確認ください。 「みらいのカタチ」は最大13種類の保障パーツを自由に組み合わせる「組立型保険」です。営業職員の説明では「これ1本でライフプラン全部カバー」と紹介されることが多い商品ですが、本記事では (1) 世帯月4万円ケースの30年キャッシュフロー、(2) 10年更新型特約の保険料倍増リスク、(3) 終身保険パーツのIRR、を中心に一次計算で整理していきます。 結論:30歳モデルケースで見える4つの構造リスク 30歳男性・終身500万円+更新型特約パッケージのモデルケースで試算すると、みらいのカタチは次の4点の構造リスクが浮かび上がります。 世帯保険料が月4〜5万円規模になりやすい:終身+定期+医療+がん+介護+学資の組み合わせで30代夫婦の保険料が月5万円超になるケースが多かった 10年更新型特約は40歳・50歳の更新で保険料が倍増する:契約時の保険料はあくまで「最初の10年」だけ。子育て期の更新で家計が一気に重くなる 終身パーツのIRRは長期保有でも年率1%前後:払込終了(30年)直後ではまだ元本割れ、返戻率100%超えは払込終了から10年以上経過後 「組立型」ゆえに全体像が見えにくい:パーツ料金が合算請求のため、保障の必要性と価格の妥当性をパーツ単位で点検しない限り解約判断ができない ここから先は、公式条件と一般的な保険料水準を使って数字で整理していきます。 「みらいのカタチ」の公式条件を整理する まず2026年5月時点で日本生命公式が示している商品概要です。 項目内容商品種類組立総合保障保険(最大13種類の保障を自由組合せ)主な保障パーツ終身保険/定期保険/収入保障保険/総合医療特約/3大疾病保障保険/介護保障保険/年金保険/養老保険/生存給付金付定期 など契約可能年齢パーツごとに設定(終身は0〜85歳、定期は0〜80歳など)保険料払込期間パーツごとに設定(終身は60歳・65歳払込済/終身払い、定期・特約は10年・20年などの更新型)解約返戻金パーツごとに発生(終身・養老は累積、医療・介護・定期・収入保障は基本ゼロ)契約者配当5年ごと配当型あり(業績連動で配当額は変動)生命保険料控除終身・定期は一般/医療・介護特約は介護医療/年金パーツは個人年金(一定要件あり) 「組立型」の建付けは「13パーツの中から必要なものを選んでひとつの契約にする」というシンプルな構造です。一方で、貯蓄性パーツ(終身・養老・年金)と掛け捨て型パーツ(定期・収入保障・医療・介護)が同じ契約番号で混在するため、解約返戻金や実利回りをパーツ単位で見ないと「全体でいくら戻ってくるのか」が把握しづらくなります。 なぜ「みらいのカタチ」で保険料膨張が起きるのか みらいのカタチを検討する人の経路で多いのは「職場に来る生保レディから提案された」「親が長年契約していて勧められた」「結婚や出産のタイミングで相談した」というケースです。日本生命が個人保険市場でトップシェアを維持し続けている理由は、商品設計そのものより販売チャネルの圧倒的な規模にあります。 約5万人規模の営業職員ネットワーク:全国の事業所から職域・家庭訪問で接触するため、自分から保険ショップに足を運ばない層にも届く 対面で「組み立てて」もらえる安心感:終身・医療・介護・年金などをまとめて一人の担当者が説明するため、保険選びの心理的コストが小さく感じられる 節目ごとの見直し提案:結婚・出産・住宅購入・子の独立といったライフイベントごとに営業職員が訪問し、パーツの追加・変更を提案する仕組み 「日本生命」というブランドへの信頼:相互会社としての歴史と規模感から、商品内容を細部まで確認せず加入する層が一定数いる このアクセスの良さと提案力は、自分から金融商品の比較検討をしない層には大きな価値があります。一方で、同じ理由から次のような行動も起きやすくなります。 担当者の提案するパーツ構成を、保障の必要性と価格の妥当性を分けて検討せず受け入れる 「これ1本で安心」という説明から、貯蓄性パーツの実利回りを確認しないまま長期契約に入る 結婚・出産のたびにパーツを追加し、世帯保険料が月4〜5万円規模に膨らんでも全体像を再点検しない 業界全体の傾向として、30代夫婦で終身500万+医療+がん+介護+(子が生まれたら)学資を持ち、世帯保険料が月5万円超に膨らんでいる家計は珍しくありません。 一つひとつのパーツは数千円なので、追加するときに大きな違和感が出ません。気づくと固定費の最大項目が住居費の次に保険、という家計が普通に出来上がります。 商品自体の良し悪し以前に、「自分の目的が死亡保障なのか、医療保障なのか、貯蓄なのか」を契約前に明文化することが、後悔を避ける一番の近道です。 世帯4万円ケース:30歳夫婦のモデルパッケージを見える化する 以下は公式設計書ではなく、終身保険一般水準と日本生命の典型パッケージ提案を組み合わせたモデルケース試算 です。実際の保険料は契約条件で変動します。 30代既婚・夫婦+子1人想定で営業職員から提案される典型的なパッケージを再現すると、次のような構成になることが多いです。 夫(30歳)のパッケージ例 パーツ保障内容月額(概算)期間終身保険500万円・60歳払込済12,000円30年払い定期保険2,000万円・10年更新2,500円10年更新型収入保障保険月10万円・60歳まで2,800円60歳まで総合医療特約日額5,000円・10年更新3,200円10年更新型3大疾病保障保険500万円・10年更新2,500円10年更新型介護保障保険300万円・終身払い3,000円終身払い合計26,000円/月 妻(30歳)のパッケージ例 パーツ保障内容月額(概算)期間終身保険200万円・60歳払込済5,000円30年払い総合医療特約日額5,000円・10年更新2,800円10年更新型3大疾病保障保険300万円・10年更新1,800円10年更新型がん保険特約診断一時金100万円1,500円10年更新型介護保障保険200万円・終身払い2,000円終身払い合計13,100円/月 世帯合計:月39,100円・年47万円 夫26,000円+妻13,100円=世帯月額39,100円。年間にして約47万円です。ここに学資保険や個人年金を追加すれば月5万円台に到達します。 このパッケージのうち、貯蓄性として戻ってくるのは終身保険パーツの解約返戻金のみで、定期・収入保障・医療・3大疾病・介護・がんはすべて掛け捨てです。 なお、子育て期の死亡保障そのものは、掛け捨て定期保険のほうが合理的なケースも多い です。本記事で問題視しているのは「掛け捨てそのもの」ではなく、必要保障額を超えてパーツを積み上げた結果、世帯固定費が膨張する構造のほうです。「必要な保障に絞る」と「必要保障以上には積まない」の両方が家計効率の前提になります。 30年キャッシュフロー:固定費インパクトを月単位で見る 以下も終身保険一般水準のモデルケース試算です。実際の更新後保険料は契約条件で変動します。 「50年で900万円差」と言われてもピンと来ないので、30年のキャッシュフロー(月単位の固定費)で見える化 します。 世帯月4万円を30年続けると 期間月額年額累計30〜39歳(10年)約39,000円約47万円470万円40〜49歳(10年)更新で約55,000円に上昇約66万円1,130万円50〜59歳(10年)再更新で約75,000円に上昇約90万円2,030万円30年累計約2,030万円 10年更新型の医療・3大疾病・がん・定期は年齢が上がるごとに保険料が上昇するため、契約時の月4万円は最初の10年だけ です。40歳更新で月5.5万円、50歳更新で月7.5万円というのは、終身保険一般の更新型特約の年齢別保険料水準から見て モデルケースとして 十分起こり得る数字です。 月2万円を浮かせた場合のキャッシュフロー 仮に保障の優先順位を見直して、世帯月額を4万円→2万円に圧縮できた場合、30年で 720万円のキャッシュフロー余裕 が生まれます。これは「老後の総額」ではなく「毎月の家計の余裕」として効いてくる金額です。 ...

2026年5月17日 · 最終更新: 2026年7月14日 · HIKO