旧NISAで個別株投資をした10年間を購入年ごとに振り返るシリーズ。④は2018年、中北製作所で−10.6万円を出した年の話です。失敗を「なんとなく反省」で終わらせず、再現可能なミスに分解して整理しました。
個別株で失敗しやすい「高値掴み・集中投資・感覚買い」の典型例として、2018年の実例を紹介します。
2018年の結論から先に言います
1銘柄に38万円を突っ込んで、外したときに取り返せませんでした。
2018年は9銘柄を購入。MICS化学(+42,900円)など利益が出た銘柄もあります。ただし年間でみれば、中北製作所の−106,000円(配当込)が重くのしかかりました。
失敗の本質は「株価が下がった」ことではありません。問題は、外したときにダメージが大きくなる資金配分で買い続けたことです。
2018年に買った9銘柄
| 銘柄 | 購入単価 | 投資額 | 損益 |
|---|---|---|---|
| 中北製作所 | 3,825円 | 382,500円 | −106,000円 |
| 日水製薬 | 1,419円 | 141,900円 | −27,600円 |
| 不二電機工業 | 1,439円 | 143,900円 | −6,400円 |
| FCホールディングス | 810円 | 81,000円 | +7,400円 |
| 丸八証券 | 865円 | 86,500円 | +15,400円 |
| クニミネ工業 | 969円 | 96,900円 | +16,150円 |
| 川澄化学工業 | 879円 | 87,900円 | +30,900円 |
| みずほFG(追加) | — | — | — |
| MICS化学 | 359円 | 35,900円 | +42,900円 |
数字を並べると構造がはっきりします。他の8銘柄を合計すると損益はプラス側に傾いていたはずです。それを中北製作所の1銘柄が全部消した年でした。
最大の失敗:中北製作所 −106,000円
中北製作所(6496)はバルブ・流体制御機器を製造するメーカーです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 購入単価 | 3,825円 |
| 投資額 | 382,500円 |
| 売却額 | 248,500円 |
| 配当合計(保有中) | 28,000円 |
| 最終損益 | −106,000円 |
2018年に購入し、2020年7月ごろに売却しました。約2年の保有で10.6万円の損失です。
配当を受け取り続けたから売れなかった
旧NISA口座で2年半ほど保有する間に、税引後で約28,000円の配当を受け取りました。半期ごとに6,000〜7,000円が振り込まれてくるイメージです。
「配当が出ているうちは売らなくていい」と当時は思っていました。今振り返ると、これも判断を遅らせた要因のひとつです。
年28,000円の配当があっても、購入額382,500円に対しては税引後利回り約3.6%。一方で株価は購入直後から下落基調で、含み損は10万円を超えていました。配当2年分を貯める間に元本が25%以上削れていたわけです。
「配当があるから保有継続」という判断は、配当利回り×期待保有年数が含み損のリスクを十分に上回るときにだけ意味を持ちます。配当3.6%で含み損25%は、明らかに割に合わない構造でした。当時の私は配当の安心感を「保有継続の根拠」と勘違いしていました。
なぜ高値で買ったのか
購入理由は「BtoB産業機械で安定的な需要がある」「配当もある」「自己資本比率90%で財務が堅い」というものでした。ただ、この理由には決定的に足りないものがあります。「今の株価が割高か割安か」の確認をしていませんでした。
3,825円という単価が「安いかどうか」を判断するには、少なくとも以下を確認する必要があります。
- PERとPBR:同業他社と比べて割高ではないか
- 過去の株価レンジ:歴史的に見て高い水準ではないか
- 業績トレンド:ここから利益が伸びる見込みがあるか
例えば、過去平均PERより明らかに高い状態で買っていないかを見るだけでも、高値掴みはかなり防げます。
これを調べずに「BtoB老舗メーカーだから大丈夫」という印象で382,500円を投じたのが、ミスの根本でした。
コロナ前から株価は軟調だった
中北製作所は購入後すぐに株価が軟調に推移していました。コロナショック(2020年3月)の急落より前から下がっていたということです。
「コロナで下がった」は一部正しいですが、本当の問題は「買う前から割高だった可能性が高い」ことにあります。少なくとも「コロナだけが原因」とは言えない値動きでした。当時の私はこの区別を意識できていませんでした。
失敗を3つのミスに分解する
中北製作所の失敗を「高値掴みだった」で終わらせず、再現可能なミスに分解します。
ミス① 割高で買った(指標を確認しなかった)
株価の「高い・安い」は絶対額では判断できません。3,825円が高いかどうかは、業績や純資産との比較(PER・PBR)と過去の価格帯で見る必要があります。当時はこの確認をせずに「配当があるし買えそうな値段」という感覚で判断していました。
ミス② 1銘柄に資金を集中した(配分リスク)
9銘柄に分散しているように見えて、382,500円という投資額は他の銘柄の2〜4倍でした。他がすべてプラスでも、この1銘柄が外れれば年間成績がマイナスに転じる構造です。集中した理由は明確ではありません。「なんとなく期待していた」としか言えません。
ミス③ 購入理由が感覚的だった(意思決定の質)
「製造業は景気に強い」は一般論としては正しいですが、具体的な根拠になりません。業種の特性を語るだけでは「なぜこの会社のこの価格で買うのか」という理由にはなっていません。感覚的な理由が大きい分、後で「なぜ買ったか」を振り返ることもできませんでした。
プラス銘柄との違いは何か
2018年はMICS化学(+42,900円)、川澄化学工業(+30,900円)など利益が出た銘柄もあります。
ただし正直に言うと、プラスになった理由も「ちゃんと分析したから」ではありません。MICS化学は「安くて買いやすかった」という理由で購入しています。35,900円の投資で42,900円の利益、リターン率は約119%でした。
ここで重要なのは、プラスになったことと、再現性があることは別問題だということです。
同じ「感覚的な選び方」でも、投資額が35,900円なら外れても傷は浅い。382,500円なら致命傷になる。2018年で起きたのはそういうことです。
「なぜプラス銘柄が当たったか」の分析より、「なぜ損失銘柄にそれだけの額を張ったか」を問うほうが、今後の行動に直結する問いです。
「運 vs 実力」の切り分け
個別株投資の結果を振り返るときに、この切り分けは必ずしておく必要があります。
短期の結果は運の要素が大きい。 1〜2年の株価変動は業績以外の要因(市場全体の動向、金利、為替、突発的なイベント)に大きく影響されます。2018年〜2020年という期間は米中貿易摩擦・コロナショックという外部要因が重なりました。中北製作所の下落も、コロナの影響を完全に除外して語ることはできません。
一方、ミスの構造は再現性がある。 割高で買う・1銘柄に集中する・根拠があいまいなまま大きく張る、というミスのパターンは、市場環境に関係なく繰り返されます。2017年の青山商事(−31万円)も、2018年の中北製作所(−10.6万円)も、同じ構造のミスでした。
つまり「運が悪かった」は一部正しく、「ミスがなければ防げた」も正しい。この両方を認めることが、次の行動を変えるうえで必要です。
2018年の失敗から作ったルール
当時はここまで整理できていませんでしたが、今振り返るとこのルールがあれば結果は違ったと思います。
ルール1:1銘柄の投資額は総投資額の20%以内 382,500円という投資額は、2018年の総投資額からみて明らかに比率が高すぎました。上限を決めておけば、1銘柄が外れたときのダメージを制限できます。1銘柄が半値になっても資産全体へのダメージを10%程度に抑えるため、この水準にしています。
ルール2:買う前にPERかPBRを1つ確認する 「製造業だから」「配当があるから」は理由になりません。購入価格が割高かどうかを、少なくとも1つの指標で確認してから判断します。
ルール3:「感覚で安い」は根拠にしない 「買いやすそうな値段」「なんとなく信頼できる業種」という理由で買う場合は投資額を小さくするか、そもそも買わない。感覚の精度を信じるなら、根拠を言語化できるまで買わない。どちらかに統一します。
まとめ:2018年で学んだこと
2018年の個別株投資を一言でまとめると、「集中と感覚がセットになると大きな損失になる」です。
分散していても、1銘柄だけ突出した金額を張れば実質的には集中投資と同じです。そして選び方が感覚的であれば、大きく張った銘柄が外れたときに取り返せません。
次のシリーズ⑤では2019年の購入銘柄を振り返ります。2018年の失敗を経てどう変わったか(あるいは変わらなかったか)を正直に書きます。
NISAの制度変更が気になっている方はこちらもどうぞ:2026年NISA改正まとめ|今やるべきことは変わらない理由
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※本記事は私個人の運用実績をもとにした体験談です。投資は自己責任でお願いします。