旧NISAで個別株投資をした10年間を購入年ごとに振り返るシリーズ。②は2016年、一気に15銘柄を買い漁った年の話です。


結論を先に言います。NISAで個別株を買うのはやめてください。少なくとも初心者にとっては、全世界インデックスの積立一択です。

私が10年かけて学んだことを、あなたには最初の5分で伝えます。


2016年、私がやった3つの間違い

2015年にNISAを始めた私は、2016年に「少し投資の勉強をした人」になっていました。「分散投資が大事」という言葉を覚え、この年だけで15銘柄・約115万円を投じました。

結果はプラスとマイナスの打ち消し合い。エスクリ1銘柄で71,250円の損失を出し、5つのプラス銘柄の利益をほぼ帳消しにしました。

失敗の原因を整理すると、3つの間違いに集約されます。


ミス①:株価が「安い」銘柄を選んでいた

2016年の購入銘柄を見ると、みずほFG(179円)・東洋鋼鈑(285円)・ディア・ライフ(360円)・りそなHD(399円)など、株価が低い銘柄が多く含まれています。

当時の私には「株価が安い=まだ上がる余地がある」という誤解がありました。

しかし、これは完全な間違いです。

株価は企業の価値そのものではありません。

たとえばみずほFGは179円でしたが、発行済株式数は約70億株を超えます。時価総額は数兆円規模の大企業です。「1株179円だから割安」ではなく、市場がそれだけの価値と評価しているから179円なのです。

株の割安・割高を判断するなら見るべきはPER(株価収益率)・ROE(自己資本利益率)・成長率などの指標です。1株あたりの価格は、「1株単位がいくらか」というだけであり、割安さとは無関係です。


ミス②:15銘柄に分けても分散にならなかった

「分散投資が大事」と覚えた私は、15銘柄に資金を振り分けました。

しかしこれは分散投資ではなく、ただの目移り買いでした。

本当の分散投資は、資産クラス・地域・通貨をまたぐことで、相関しないリスクを組み合わせることを指します。日本の個別株を15銘柄買っても、日本株全体が下がれば全部一緒に下がります。

さらに根本的な問題があります。個別株は期待リターンが市場平均と同等かそれ以下であるにもかかわらず、リスクは1銘柄に集中します。得られるリターンの期待値は変わらないのに、負けたときの損失だけが大きくなる非対称な構造になっているのです。

2016年の損益を実際に見てみます。

銘柄購入単価投資額
エスクリ1,069円106,900円
朝日放送700円70,000円
ワコム461円46,100円
岡部832円83,200円
オーウイル771円77,100円
りそなHD399円39,900円
丸三証券971円97,100円
東洋鋼鈑285円28,500円
三菱ケミカル526円52,660円
ディア・ライフ360円36,000円
丸善CHI HD340円34,000円
みずほFG179円143,200円(800株)
リコー930円93,000円
丸紅(追加購入)500円50,000円
テクノメディカ1,960円196,000円

プラスだった銘柄

銘柄損益
リコー+34,150円
みずほFG+33,070円
三菱ケミカル+29,140円
りそなHD+25,950円
岡部+25,100円

マイナスだった銘柄

銘柄損益
エスクリ−71,250円
丸三証券−41,500円
テクノメディカ−3,300円
朝日放送−1,290円
2016年 主要銘柄の損益(円)
¥34150
リコー
¥33070
みずほFG
¥29140
三菱ケミカル
¥-71250
エスクリ
¥-41500
丸三証券
プラスの積み上げをエスクリ1銘柄の大損が打ち消した

プラス5銘柄の合計は+147,410円。マイナス4銘柄の合計は−117,340円。差し引き約3万円の利益ですが、約115万円を投じた割に何も残りませんでした。

2016年 プラス銘柄とマイナス銘柄の合計(円)
¥147410
プラス銘柄合計
¥-117340
マイナス銘柄合計
プラス5銘柄の積み上げを、マイナス4銘柄がほぼ帳消しにした

ミス③:エスクリに見る「業界トレンド無視」の失敗

2016年最大の失敗はエスクリ(結婚式場運営)です。購入時の株価は1,069円。「ブライダル業界は景気に左右されにくいのでは」という浅い考えで選びました。

ブライダル業界は式場という固定費の重いビジネスモデルです。式場の賃料・設備・人件費は稼働率に関係なく発生するため、集客が減れば一気に赤字に転落する構造になっています。少子化・晩婚化が進む環境では長期的な逆風が確定的であり、私が購入した時点ですでにその流れは始まっていました。

コロナで式場運営が全面停止に追い込まれたとき、その構造的な弱さが一気に顕在化しました。2020年4月に約300円で損切りし、損失は−71,250円(配当含む)。購入から売却まで4年かかりました。

業界の固定費構造とトレンドを無視して個別株を選ぶとこうなります。個別株で勝つには業界分析・財務分析・将来予測を自力で行う必要がありますが、当時の私にはその力がありませんでした。


「NISAで個別株」がとくに危険な理由

個別株投資の失敗はどの口座でも痛いですが、NISAで負けると通常口座より痛いです。

その理由は、NISAは損益通算ができないからです。

通常の特定口座であれば、A株で+50,000円・B株で−50,000円なら税金はゼロになります。損失と利益を合算(損益通算)できるからです。さらに、損失が残れば翌年以降3年間にわたって繰り越せる「損失の繰越控除」も使えます。

しかしNISAでは、利益は非課税になる代わりに、損失は他の利益と相殺できません。

エスクリで−71,250円の損失を出したとき、私のNISA口座ではこの損失を使って何かを節税することはできませんでした。非課税という恩恵は利益が出たときだけ有効で、損失に対しては通常口座より不利な扱いになるのです。

NISAの非課税メリットを最大化するには、長期的に増える確率が高い投資に使うべきです。個別株はその候補になりません。


正解ルート:初心者がNISAでやるべきこと

10年間の失敗から言えることは一つです。

NISAでは全世界株式インデックスファンドを積み立てる。それだけでいい。

新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠の2つの枠が設けられています。初心者がまず使うべきはつみたて投資枠です。長期・積立・分散に適した投資信託に絞られており、個別株を選ぶ必要がありません。

全世界インデックスが有効な根拠は、世界経済が長期的に成長し続けてきた事実にあります。個別企業は倒産・消滅しますが、市場全体は銘柄を入れ替えながら成長を続けます。インデックスファンドはその成長をそのまま受け取る仕組みです。

具体的には次のアプローチが再現性があります。

  • 何を買うか:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)など低コストの全世界インデックスファンド
  • どう買うか:毎月定額の積立(月1万円でも3万円でも、続けられる金額)
  • いつまで続けるか:最低でも15年以上。20年・30年のスパンで考える
  • 個別株はどうするか:やりたければ資産全体の10〜20%以内にとどめる。NISAは使わず特定口座で

もし2016年に115万円を全世界株式インデックスに一括投資していたなら、2026年時点でざっくり約2.5〜3倍(280万〜345万円程度)になっていた計算です(過去の世界株式の平均リターン(年率7〜10%前後)をもとにした概算)。同じ115万円で、私は約3万円の利益しか残せませんでした。

私のような失敗(銘柄選びの誤り・業界トレンドの見誤り・損益通算できない損失)は、全世界インデックスの積立では構造的に起きません。世界中の数千銘柄に自動分散され、自分で銘柄を選ぶ必要がないからです。


2016年の教訓まとめ

  • 株価が安い=割安ではない。割安かどうかはPER・ROE・成長率で判断する
  • 同じ国・同じ資産クラスの銘柄を増やしても、真の分散にはならない
  • 個別株は期待リターンが変わらないのにリスクだけ集中する非対称な構造を持つ
  • NISAは損益通算できないため、個別株で負けると通常口座より不利になる
  • NISAのメリットを最大化するなら、全世界インデックスの積立一択
  • 同じ115万円を全世界インデックスに回していれば、10年で280万〜345万円になっていた

2016年は投資額が最大だった年であり、失敗の規模も最大でした。次の2017年には、さらに異なる種類の失敗が待っていました。

NISAの制度変更が気になっている方はこちらもどうぞ:2026年NISA改正まとめ|今やるべきことは変わらない理由



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※本記事は私個人の運用実績をもとにした体験談です。投資は自己責任でお願いします。

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HIKO

保険業界10年勤務・30代IT会社員ブロガー

保険業界10年勤務後、IT企業に転職。生命保険・損害保険の「売り手側の論理」を知った上で、本当に必要な家計管理・投資の情報を発信。NISAや固定費削減の実体験をもとに、30代サラリーマンのお金の不安を減らすことを目指しています。

保険業界10年 IT転職 NISA実践中 固定費削減経験あり