保険業界10年・投資歴11年・FP2級の HIKO です。保険会社で10年働いたあと IT企業へ転職し、家計と投資の発信をしています。

※当記事はアフィリエイトリンク(PR)を含みます。また、本記事で扱う数値は 2026年6月の報道による情報 をもとにしており、商品名や条件は公式の最新情報をご自身でご確認ください。投資・契約の判断は自己責任でお願いします。

2026年6月、明治安田生命が平準払い(毎月払い)の積立保険の予定利率を、現行の1.4%から1.6%へ引き上げると報じられました。報道によると、契約から10年たった満期で受け取れる金額は払込総額の110%になり、これは2026年4月に続く同年2度目の引き上げとのことです。建付け(5年払込・10年満期)から、これは当ブログで以前検証した「じぶんの積立」とみられる商品ですが、公式での裏取りは取れていないため、本記事では報道ベースの慎重な表現で進めます。

ニュースを見て「予定利率が上がったなら、今が買い時では?」と感じた方も多いはずです。本記事では、その予定利率1.6%・満期110%という数字を、実質利回り(IRR)に翻訳して冷静に見ていきます。

結論:利上げは朗報だが、IRRで見ると依然「年1%台」

先に結論を3点に整理します。

  1. 利上げは確かに朗報:満期返戻率が報道前の108.3%から110%へ上がるなら、実質利回り(IRR)は年率約1.07%から 年率約1.28% へ改善します(いずれも本記事の試算)。
  2. ただしNISAとは役割が違う:積立保険は「満期まで保有すれば払込総額を上回る設計の確定リターン商品」、NISAインデックスは「元本割れリスクと引き換えに高い期待リターンを狙う商品」。同じ土俵で「どちらが得」とは言い切れません。なお保険は預金保険の対象外で、保険会社が破綻した場合は生命保険契約者保護機構による補償(責任準備金の原則90%まで等)に拠ることになり、預金と完全に同じ安全性ではない点には留意が必要です。
  3. 「予定利率が上がった=今すぐ買い時」という話には乗らない:予定利率1.6%という数字と、あなたが手にする実質利回りは別物です。数字の見え方に流されず、自分の家計の中での役割で判断するのが現実的です。

ここから先は、報道された数字と一般的な税制値を使って、順番に整理していきます。

報道された内容を整理する

まず、2026年6月の報道で示された内容を整理します。以下はすべて報道ベースの数値であり、公式の最新条件はご自身でご確認ください。

項目報道された内容
対象平準払い(毎月払い)の積立保険
予定利率1.4% → 1.6%(2026年7月申込分から)
払込期間5年
保険期間10年
10年満期時の受取払込総額の110%
例(月2万円の場合)払込総額120万円に対し満期132万円(+12万円)
引き上げの背景国内金利の上昇を反映。2026年内2度目の引き上げ

報道では「投資信託などに比べて元本割れのリスクが少なく、銀行預金よりも金利は高い」という商品の位置づけも示されていました(報道の文言)。ただし、これはあくまで満期まで保有した場合の話で、途中解約時は解約返戻率が100%を下回り元本割れする期間があること、将来的に商品条件が変更される可能性があること、保険である以上は保険会社の信用力に依存することは、地の文として補っておきます。元本保証ではなく「満期まで保有すれば払込総額を上回る設計の確定リターン商品」と捉えるのが正確です。

なお、当ブログで以前検証した時点(2026年5月)の満期返戻率は108.3%でした。今回の報道どおりであれば、満期返戻率が110%へ上がる点が新しい情報になります。

予定利率1.6%・満期110%をIRRに翻訳すると年率いくらか

ここが本記事の核です。「予定利率1.6%」と聞くと、年1.6%で増えるように感じます。しかし、私たちが実際に手にする利回りは、もっと低くなります。

報道の例にならって、月2万円×60ヶ月(5年)払い込み、その後5年据え置いて10年満期で132万円を受け取るケースで計算します。

  • 払込総額:20,000円 × 60ヶ月 = 1,200,000円
  • 満期受取額:1,200,000円 × 110% = 1,320,000円
  • 増加額:120,000円

ポイントは「120万円を一括で預けたわけではない」「毎月2万円ずつ5年かけて積み立て、その後5年は据え置いた」という時間構造です。最後に積んだお金は数年しか運用されず、最初に積んだお金だけが約10年運用されます。

この時間価値を考慮した内部収益率(IRR)を計算すると、次のようになります。

満期返戻率実質利回り(IRR・年率換算)
110%(今回の報道)約1.28%
108.3%(報道前・参考)約1.07%

返戻率110%という見た目に対し、実質利回りは年率約1.28%。利上げによって約0.2ポイント改善した計算ですが、依然として年1%台です。「予定利率1.6%」という数字とは、はっきり差があります。

※IRRは、毎月末に2万円を5年間(計60回)払い込み、最後の払込から5年後に満期金132万円を一括で受け取る前提で、月次キャッシュフローから内部収益率を求めて年率換算したものです(手数料・税・配当等の細目は加味しない簡易試算)。前提が変われば数値も変わります。

なぜ「予定利率1.6%」と「実質利回り」はズレるのか

ここがFPとして一番お伝えしたい部分です。両者がズレる理由は大きく2つあります。

1つ目は、予定利率がかかるのは「払い込んだお金のうち、運用に回る部分」だけだからです。 保険には保険会社の運営経費(付加保険料)や、わずかでも付帯する保障コストが含まれます。払込総額のすべてに予定利率1.6%がそのまま乗るわけではありません。

2つ目は、先ほど触れた時間構造です。 積立保険は「毎月コツコツ積む→さらに数年据え置く」という形のため、お金ごとに運用される期間がバラバラです。満期時点の「払込総額に対する増加率(返戻率110%)」を、毎年の利回り(IRR)に直すと、必ず小さく見えます。

だからこそ、「予定利率◯%」や「返戻率◯%」という表示は、商品同士を比べる物差しとしては不十分です。私はいつも、こうした商品を見るときは返戻率を一度IRRに翻訳してから判断するようにしています。今回のように予定利率が引き上げられたニュースでも、まず実質利回りに直してみると、過度に期待しすぎず冷静に見られます。

同じ月2万円をNISAに入れたら、10年後どうなるか

では、同じ月2万円を NISAつみたて投資枠で全世界株インデックスに5年間積み立て、その後5年間そのまま保有した場合の評価額を試算します。

株式市場では長期的に年率数%〜7%程度のリターンが期待されることがありますが、将来の成果は保証されません。ここでは幅を取って3%・5%・7%の3シナリオで比較します。

シナリオ10年後評価額(NISA)積立保険(満期110%)差額
年率3%(保守)約1,497,341円1,320,000円+約177,000円
年率5%(中央値弱め)約1,730,988円1,320,000円+約411,000円
年率7%(強気)約1,997,117円1,320,000円+約677,000円
月2万円×5年積立・10年後評価額(NISA vs 積立保険・満期110%)
1320000円
積立保険110%
1497341円
NISA年率3%
1730988円
NISA年率5%
1997117円
NISA年率7%
数値は本記事の試算(NISAは年率3/5/7%・運用益非課税)。期待値であり確定リターンではありません。

NISA枠なので運用益はすべて非課税です。控えめな年率3%でも約18万円、年率5%なら約41万円、年率7%なら約68万円の差になります。

ただし、ここは強調しておきます。NISAのインデックス投資には元本割れリスクがあります。 短期では大きく下落する年があり、過去にはリーマンショックのように一時的に評価額が半分近くまで沈む局面もありました。上の数字は「長期で平均リターンが実現した場合」の期待値であり、満期110%という積立保険の確定リターンと同列に比べられる性質のものではありません。「絶対に減らしたくないお金」を入れる商品ではない、という点は必ず押さえてください。

それでも積立保険が向く人/NISAが向く人

利上げで条件が良くなったとはいえ、「どちらが優れているか」ではなく「自分の家計のどこに置くか」で考えるのが現実的です。比較軸を「元本保証/想定利回り/流動性/税優遇」に揃えて整理します。

積立保険(満期110%)
元本割れしにくい(数年経過後)
実質利回り 年率約1.28%(本記事試算)
流動性 早期解約で元本割れ・10年単位の拘束
NISAインデックス
元本保証なし(元本割れリスクあり)
想定利回り 年率3〜7%(期待値・確定でない)
流動性 いつでも売却可(短期下落リスクあり)

積立保険が向きやすい人

  • すでにNISAのつみたて投資枠を満額活用していて、さらに余剰資金を「リスクを取らずに置く場所」が欲しい人
  • 生命保険料控除の枠が完全に空いている人(他の生命保険で使い切っていない人)
  • 値動きが心理的に耐えられず、10年動かさなくても困らない余剰資金がある人

NISAが向きやすい人

  • NISAのつみたて投資枠がまだ埋まっていない人(長期の期待リターン差が大きいため、まずはこちらが合理的なケースが多い)
  • すでに医療保険などで一般生命保険料控除の枠を使い切っている人(節税の上乗せが見込めない)
  • 10年間ずっと動かせるとは言い切れない資金しかない人(早期解約は元本割れの可能性)

私自身はどう考えるか

私自身は2015年から NISA(旧→新)でインデックス投資を続けてきました。投資を始めた当初は年収300万円スタートで、コナカ株を長く塩漬けにし、青山商事では約31万円の含み損を出した経験もあります。決して上手な投資家ではありません。

そのうえで、今回のような利上げニュースを見て思うのは、「数字の見え方に動かされないこと」の大切さです。予定利率1.6%・満期110%という見出しは魅力的ですが、実質利回りに直せば年率約1.28%。これは「悪い商品」という意味ではなく、「元本保証に近い安心と引き換えの利回り」として妥当な水準です。問題は、その安心が自分にとって本当に必要かどうかです。

私の場合は、減らしたくないお金は預金で持ち、増やしたいお金はNISAでインデックスに回す、という役割分担に落ち着いています。積立保険を否定するつもりはまったくなく、「NISAを満額使い、保険料控除枠も空いている人にとっては、預金より優位な置き場になり得る」と考えています。最終的にどちらを選ぶかは、家計の余裕と値動きへの心理的な耐性で判断するのが現実的です。投資・契約の判断は、あくまでご自身の責任でお願いします。

FAQ

Q1. 予定利率が上がったなら、今が買い時ですか? A. 「予定利率が上がった=買い時」とは限りません。予定利率1.6%でも実質利回りは年率約1.28%(本記事試算)で、依然として年1%台です。買うかどうかは、利率の上下より「NISAを満額使い切ったか」「保険料控除枠が空いているか」「10年動かさない資金か」で判断するほうが合理的です。

Q2. 予定利率1.6%なら、年1.6%で増えるのですか? A. いいえ。予定利率は払い込んだお金のうち運用に回る部分にかかる利率で、私たちが手にする実質利回り(IRR)とは別物です。報道どおり満期110%なら、IRRは年率約1.28%です。

Q3. 報道前(満期108.3%)と比べて、どれくらい得になりますか? A. 本記事の試算では、満期108.3%のときIRRは年率約1.07%、満期110%なら年率約1.28%。約0.2ポイントの改善です。月2万円×5年・10年満期の例だと、満期受取が129.96万円から132万円へ約2万円増える計算になります。

Q4. 元本割れの心配はありませんか? A. 一般に、この種の積立保険は契約から数年経過後は解約返戻率が100%以上になる設計ですが、早期解約では元本割れする点に注意が必要です。具体的な解約返戻率は契約年数で変わるため、公式の最新条件をご確認ください。

Q5. iDeCoやNISAとの優先順位は? A. 優先順位は人によって変わります。一般論としては、生活防衛資金を確保したうえで、NISA・iDeCoなどの税制優遇制度を優先的に検討し、その後に積立保険を比較するケースが多いです。所得税率が高く、老後資金目的で60歳まで使わない資金であれば、iDeCoが優先になる場合もあります。積立保険は「税制優遇枠を活用したあとの余剰資金の置き場」として位置づけると考えやすくなります。

まとめ:数字の見え方ではなく家計の役割で決める

今回の利上げで明治安田の積立保険の条件は改善しましたが、予定利率1.6%・満期110%を実質利回り(IRR)に直せば年率約1.28%で、依然として年1%台です。これは「悪い商品」という意味ではなく、満期保有を前提にリスクを抑えた確定リターン商品としては妥当な水準といえます。一方で、増やすことを目的とした資金であれば、まずはNISAの非課税枠を検討するほうが合理的なケースが多いです。元本割れリスクの有無という性格の違いを踏まえ、自分の家計のどこに置くお金なのかで判断するのが現実的です。

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