この記事は連載「ラスト一押しの株主優待」の第4回です。業績・財務で持ちたいと判断した会社に、優待が「最後のひと押し」として付いてくる——そんな順番で保有している優待銘柄を1記事1銘柄で紹介してきた連載で、第1回はコナカと巴工業の比較、第2回はKDDIの優待変更、第3回は松風の優待変更でした。

木徳神糧(2700)の株主優待は、お米がもらえる銘柄として個人投資家に知られています。生活に直結するお米が現物で届く優待は、優待初心者にも分かりやすく人気があります。

この記事の結論 木徳神糧は、優待目的だけで買うならおすすめしない銘柄だと考えています。お米5kgの優待利回りは投資額に対して約0.3%にとどまり、財務も薄利のコメ卸という事業特性も、優待だけで持つには心もとないからです。一方で、お米の優待を楽しみながらコメ関連企業を長期で保有したい人にとっては、検討の余地がある銘柄という位置づけです。私自身が500株を保有している立場で、なぜそう考えるのかを一次情報で整理します。

なお、この記事にはアフィリエイトリンク(PR)を含みます。また、特定銘柄の売買をすすめるものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事で分かること

  • 木徳神糧の優待内容(お米5kg・年2回基準と必要株数)
  • 500株を新規で買うといくら必要か
  • 過去に優待の改悪・廃止はあったか(一次情報で確認)
  • お米の優待利回りと、薄利のコメ卸という事業・財務の中身
  • 私が今も500株を保有している理由と、売る条件
  • 今の株価1,790円で新規に買うかどうか

私は木徳神糧を500株保有しています。お米の優待が届くのは素直にうれしいのですが、私がこの株を持っている根拠は優待そのものではなく、コメ卸という事業の位置づけと、買った水準に対して株価が上がってきた結果です。この連載で取り上げてきた松風や巴工業のような「自己資本比率80%超の財務優良株」とは、まったくタイプの違う銘柄です。

木徳神糧は、年間でお茶碗およそ44億杯分のお米を扱う、国内大手のコメ卸売会社です(出典:木徳神糧 公式サイト https://www.kitoku-shinryo.co.jp/ 、2026年6月26日確認)。そのお米そのものが株主優待としてもらえるため、優待目当てで保有する個人投資家も多い銘柄です。まずは制度の中身を会社の一次情報で正確に整理していきます。

木徳神糧の株主優待はお米5kg|必要株数と権利確定月

木徳神糧の株主優待は、6月末と12月末の年2回に権利が確定します。基準日ごとに必要株数と内容が違うので、ここが少しややこしい部分です。木徳神糧の公式IR(株主優待ページ)で確認した内容を整理すると、次のとおりです。

12月末基準(500株以上)

保有株数・条件優待内容
500株以上・継続保有3年未満5kg相当の米穀製品等
500株以上・継続保有3年以上10kg相当の米穀製品等

12月末基準は 500株以上 が条件です。継続保有が3年以上になると、お米が5kgから10kgへ倍になります。発送は翌年3月頃です。

6月末基準(1,000株以上)

保有株数優待内容
1,000株以上2,000株未満2,000円相当の米穀製品等
2,000株以上4,000円相当の米穀製品等(うち2,000円相当は切り餅750g×2袋)

6月末基準は 1,000株以上 からが条件です。米穀製品の発送は10月頃、切り餅は12月中旬とされています。いずれの基準でも、米穀製品の受け取りに代えて社会貢献活動への寄付を選ぶこともできます。なお、後述する2025年12月の表記見直し(金額→容量表記)の対象は12月末基準のお米部分に限られるため、6月末基準は公式開示でも金額表記のまま案内されています。

500株で受け取れるのは12月末の年1回ぶん

500株を保有していると、対象になるのは**12月末基準のお米5kg(継続3年以上になれば10kg)**です。一方、6月末基準は1,000株以上が条件なので、500株では対象外です。

「木徳神糧はお米がもらえる」とだけ覚えていると500株で年2回もらえる気がしてしまいますが、500株で受け取れるのは12月末基準の年1回ぶんだけで、年2回(6月・12月)の優待を狙うなら1,000株以上が必要です。

私(500株保有)の場合はどうなるか

ここまでの「12月末は500株、6月末は1,000株」という必要株数は、2025年7月の株式分割を経た分割後の基準です(分割の経緯は次章で時系列にまとめます)。私はこの分割の前から保有しているので、自分の体験に引きつけて整理しておきます。

私は2024年12月5日に分割前の100株を取得し、現在は分割後の500株を持っています。したがって12月末基準のお米5kg(継続3年以上になれば10kg)が対象で、6月末基準(1,000株以上)は対象外です。買い付けた2024年12月時点は分割前で12月末基準の必要株数は100株でしたから、私は2024年12月31日の基準日で優待の対象になり、初めての優待をすでに受け取っています(当時の優待は容量表記ではなく「2,000円相当の米穀製品等」という金額表記でした)。

なお、優待品の「お米◯kg」という容量表記は、2025年12月に表記方法が見直されたものです。もともと「2,000円相当」「4,000円相当」と金額で表記していましたが、米価が大きく変動して金額表記が実態に合いにくくなったため、容量表記に改められました(出典:木徳神糧 公式IR「株主優待制度の表記方法の見直しに関するお知らせ」2025年12月19日)。中身は従来どおりで表記だけの変更です。

私が保有を始めてからまだ継続保有3年以上の判定(連続7回)には届いていないため、いま受け取れるのは基準ランクのお米5kg相当で、10kgに増えるのはもう少し先です。継続保有3年以上の条件は、公式では「6月末日と12月末日の株主名簿において、変更後の保有株式数で換算して500株(5単元)以上の保有が同一株主番号で連続して7回以上記載または記録されていること」と定義されています。年2回の基準日で連続7回ですから、おおむね3年以上の継続保有が条件です。いったん売って買い直すと株主番号が変わり、このカウントはリセットされます。これは巴工業の「継続1年以上」と同じ考え方で、長期保有優待では一般的な条件です。

このカウントは株式分割をまたいでも途切れません。公式の条件文に「変更後の保有株式数で換算して500株(5単元)」とわざわざ書かれているのはそのためで、分割前から保有していた株主の連続保有期間は分割後もそのまま引き継がれます。私は分割前の2024年12月から保有しているので、このカウントは分割をまたいで進行しています。

(優待の正確な内容・条件・対象品目は改定されることがあります。実際に確認・申し込みをする際は、必ず木徳神糧の公式IR・株主優待ページと、当該の告知文をご自身でご確認ください。出典:木徳神糧 公式IR「株主優待制度の一部変更に関するお知らせ」2025年5月8日/「株主優待制度の表記方法の見直しに関するお知らせ」2025年12月19日、および公式IR 株主優待 https://www.kitoku-shinryo.co.jp/ja/ir/stock/dividend2.html 、2026年6月26日確認。)

木徳神糧の株主優待の変更履歴|廃止・改悪ではなく「拡充寄り」の変遷

この連載のテーマは「優待は変わる、だから優待だけで買ってはいけない」でした。KDDIも松風も過去に優待を変更しています。では木徳神糧はどうか。優待目的で入る人が気にする「過去に改悪・廃止があったか」を、公式IRの適時開示で一件ずつ確認しました。

結論を先に書くと、木徳神糧の優待は、廃止や大幅改悪ではなく、単元株式数の変更・株式分割・長期保有優遇の追加という、どちらかといえば拡充寄りの変遷をたどってきました。主なコーポレートアクションを時系列で並べると次のとおりです。

時期できごと内容(一次情報で確認)
2018年7月1日株式併合+単元変更5株を1株に併合し、単元株式数を1,000株から100株に変更。あわせて優待基準を見直し、100株から優待がもらえる形に
2024年12月31日基準〜優待内容見直し+長期保有優遇導入12月末基準で、それまでの「株数で金額が変わる方式」から「100株以上・継続3年で増える長期優遇方式」へ。3年未満2,000円相当/3年以上4,000円相当
2025年7月1日1対5の株式分割1株を5株に分割。これに伴い優待の必要株数も5倍に調整(12月末は100株→500株など)。会社は「分割比率に基づく調整で実質的な変更はない」と明記
2025年12月31日基準〜表記方法の見直し12月末基準のお米の優待を「2,000円相当・4,000円相当」という金額表記から「5kg相当・10kg相当」という容量表記へ。中身は同じで表記だけ変更

出典:木徳神糧 公式IR適時開示「単元株式数の変更、株式併合および定款一部変更に関するお知らせ」2018年2月16日/「株主優待制度の変更(優待内容見直し及び長期保有優遇)に関するお知らせ」2024年10月24日/「株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更、配当予想の修正並びに株主優待制度の一部変更に関するお知らせ」2025年5月8日/「株主優待制度の表記方法の見直しに関するお知らせ」2025年12月19日(いずれも公式IRニュース https://www.kitoku-shinryo.co.jp/ja/ir/news.html 、2026年6月27日確認)。

この4つを通して見ると、木徳神糧は優待を「縮小」してきたのではなく、長く持つ株主を厚く扱う方向に組み替えてきたことが分かります。2018年に1,000株必要だった優待を100株から取れるよう間口を広げ、2024年に3年以上保有で金額が倍になる長期優遇を入れ、2025年の分割は買いやすくする狙いでした。

ただし、優待を取る側から見て見落としやすい点が一つあります。2025年の分割で、12月末基準の必要株数が100株から500株に上がったことです。分割前から100株を持っていた人は自動的に500株になるので不利益はありませんが、分割後にこの株を新しく買う人は、12月末のお米をもらうために500株が必要になります。2026年6月26日時点の株価1,790円なら約89万5,000円です。「昔は10万円台の100株でお米がもらえた」という分割前のイメージのまま100株だけ買うと優待の対象にならないので、ここは注意が必要です。分割によって1株あたりの株価は下がりましたが、優待の取得ラインが100株から500株に引き上げられたため、優待取得を目的とする新規投資家から見ると、必要資金はむしろ増えました。

私自身は、ちょうどこの分割の前、2024年12月に分割前の100株で入りました。間口が広かった最後の局面で入った形ですが、狙ってそうしたというより結果的にそうなったというのが正直なところです。

お米の優待利回りは魅力的に見えるが、ここに罠がある

お米5kgの市場価格を、仮に1kgあたり600円とすると、5kg相当でおおよそ3,000円前後の価値になります。2026年6月26日時点の株価は1,790円で、500株なら投資額は約89万5,000円です(出典:IR BANK 木徳神糧 https://irbank.net/2700/per 、2026年6月26日確認)。これで優待利回りを単純計算すると、3,000円÷895,000円で約0.3%にとどまります。

ここで連載第1回で書いた「優待利回りの罠」が効いてきます。優待利回りは株価が下がるほど数字が良く見えますが、それは分母が小さくなっているだけです。約90万円を投じてもらえるお米が年1回5kgというのは、金額ベースで見れば決して高い利回りではありません。

つまり木徳神糧は「優待利回りでお得だから買う」銘柄ではない、というのが私の率直な見方です。お米が現物で届くうれしさは確かにありますが、利回りという数字で正当化できるほどの優待ではなく、持ち続けるかどうかは優待ではなく事業と株価の話になります。

私が見ているのは「コメ卸という事業」と買った水準

ここからが本題です。木徳神糧を持ち続けるかどうかの判断は、お米5kgではなく、事業の中身と財務の数字で決まります。

私の保有状況は、2026年6月27日時点で次のとおりです。**私は2024年12月5日に分割前の木徳神糧を100株、1株5,650円(取得総額565,000円)で買い付け、**2025年7月1日付の1対5分割で保有が自動的に500株になりました。分割換算後の平均取得単価は1,130円です。

項目内容
取得日2024年12月5日
取得時の保有株数100株(株式分割前)
取得単価5,650円(分割前の市場株価)
取得総額(取得価額)565,000円
現在の保有株数500株(2025年7月の1対5分割後)
分割換算後の平均取得単価1,130円
現在値1株1,790円
現在の評価額895,000円
評価損益含み益 +330,000円(+58.40%/2026年6月27日時点)

含み益が出ている状態ですが、ここで正直に書いておくべきことがあります。木徳神糧の株価がここまで上がってきた背景には、近年のお米の価格上昇という、会社の実力だけでは説明しきれない追い風があります。この追い風がいつまで続くかは誰にも分かりません。だから私は、この含み益を「自分の銘柄選びが正しかった証拠」とは思っていません。あくまで結果としてこうなった、というだけです。

業績:薄利のコメ卸が、米価高騰で一時的に大きく伸びた

木徳神糧の通期業績の推移を、IR BANKで確認すると次のとおりです。

決算期売上高営業利益営業利益率
2020年12月期1,076億円-0.4億円-0.04%
2021年12月期1,078億円5.3億円0.49%
2022年12月期1,047億円13.2億円1.26%
2023年12月期1,148億円20.6億円1.80%
2024年12月期1,190億円23.8億円2.00%
2025年12月期1,762億円80.3億円4.56%

出典:IR BANK 木徳神糧 業績推移( https://irbank.net/2700/results 、2026年6月26日確認)

大事なのは営業利益率の列です。2020年は赤字、その後も0.5%〜2%程度という極めて薄い利益率で推移してきました。卸売は大量のお米を右から左へ流す薄利多売のビジネスで、利益率は構造的に低くなります。これがコメ卸の常態で、松風(営業利益率13%台)や巴工業とはまったく違うタイプの会社です。

そして2025年12月期は、売上が前期比48%増の1,762億円、営業利益率も4.56%へ跳ね上がりました。近年のお米の価格上昇が大きく寄与した結果と考えられます。ただしこの4.56%が今後も続く保証はなく、米価が落ち着けば従来水準に戻る可能性があります。一時的な追い風を会社の恒常的な実力と読み違えないことが大事です。

財務:自己資本比率36%前後|厚い財務ではない

この連載で私が優待株の安心材料にしてきたのは「財務の厚さ」でした。松風は自己資本比率84%、巴工業も無理のない財務体質です。木徳神糧はここが大きく違います。

決算期自己資本比率ROE
2021年12月期34.6%4.89%
2022年12月期37.5%9.42%
2023年12月期40.6%11.35%
2024年12月期37.3%11.49%
2025年12月期36.1%27.02%

出典:IR BANK 木徳神糧 業績推移( https://irbank.net/2700/results 、2026年6月26日確認)

自己資本比率は36%前後で、松風の84%と比べると財務の厚さはかなり違います。これは卸売業に多い構造で、大量の在庫や売掛・買掛を回すために資産も負債も大きくなり、自己資本比率が低めに出ます。一概に「危ない」のではなく、業種としてこういうものだと理解しておく必要があります。2025年12月期のROEが27%と高いのも、米価高騰による一時的な利益増が効いた数字で、これが続くと考えるのは危険です。財務の厚さという点で、木徳神糧は私のこれまでの優待株とは性格が違います。

株価指標:PER5倍前後・PBR0.71倍という低評価

2026年6月26日時点でIR BANKで確認した株価指標は次のとおりです。

指標2026年6月26日時点補足
株価1,790円2025年7月に1対5の株式分割を実施
PER4.88倍(予想)薄利・市況株として市場の評価は低め
PBR0.71倍(実績)解散価値を下回る水準
予想配当利回り約2.79%
時価総額約153億円

出典:IR BANK 木徳神糧( https://irbank.net/2700/per 、2026年6月26日確認)

PER4.88倍・PBR0.71倍という数字だけを見ると「割安」に映ります。ただし、これを単純に割安と喜べないのが市況株の難しさです。米価高騰で利益が一時的に大きく出ている局面では足元の利益で計算したPERは低く出ますが、米価が落ち着いて利益が従来水準に戻れば、同じ株価でもPERは跳ね上がります。いまのPERの低さは「将来も同じ利益が続く前提」では語れません。PBR0.71倍が解散価値を下回っているのも、薄利の卸売業に市場がそもそも低い評価を与えやすい背景があります。

木徳神糧(2700)の営業利益率の推移
-0.04%
2020/12
0.49%
2021/12
1.26%
2022/12
1.80%
2023/12
2.00%
2024/12
4.56%
2025/12
営業利益率(%)の推移。薄利のコメ卸が常態で、2025年12月期の4.56%は米価高騰による一時的な押し上げと考えられます。出典:IR BANK 木徳神糧 業績推移 https://irbank.net/2700/results

配当と配当性向:平常時は1桁台、利益が薄い年は跳ね上がる

優待だけでなく、配当の動きも見ておきます。木徳神糧の2026年6月26日時点の予想配当利回りは約2.79%、予想ROEは14.59%、予想ROAは5.74%です(出典:IR BANK 木徳神糧 配当 https://irbank.net/2700/dividend 、2026年6月26日確認)。この予想配当利回り2.79%は、2026年12月期の予想一株配当50円を株価1,790円で割った水準で、優待のお米5kg(投資額に対して約0.3%)よりも、配当のほうが投資リターンとしては大きいことが分かります。

一株配当と配当性向の推移を整理すると、次のとおりです。

決算期一株配当配当性向
2014年12月期10円12.4%
2015年12月期10円8.6%
2016年12月期10円9.2%
2017年12月期10円9.3%
2018年12月期10円
2019年12月期10円12.1%
2020年12月期10円129.5%
2021年12月期10円16.1%
2022年12月期12円9.4%
2023年12月期16円8.8%
2024年12月期26円12.3%
2025年12月期90円(特別配当等を含む)
2026年12月期(予想)50円

出典:IR BANK 木徳神糧 配当( https://irbank.net/2700/dividend 、2026年6月26日確認)

この表で生の一株配当の前年比を、そのまま「増配」「減配」と読んではいけません。理由は、2025年7月1日に1対5の株式分割があり、それより前と後で一株あたりの金額が連続していないからです。さらに2025年12月期の90円には特別配当等が含まれており、記念・特別の配当と普通配当が混ざっています。たとえば2024年26円→2025年90円→2026年予想50円という生の数字だけを見て「2025年に大幅増配、2026年に減配」と短絡するのは誤りで、分割や特別配当をまたぐため単純比較はできません。配当の現在地のアンカーとして信頼できるのは、分割後ベースで予想利回り2.79%と整合する2026年12月期の予想一株配当50円のほうです(分割後ベースの予想額は、木徳神糧公式IRの配当予想の修正開示でも確認できます)。

そのうえで、私が注目しているのは配当性向の動きです。配当性向は、平常時は1桁台〜十数%と低めで推移してきました。利益が出ている年は、無理なく払える範囲で配当を出しているということです。ところが2020年12月期だけは配当性向が129.5%と突出しています。これは、米価低迷やコロナ禍で利益が大きく落ち込んだ局面でも一株配当10円を維持したため、配当(÷利益)の比率が跳ね上がったものです。

ここが、この記事のテーマ(薄利の市況株で、利益は外部環境次第で大きく振れる)とつながります。木徳神糧のように利益率が薄い会社は、利益そのものが米価や市況で大きく振れるため、配当額を据え置いただけでも配当性向が大きく動きます。配当性向が低めであることは「今後の増配余地がある」という前向きな見方もできる一方で、薄利ゆえに利益が落ち込めば、2020年のように配当性向が一気に跳ね上がり、配当の維持が会社にとって重くなるリスクもあります。配当性向の低さを単純に安心材料と受け取らず、利益の振れやすさとセットで見ておくのが、この銘柄の正しい読み方だと考えています。

令和の米騒動で評価額が取得時の6倍近くまで膨らんだ日|それでも売らなかった

ここからは、保有しているあいだに実際に体験した、いちばん値動きが激しかった局面について書いておきます。

私が買い付けた2024年12月5日の前後から大きく動いていったのが、いわゆる「令和の米騒動」です。お米の店頭価格が連日ニュースになり、コメ関連銘柄として木徳神糧の株価も大きく動きました。マネーフォワードで全期間の評価額を振り返ると、取得価額565,000円で買い付けた私のこの銘柄は、2025年秋に一時、評価額がおよそ330万円(取得時のおよそ5.8倍の水準)まで跳ね上がりました。その後は米価が落ち着くにつれて急落し、現在の評価額は895,000円(取得時のおよそ1.6倍前後)で落ち着いています。

評価額の動きを「取得時=100」とした指数で示すと、次のとおりです。

木徳神糧(2700) 私の評価額の推移(取得時=100の指数)
100
取得時(2024/12)
584
米騒動ピーク(2025年秋)
158
現在(2026年6月)
私の評価額の推移を「取得時=100」とした指数。取得価額565,000円を100とすると、2025年秋の令和の米騒動で一時取得時の約5.8倍(評価額約330万円)まで膨らみ、現在は約1.6倍(評価額約89.5万円・含み益+33万円)で落ち着いています。

結果論で言えば、あのピークで利益確定していれば、この連載で書いてきたどの損益よりも大きな成功になっていました。コメ卸はそもそも薄利の市況株で、米騒動という一時要因で株価が膨らんだ局面でしたから、「ここで利確する」という判断も十分に合理的だったと思います。

それでも私は売りませんでした。後付けで正当化したいわけではありません。単純に、私は優待目的で買った株を短期売買しないという自分のルールでこの株を持っていたからです。お米の優待は2024年12月末基準ですでに受け取っており、保有はそのまま続いていました。米騒動のスパイクは、私が立てた保有目的の外側で起きた出来事です。あそこで売ることは、短期の高騰に乗って降りるという別のゲームに乗り換えることを意味しました。

正直に言えば、それが「正しい判断」だったと胸を張るつもりはありません。高値で売れた人のほうが結果は良かったわけで、これは利益の最大化の話ではなく、自分が決めたルールを外乱で曲げなかったというだけの話です。連載第1回のコナカや青山商事のように、業績が崩れても損切りできず抱え込んだ「塩漬けの失敗」とは性格が違いますが、「ルール通りに動いた=最善だった」とまで言い切れるものでもない——そのくらいの整理が、いちばん正直なところです。

「持ち続ける理由」と、私が「売る条件」

ここまで、木徳神糧がこの連載のほかの優待株とはタイプが違うことを書いてきました。財務は厚くなく、利益率は薄く、足元の好業績は米価高騰という外部要因に支えられている。それでも私が500株を持ち続けているのは、次のように整理しているからです。

  • コメ卸という事業は、人々がお米を食べる限りなくならない安定需要の上に立っている
  • 国内大手という規模は、薄利の業界では価格交渉力につながりやすい
  • 買った水準(取得単価1,130円)に対して、現状は含み益が出ている
  • お米5kgの優待は、生活に直結する分かりやすい「最後のひと押し」になっている

ただし、「持ち続ける理由」だけを並べると、自分に都合よく正当化しているだけになりかねません。連載第1回のコナカで、私はまさにそれをやって9年5ヶ月の塩漬けを経験しました。だから、私が木徳神糧を売ると判断する条件もはっきり書いておきます。

  • 米価が落ち着いた後、営業利益率が従来の1〜2%水準へ戻り、利益が大きく減るとき(足元の好業績が一時要因だったと確認できたとき)
  • 自己資本比率がさらに低下するなど、もともと厚くない財務がさらに痛むサインが出たとき
  • 株価が取得単価を大きく割り込み、事業の見通しでも説明がつかなくなったとき
  • 優待が縮小・廃止され、かつ事業の魅力でも持つ理由が説明できなくなったとき

逆に言えば、これらが起きていない限り、お米の優待が多少変わったくらいでは売りません。お米5kgがもらえるかどうかは、私がこの株を持っている本線ではないからです。これはあくまで私個人の判断であり、同じ判断をすすめるものではありません。

特に木徳神糧のような市況の影響を受ける薄利の銘柄は、優待のお米につられて「なんとなく安心」と感じやすい一方で、業績は外部環境次第で大きく振れます。お米が届く安心感と、銘柄としての安定性は別物です。

では、今の株価1,790円で新規に買うか?

ここまでは「私が売らずに持っている」という話でした。ただ、これから検討する人にとって本当に知りたいのは、「ではいま株価1,790円で新規に買うか」のほうだと思います。私が今ゼロから検討するならどうするか、正直に書いておきます。

結論として、私は新規購入には慎重になります。理由は三つあります。

ひとつ目は、資金拘束の大きさです。12月末優待のお米5kgを取るには500株=約89万5,000円が必要です。お米5kgのために90万円近くを一銘柄に固定するのは、優待の満足度に対して投資額が重いと感じます。

ふたつ目は、足元の好業績が一時要因を含むことです。2025年12月期の営業利益率4.56%・ROE27%は、本文で見たとおり米価高騰による押し上げが大きい数字です。PER4.88倍という割安に見える指標も、この一時的に膨らんだ利益で計算されています。米価が正常化したあとの利益水準がどこに着地するかを見極めないまま、低PERだけを理由に買うのは危ういと考えています。

三つ目は、財務が厚くないことです。自己資本比率36%前後は卸売業として異常ではありませんが、松風や巴工業のような「下げても安心して持てる財務」ではなく、市況が逆回転したときのクッションは薄めです。

逆に言えば、私がもしいま新規で前向きに検討するとしたら、それは「米価が落ち着いて利益が従来水準に戻っても説明がつく株価まで下がってきたとき」か、「お米の優待を毎年楽しむこと自体に90万円ぶんの価値を感じられるとき」です。私自身が2024年12月に買えたのは、分割前で10万円台の100株から入れた時期だったからで、500株90万円が最低ラインになった今とは前提が違います。この差は、これから検討する人がいちばん意識しておくべき点だと思います。

逆に、もし私が2024年12月の取得時点に戻れたとしたら、同じ条件なら購入を検討すると思います。当時は分割前の100株で取得でき、優待取得に必要な資金負担が今よりずっと小さかったからです。「今は慎重」と「あのとき買ったのは妥当だった」は、必要資金という一点で両立します。

なお、これはあくまで私個人の見方であり、買いを止めたりすすめたりするものではありません。

まとめ:お米の優待は「最後のひと押し」、本線は事業と水準

ここまでをまとめます。

  • 木徳神糧(2700)の株主優待は、12月末基準で500株以上のお米5kg(継続3年以上で10kg)、6月末基準で1,000株以上の5kg相当(2,000株以上で切り餅追加)の年2回制度。500株なら12月末の年1回ぶんが対象
  • 優待の変遷を一次情報で確認すると、2018年の単元変更(1,000株→100株)、2024年の長期保有優遇導入、2025年の1対5分割と表記見直しという順で、廃止・大幅改悪ではなく拡充寄りに組み替えられてきた
  • 2025年7月の1対5株式分割で必要株数は5倍に調整され、12月末の必要株数は分割前100株→分割後500株に。分割前から持っている株主は権利も継続保有期間もそのまま引き継がれる(私は2024年12月に分割前100株で取得し、2024年12月末基準で初めての優待をすでに受け取っている)
  • お米5kgの優待利回りは投資額に対して約0.3%程度で、金額で見れば「優待利回りでお得」と言える水準ではない
  • 木徳神糧はコメ卸という薄利の市況株で、自己資本比率36%前後・営業利益率は常態で1〜2%。2025年12月期の好業績は米価高騰による一時的な押し上げと考えられる
  • 私が500株を持ち続けるのは、安定需要・国内大手の規模・買った水準・分かりやすい優待という4点。ただし「売る条件」も持っており、米価一服後の利益減・財務悪化・取得単価割れ・優待廃止のいずれかが起きれば売却を検討する

この連載を通して繰り返してきたのは、「優待を主役にしない」という一点でした。優待で選んだコナカは9年塩漬けになり、業績や事業で説明がつく株は優待が変わっても揺さぶられずに持てました。木徳神糧は財務優良株ではありませんが、それでも「優待ではなく事業と水準で説明できるか」という同じ物差しで判断しています。優待のお米はあくまで、最後のひと押しです。

なお、本記事は私個人の保有実績と考え方の整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。優待・配当・業績の内容は変わることがあり、最終的な条件や数字は必ず木徳神糧の公式IRでご確認ください。株式投資には価格変動リスクがあり、投資判断はご自身の責任でお願いします。

個別株・優待の管理方法|私は楽天証券1つにまとめている

最後に、優待株の管理について一言だけ。この記事で見てきたように、優待株は「優待・配当・含み損益・継続保有のカウント」を継続的に点検する必要があります。私は、こうした優待株もNISAも2015年から楽天証券の1つの口座にまとめて管理しています。優待・配当・含み損益を1画面で点検できるのは、11年使ってきた実感として地味に効いています。

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連載「ラスト一押しの株主優待」

業績・財務で持ちたいと判断した会社に、優待が「最後のひと押し」として付いてくる、という順番で私が保有している優待銘柄を1記事1銘柄で紹介しているシリーズです。

このシリーズは今後も、私が保有している優待銘柄を1記事1銘柄で取り上げて続けていく予定です。

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HIKO

保険業界10年勤務・30代IT会社員ブロガー

保険業界10年勤務後、IT企業に転職。生命保険・損害保険の「売り手側の論理」を知った上で、本当に必要な家計管理・投資の情報を発信。NISAや固定費削減の実体験をもとに、30代サラリーマンのお金の不安を減らすことを目指しています。

保険業界10年 IT転職 NISA実践中 固定費削減経験あり