SNSで「年間配当金300万円達成」という投稿を見ると、多くの人がこう逆算します。

「配当利回り4%として、元本は7,500万円か。すごいな」と。

私自身も、配当300万円の人を見るたびに「元本7,500万円か…」と勝手に計算していました。でも、自分の保有株の数字を改めて見直したとき、この逆算は長期で持っている人にはまったく当てはまらないと気づきました。

きっかけは、私が11年前から持っているKDDI株でした。

配当利回りは「今の株価」に対する数字でしかない

配当利回りは、こう計算します。

配当利回り(%)= 1株あたり配当金 ÷ 今の株価 × 100

ここで大事なのは、分母が「今の株価」だということです。

たとえば配当が1株150円の株があったとして、今の株価が3,750円なら利回りは4%です。でも同じ会社の株を、株価1,500円のときに買っていた人にとっては、150 ÷ 1,500 で利回り10%ということになります。

同じ会社の、同じ配当金です。なのに、利回りはまるで違う。

何が違うかというと、買ったときの株価が違うだけです。

つまり「配当利回り4%」というのは、今この瞬間に買う人にとっての数字であって、もう何年も前に安く買って持っている人には当てはまりません。

YOC(取得単価ベース利回り)という考え方

この「買ったときの株価で計算した利回り」を、英語でYield on Cost(イールド・オン・コスト)、略してYOCと呼びます。日本語にすると取得単価ベースの利回りです。

  • 一般的な配当利回り … 1株配当 ÷ 今の株価
  • YOC … 1株配当 ÷ 自分が買ったときの株価

長期で配当株を持っていると、この2つの数字はどんどん離れていきます。

理由は2つあります。

  1. 株価が上がると、後から買う人の利回り(今の株価ベース)は下がるが、安く買った自分のYOCは変わらない
  2. 増配が続くと、分子の配当そのものが増えていくので、自分のYOCはさらに上がっていく

時間をかけて持っているほど、自分だけ高い利回りで配当を受け取れる状態になっていく、ということです。

もちろん、これは万能の話ではありません。増配が止まったり、減配したりすればYOCは育ちません。株価が買値を下回ったまま戻らないこともあります。YOCが勝手に育つのは、あくまで「増配が続き、株価も大きく崩れなかった」場合に限る、という前提は最初に押さえておいてください(私自身の失敗例は後半で正直に書きます)。

実例:私のKDDIは取得単価ベースで利回り10%を超えていた

抽象論だけだとピンと来ないので、私の保有株で説明します。

私はKDDI(9433)を200株、平均取得単価1,419円で持っています。買ったのはかなり前で、その後の株価上昇と株式分割(KDDIは2025年に1株を2株に分割しています)を経て、含み益は+22万円ほど(取得額に対して+77%前後)になっています。

ここで利回りを2通りで見てみます。分割の影響を除くため、配当も取得単価も「分割前ベース」に揃えて比べています。

計算の分母ざっくりの利回り
これから買う人今の株価(取得時の約2倍)3%前後
私(取得単価ベース=YOC)1,419円約10%

なお、私の取得単価ベースの利回りは正確に計算すると約11.8%です(分割前換算の配当168円 ÷ 取得単価1,419円)。この記事ではわかりやすさを優先して「約10%」「10%超」と表現しています。

同じKDDIの配当を受け取っているのに、今から買う人の利回りは3%前後、私の取得単価ベースだと10%を超えています。

何か特別なことをしたわけではありません。ただ、安いときに買って、売らずに持ち続けただけです。その間にKDDIは増配を続け、株価も上がりました。だから私のYOCだけが勝手に育っていった、というのが正直なところです。

KDDIは長く増配を続けてきた会社として知られています(※将来の増配を保証するものではありません)。私が何か上手かったわけではなく、増配してくれる会社をたまたま長く持っていられた、というだけの話です。

ちなみに、これはKDDI特有の現象ではありません。長く増配を続けてきた会社であれば、同じことが起こり得ます。私自身が保有しているJTもそうですし、世間で連続増配株として名前が挙がる三菱HCキャピタルやオリックスなども、長く持っている人ほどYOCが育っている可能性があります(※いずれも私が銘柄を推奨しているわけではなく、増配が続いた場合に起きる現象の一般的な例です)。

だから「元本7,500万円」の逆算は外れる

ここで最初の話に戻ります。

「年間配当300万円なら、利回り4%で元本7,500万円」という逆算。

でも、もしその人が私のKDDIのように取得単価ベースで利回り8%や10%の株を中心に持っていたら、必要な元本は半分以下になります。

  • 利回り4%で年300万円 … 元本7,500万円
  • 利回り8%で年300万円 … 元本3,750万円
  • 利回り10%で年300万円 … 元本3,000万円

もちろん全部の株がYOC10%になるわけではありません。私のポートフォリオにも、まったく増配の恩恵を受けられなかった株はあります。後で正直に書きます。

ただ、「配当300万円=元本7,500万円」という逆算は、今の利回りで計算している時点で、長期保有者の実態からはズレているということです。SNSの数字を見て「自分には無理だ」と感じる必要はありません。

一方で、YOCが効かなかった私の失敗例

YOCの話は希望のある話ですが、これは「増配が続いて、株価も下がらなかった」場合に限ります。逆のパターンも、私はしっかり経験しています。

私が人生で初めて単元株を買ったのは、2015年のコナカ(7494)でした。738円で100株。旧NISAでした。

その後、株価は200〜400円台に沈み、9年以上塩漬けになりました。配当は出ていたので受け取り続けましたが、年に2回×16回でだいたい1万6,000円ほど。取得額7万3,800円に対して、お世辞にも高いYOCとは言えません。

最終的に旧NISAの非課税期間が切れる2024年末に、いったん247円で売って同じ日に特定口座で買い戻しました。旧NISAで出た含み損は税制上の損益通算ができないまま確定しています。

KDDIとコナカ、何が違ったのか。

増配が続いたかどうか、そして株価が下がらなかったかどうか、ここに尽きます。同じ「長く持つ」でも、増配しない・株価も下がる会社をただ握っていただけでは、YOCは育ちません。

ちなみに私の最大の失敗は青山商事で、−31万円の損切りでした。長期保有が常に正解ではない、というのは自分の財布で痛いほど学びました。

「今の利回りが高いか」より「増配が続くか」

ここまでをまとめると、私が自分の保有株から学んだのはこういうことです。

  • 配当利回りは「今の株価」に対する数字で、固定ではない
  • 安く買って増配が続けば、取得単価ベースの利回り(YOC)は勝手に育っていく
  • だから「配当300万円=元本7,500万円」の逆算は、長期保有者には当てはまらない
  • ただし、それは増配が続いた場合に限る。増配せず株価も下がる株を握っても、YOCは育たない(私のコナカ)

これから配当株を買う人にとって大事なのは、「今の利回りが3%あるか4%あるか」よりも、その会社が10年後も増配を続けていられそうかだと思います。最初の利回りが3%でも、増配が続けば数年後には自分のYOCは5%にも6%にもなります。

配当利回りは「今」の数字ですが、投資の結果が出るのは「未来」です。私のKDDIが利回り10%に育ったのも、結局は時間が働いてくれただけでした。

なお、この記事は私自身の保有株の実例と考え方を共有したものであり、特定の銘柄の購入をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

11年分の成功と失敗を、読む順番でまとめました
青山商事で−31万円、コナカを9年5ヶ月塩漬け――私が遠回りして学んだことは、固定費・手取り・投資の順番で読めるロードマップにまとめています。これから始める方は、ここから読むと迷いません。
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