保険業界に10年身を置いたあとIT企業へ転職したFP2級のHIKOです。私自身は外貨建て保険を契約したことがありません。この記事は、公開されている決算資料と各社の商品ページを読み込んで整理したものです。
「外貨建て保険を解約すべきか」と検索する方が本当に知りたいのは、おそらく「今解約したら、円でいくら手元に残るのか」だと思います。ところが、この金額を計算しているページはあまり見当たりません。為替リスクの一般論と「専門家に相談しましょう」で終わっているものが多い印象です。
そこでこの記事では、解約時の為替レート別に円の手取りがいくらになるかを試算し、そのうえで「為替差益が出ているのに手取りがそれほど増えない」理由を、各社が公式に開示している費用の中身から分解します。公開されている決算資料・商品資料をもとに、確認できた数字と仮定した数字を分けて整理しています。
本記事は特定の保険商品の解約・購入・継続を勧めるものではありません。保険・投資いずれも元本割れの可能性があり、最終的な判断はご自身で、設計書・契約のしおり・約款と最新の情報を確認したうえで行ってください。記載の数値は本文中に出典と確認時点を明記したもの以外はすべて私が置いた仮定にもとづく試算です。なお、本記事はアフィリエイトリンクを含みます。
この記事の要点
- 外貨建て保険の解約・失効率は上昇しています。ソニー生命の四半期開示では、外貨建が1.4%から2.3%へ上昇する一方、円建は1.2%から1.3%でした。しかもこの数字は外貨ベース(円換算前)です
- 円ベースの手取りは、解約時の為替レートが10円動くごとに約100万円動きました(本記事の試算前提の場合)。本記事の試算では、所得税20%の帯を仮定すると、為替による受取額の増加分の約15%が一時所得にかかる税負担に相当します
- 手取りは2段階で決まります。ドル建ての解約返戻金そのものを決めるのが保険関係費用・解約控除・市場価格調整(MVA)、それを円に換えたときの手取りを決めるのが為替レート・為替スプレッド・税金です
- 費用の開示のされ方は商品ごとに違います。ソニー生命が同じ日に発売した米ドル建2商品の案内でも、一時払の商品には「一時払保険料に5.46%〜7.00%」という率が示され、もう一方には「費用の合計額またはその上限額を表示することができません」と書かれていました(2017年10月時点の案内)
- 「今解約する・待つ・移す」の3案を、同じ試算条件で数字にして並べました。この条件では、5年待ってドル建てで1万米ドル増えたとしても、5年後のレートが1ドル138円を下回ると今解約したほうが手取りは多い計算です(解約時点の手取り額だけを比べた分岐点で、総合的な損益分岐点ではありません)
外貨建て保険の解約・失効率は上昇している?ソニー生命の開示を見る
まず「本当に動きがあるのか」を、推測ではなく開示された数字で確認します。
ソニーフィナンシャルグループが2026年8月7日に公表した2027年3月期第1四半期の決算説明資料には、ソニー生命の解約・失効率が通貨別に載っています。
| 区分 | FY25.1Q | FY26.1Q |
|---|---|---|
| 全体 | 1.2% | 1.4% |
| 外貨建 | 1.4% | 2.3% |
| 円建 | 1.2% | 1.3% |
出典:ソニーフィナンシャルグループ「2026年度第1四半期 決算説明資料」9ページ(PDF・2026年8月7日公表・2026年8月12日確認)
同資料は「足元では急速な円安等を受けて、外貨建保険等の一部商品においてやや上昇」と説明しています。全体の解約・失効率は1.4%(年換算5.5%)ですが、内訳を見ると円建が1.2%から1.3%とほぼ横ばいなのに対し、外貨建は1.4%から2.3%へ大きく動いています。
この表で見落としたくないのが注記です。同ページには「外貨建保険は外貨(円換算前)の値」と明記されています。つまり円安で契約高が円換算で膨らんだから率が上がった、という見かけ上の話ではなく、外貨ベースで見ても解約・失効率が上昇しているということです。同じページの参考値では、ドル円はFY20末の110.71円からFY26.1Q末の162.39円へ動いています。
なお、これは1社の数字で、しかも率の話です。解約の件数がどう動いたかまでは開示されていませんし、業界全体が同じ傾向とまでは言えません。ここでは「外貨建てだけが円建てと違う動きをしている」という事実の確認にとどめます。
外貨建て保険を解約したら円でいくら戻るか|為替レート別の手取り早見表
ここからが本題です。以下はすべて私が置いた仮定にもとづく試算で、保険会社が公表した数値ではありません。 この章でやるのは1つだけで、「いまの解約返戻金がドルでいくらか」を出発点に置いて、そこから為替レートだけを動かします。その出発点の金額がどう決まっているのかは、次の章で分解します。
試算の前提(すべて仮定値)
| 項目 | 置いた値 | 備考 |
|---|---|---|
| 商品タイプ | 米ドル建ての貯蓄性保険(一時払) | 仮定 |
| 一時払保険料 | 100,000米ドル | 仮定 |
| 契約時の為替レート | 1ドル110円 | 仮定 |
| 円換算の払込額 | 11,000,000円 | 上記2つから計算 |
| 現在の解約返戻金(外貨建て) | 118,000米ドル | 仮定。ご自身の設計書やコールセンターで確認できる「いまの解約返戻金額」に置き換えて読んでください |
| 解約控除 | ゼロ | 解約控除の期間を過ぎている状態を仮定 |
| 市場価格調整 | 影響ゼロ | 単純化のため |
| 円で受け取るときのレート | TTM−50銭 | 実在する円支払特約の水準に合わせた仮定 |
| 一時所得の課税部分(2分の1)にかかる税率 | 30.42% | 所得税20%の帯+復興特別所得税+住民税10%を仮定。解約返戻金の全額に30.42%がかかるという意味ではありません |
為替レート別の手取り早見表(試算)
| 解約時のレート | 円換算の受取額 | 払込額との差 | 税額(概算) | 手取り額 | 払込1,100万円との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1ドル90円 | 1,056.1万円 | −43.9万円 | 0円 | 1,056.1万円 | −43.9万円 |
| 1ドル110円 | 1,292.1万円 | +192.1万円 | 21.6万円 | 1,270.5万円 | +170.5万円 |
| 1ドル120円 | 1,410.1万円 | +310.1万円 | 39.6万円 | 1,370.5万円 | +270.5万円 |
| 1ドル130円 | 1,528.1万円 | +428.1万円 | 57.5万円 | 1,470.6万円 | +370.6万円 |
| 1ドル140円 | 1,646.1万円 | +546.1万円 | 75.5万円 | 1,570.6万円 | +470.6万円 |
| 1ドル150円 | 1,764.1万円 | +664.1万円 | 93.4万円 | 1,670.7万円 | +570.7万円 |
| 1ドル160円 | 1,882.1万円 | +782.1万円 | 111.4万円 | 1,770.7万円 | +670.7万円 |
| 1ドル170円 | 2,000.1万円 | +900.1万円 | 129.3万円 | 1,870.8万円 | +770.8万円 |
上表は「解約返戻金118,000米ドルを、TTMから50銭引いたレートで円に換算し、一時所得の税を差し引く」という計算を機械的に並べたものです。他に一時所得がないこと、所得税率20%の帯であることを前提にしています。
※税金の試算では、100,000米ドルの保険料を契約時1ドル110円で円換算した11,000,000円を「払込保険料」と仮定しています。実際の税務上の計算は、保険料の支払方法・支払時期・受取方法などによって確認が必要です。
この表から読み取れること
1つ目は、為替が10円動くと手取りは約100万円動くという点です。 表の110円から170円までを見ると、10円刻みで手取りがきれいに約100万円ずつ増えています。表に載せていないレートも、この目安で概算できます。
2つ目は、額面の増加分がそのまま手取りにならないという点です。 10円の円安で受取額は118万円増えますが、手取りの増加は約100万円です。差の約18万円は税金です。一時所得は課税対象が2分の1になるので、この税率帯を仮定した場合、為替による受取額の増加分に対して実効で約15%の税負担に相当します。
3つ目は、円ベースで元本割れに戻る分岐点です。 この試算条件では1ドル93円台になります。払い込んだ10万米ドルに対して、いまの解約返戻金を118,000米ドル(ドル建てで18%増えた状態)と置いているため、契約時に置いた110円より円高になってもそのぶんのクッションがある計算です。逆に言えば、ドル建ての増え方が小さいほど、少しの円高で元本割れに戻ります。
4つ目は、1ドル90円の行だけ税がゼロになっている点です。 円ベースで損が出ているので一時所得が発生しません。そのため90円から110円への手取りの増え方だけが約214万円と、他の20円刻み(約200万円)より大きくなっています。
そして、この表がいじっているのは為替だけです。 出発点に置いた118,000米ドルという金額そのものが何で決まっているのかを、次の章で見ていきます。
手取りが決まる仕組み|ドルで戻る額と円で残る額は別々に決まる
円の手取りは、性質の違う2つの段階を通って決まります。ここを分けずに考えると、「円安だから得なはず」という判断になりがちです。
| 段階 | 何が決まるか | 効く要因 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 解約返戻金(ドル建て)そのもの | 保険関係費用/解約控除/市場価格調整(MVA) |
| 第2段階 | それを円に換えたときの手取り | 為替レート/為替スプレッド/税金 |
早見表で動かしたのは第2段階の為替レートだけで、出発点の118,000米ドルは第1段階で決まっています。円安が有利に働くのは第2段階の話であって、第1段階の3要因は円安とは無関係に効きます。 以下は各社が公式に開示している内容です(税金は独立した章で扱います)。
保険関係費用|ドル建ての返戻金を削る(開示の粒度は商品ごとに違う)
ソニー生命は米ドル建終身保険などについて「保険契約の締結・維持および保障に必要な費用(保険関係費用)を保険料や責任準備金から控除します」としたうえで、「保険関係費用は、被保険者の性別・契約年齢などにより異なるため、費用の合計額またはその上限額を表示することができません」と明記しています(外貨建保険のページ・2026年8月12日確認)。
メットライフ生命のUSドル建終身保険「ドルアドバンス」も同様で、「保険契約の締結・維持にかかる費用」「死亡・高度障害保障などのための費用」を保険料や積立金から差し引くとしたうえで、「これらの費用は、保険金額・契約年齢・性別・経過期間などによって異なりますので、一律には記載できません」と説明しています。さらに同商品は、積立金に適用される基準利率について「市場金利または市場金利の平均から0.60%を差し引きます」と開示しています(商品ページ・2026年8月12日確認)。
ただし、費用の開示のされ方は商品ごとに違います。 同じソニー生命が米ドル建の2商品を発売したときの案内(2017年10月の新商品案内・2026年8月12日確認)では、こう書き分けられていました。
| 商品(当時の案内) | 保険関係費用の書き方 | 解約控除 |
|---|---|---|
| 米ドル建一時払終身保険(無告知型/無配当) | 契約締結時の費用として「基本保険金額10米ドルにつき0.04米ドル」+「一時払保険料に5.46%〜7.00%を乗じた額(契約年齢によって異なります)」を一時払保険料から控除。契約日以後は維持・死亡保障の費用を責任準備金から控除 | 「ご負担いただく費用(解約控除費用)はありません」 |
| 米ドル建生前給付終身保険(生活保障型/無配当) | 「保険関係費用は、被保険者の性別・契約年齢などにより異なるため、費用の合計額またはその上限額を表示することができません」 | 第10保険年度の保険料がすべて充当される前、かつ保険料払込期間中の解約・減額で責任準備金から控除 |
記載内容は2017年10月現在のもので、現在のラインアップと同じとは限りません。また5.46%〜7.00%は契約締結時に控除される費用の一部であって、費用の総額ではありません。
つまり「外貨建て保険は費用が開示されない」と一括りにはできず、どこまで数字で示されているかは契約ごとに違うので、自分の重要事項説明書を見るしかありません。 投資信託が信託報酬を年◯%と一律に示すのとは、開示のされ方が違います。なお、死亡保障がついている以上その対価はかかるので、費用が高いか安いかを、この記事は判定していません。
解約控除|早期解約するとドル建ての返戻金が削られる
解約控除は、早期に解約すると解約返戻金から差し引かれる費用です。
ソニー生命は米ドル建終身保険等について「保険料払込年月数が10年未満で解約・減額されたときの解約返戻金額は、解約日の責任準備金から保険種類、保険料払込期間、経過年数などに応じた所定の金額(解約控除費用)を控除した金額となります」「保険料の払込期間が終了している場合、解約控除費用は発生しません」と説明しています。一時払の商品についても「契約日から10年未満で解約・基本保険金額の減額をされる場合」に解約控除率を乗じた費用がかかり、10年以上経過していれば解約控除率はゼロになるとしています。メットライフ生命のドルアドバンスも「契約日から10年間は、経過期間などに応じて、積立金などから所定の金額が差し引かれます」としています。
ただし、上の表で見たとおり、同じソニー生命でも「解約控除費用はありません」と書かれている商品があります。 10年という区切りは私が確認した範囲で共通していただけで、業界共通のルールではありません。起算点も「契約日から」と「保険料払込年月数」で違います。
そして、解約控除率を数値で全部公表している商品もあります。 ソニー生命は「指定通貨建積立利率更改型一時払終身保険(無告知型)」について、経過年数別の解約控除率を契約者さま向けのページに掲載しています(2026年8月12日確認)。
同ページによると、解約控除率は区分Ⅰ〜Ⅴの5段階で、経過年数が1年増えるごとに10分の1ずつ下がり、契約日から10年以上経過すると零になります。いちばん高い区分Ⅰなら1年未満が6.00%で、1年以上2年未満5.40%、5年以上6年未満3.00%、9年以上10年未満0.60%という並びです。いちばん低い区分Ⅴは1年未満3.00%から始まり、9年以上10年未満で0.30%です。区分は「積立利率保証期間10年の積立利率」で決まり、1.00%以上なら区分Ⅰ、0.25%未満なら区分Ⅴになります。
控除額は基本保険金額(減額の場合は減額部分)に、この率を掛けた金額です。つまり、解約控除は率を公表している商品なら自分で概算できます。契約者側で計算できないのは、次に見る市場価格調整のほうです。 ご自身の契約がどちらのタイプかは、契約のしおりか契約者向けサイトで確認してみてください。
あと何年待てば解約控除がゼロになるかは、設計書で確認する価値があります。 早見表で計算した手取りは、解約控除がゼロになった前提の金額です。
市場価格調整(MVA)|ドル建ての返戻金を動かす(為替とは別の変動要因)
一時払で積立利率が更改されるタイプの商品には、市場価格調整という仕組みが入っていることがあります。
ソニー生命は該当商品について「この保険では、市場価格調整(MVA)を行うため、金利の変動による金利変動リスクがあります。そのため、解約日・基本保険金額の減額日の市場金利が契約日または積立利率保証期間更改日と比較して低下した場合には解約返戻金額は増加しますが、上昇した場合には減少し、解約返戻金額が一時払保険料を下まわる場合があり、損失が生じるおそれがあります」と説明しています。
ここで大事なのは、市場価格調整を決めているのは市場金利であって、為替ではないという点です。解約日の市場金利が契約日や積立利率保証期間更改日と比べて上か下か、それだけで決まります。円安だからMVAが悪化する、という因果関係はありません。
しかも、参照する市場金利は商品ごとに異なります。 どの指標を使うかは契約のしおりや約款で定められています。足元では日本の長期金利も上昇局面にあるため、MVAを採用する契約では、契約時・積立利率保証期間更改時と現在の参照金利を個別に確認する必要があります。自分では計算できないので、保険会社に現時点の解約返戻金額を照会するのが確実です。ソニー生命自身も「解約・基本保険金額の減額時には金利変動リスクと為替リスクが複合的に発生する可能性があるため、予期しない損失が生じるおそれがあります」と注意を促しています。
為替スプレッド|円に換える段階で引かれる(受け取るレートはTTMより不利な側)
ここから第2段階です。
保険会社が使う為替レートは、TTS(円から外貨へ交換するレート)とTTB(外貨から円へ交換するレート)の中間値であるTTMを基準に決められています。円で受け取る特約を使うと、そのレートはTTMより不利な側になります。
具体的に開示されている水準は会社によって差があります。
| 会社・商品 | 円で受け取るときのレート | 確認時点 |
|---|---|---|
| メットライフ生命「ドルアドバンス」円支払特約 | TTM−50銭 | 2026年7月現在(同社サイト記載) |
| ソニー生命 米ドル建保険 | 為替手数料0.01円/1米ドルを含む会社所定レート | 2026年6月現在(同社サイト記載) |
本記事の試算(118,000米ドル)に当てはめると、50銭なら59,000円、0.01円なら1,180円です。今回の試算額では、為替スプレッドによる差額は数万円で、他の要因と比べて相対的に小さくなりました。 解約返戻金の額が変われば金額も比例して変わるので、ご自身の額で計算し直してください。
なお、為替手数料の安さだけで商品の優劣は判断できません。保障内容も適用利率も違うためです。押さえておきたいのは「受け取るときのレートはTTMより不利な側になる」という仕組みのほうです。
外貨建て保険の解約益にかかる税金|一時所得か雑所得か
第2段階の3つ目が税金です。枠組みは、外貨建てでも円建てでも同じです。結論だけ整理します。
- 一時金で受け取る場合は一時所得です。 受け取った解約返戻金の総額から、払い込んだ保険料と特別控除50万円を差し引き、その2分の1が他の所得と合算されて課税されます(国税庁タックスアンサーNo.1755)
- 年金形式で受け取る場合は雑所得です。 その年に受け取った年金額から、対応する払込保険料を差し引いた額が対象になります
- 一時払養老保険や一時払損害保険などで一定の要件を満たすものを5年以内に解約した場合は、20.315%の源泉分離課税になります。一時払個人年金保険(確定年金)を年金支払開始前に5年以内で解約した場合も同様です(同No.1520)
一時所得は総合課税なので、会社員の場合は翌年の住民税に反映されます。
なお、円換算にどの時点のレートを使うか、外貨のまま受け取ったあとに円転して生じた差益をどう扱うかは、受け取り方によって整理が変わる論点です。金額が大きくなりやすいところなので、別記事で詳しく扱う予定です。実際の申告は、最新の情報と税務署・税理士の確認のうえで進めてください。
解約しない選択肢|減額・払済み・外貨のまま受け取る
外貨建て保険の判断は「全部解約するか、何もしないか」の二択ではありません。中間の選択肢が3つあります。
減額(部分解約) は、保険金額の一部だけを取り崩す方法です。全額を1日のレートで円に換えずに済むため、為替の当たり外れを分散できます。ただし減額部分にも解約控除や市場価格調整はかかります。
払済み は、以降の保険料の払い込みを止めて、保障を小さくしたまま契約を続ける方法です。毎月の負担をゼロにしつつ、解約控除がゼロになる時期まで待つ、という使い方ができます。特約が消滅する点には注意が必要です。
外貨のまま受け取る のも選択肢です。円支払特約を使わずに外貨で受け取れば、「保険を解約するか」と「円に換えるか」を切り離して判断できます。ただし外貨での受け取りには金融機関側の送金手数料等が別途かかる場合があります。
払済みを含めた解約判断の考え方そのものは、円建ての契約と共通する部分が大きいので、積立保険は解約すべき?30代が「やめていい5つの条件」を具体数字で解説に判断軸を整理しています。この記事は、そこに為替と外貨建て特有の費用を足したものと考えてください。
今解約する・待つ・移す|3つの案を数字で比べる型
材料がそろったので、実際に並べてみます。以下も同じ試算条件(払込10万米ドル・現在の解約返戻金118,000米ドル)の中の話で、実在する商品の数値ではありません。 解約時のレートは早見表から1ドル150円の行を使います。
案A:今解約して円で受け取る
早見表の1ドル150円の行を読むだけです。手取りは1,670.7万円になります。
案B:解約控除がゼロになるまで待ってから解約する
ここは記事側で数字を作れません。将来の解約返戻金は各社が公表していないためです。設計書の「解約返戻金額の推移」の欄(経過年数ごとにドル建ての金額が並んでいる表)を見て、次の3つを書き出してください。
- いまの経過年数の解約返戻金(米ドル)
- 解約控除がゼロになる年の解約返戻金(米ドル)
- その差(米ドル)
仮に、5年待つと解約返戻金が118,000米ドルから128,000米ドルに増える設計だったとします。この10,000米ドルは説明のために私が置いた数字で、実在する商品の推移ではありません。 同じ税率帯で計算すると、5年後のレート次第でこうなります。
| 5年後のレート | 手取り額 | 案A(1,670.7万円)との差 |
|---|---|---|
| 1ドル150円 | 1,797.5万円 | +126.8万円 |
| 1ドル140円 | 1,688.9万円 | +18.2万円 |
| 1ドル130円 | 1,580.4万円 | −90.3万円 |
この試算条件では、5年後のレートが1ドル138円あたりで案Aと並びます。ただしこれは「解約時点の手取り額」だけを比べた分岐点です。 ドル建てで10,000米ドル増えても、為替が12円ほど円高に振れれば打ち消される計算になります。「待てばドル建てで増える」ことと「待っている間に為替がどうなるか」は、セットで見る必要があります。
案C:今解約して、別の場所へ移す
案Aの手取り1,670.7万円を、そのまま別の運用に回した場合です。運用利回りは仮定を置くしかありません。
| 10年間の想定利回り(仮定) | 10年後の金額 |
|---|---|
| 年0%(使わずに置いておく) | 1,670.7万円 |
| 年3% | 約2,245.3万円 |
年3%は説明のために置いた仮定値で、そうなる保証はまったくありません。 実際には元本割れもあり得ますし、課税口座なら運用益に約20%の税金がかかります。この行は「解約したお金を寝かせるのか動かすのかで、10年後の数字が変わる」ことを示すためのもので、特定の運用先を勧めるものではありません。
3案を比べるときの注意
- 1ドル138円という分岐点は、解約時点の手取り額だけを比べたものです。 5年間に負担する保険関係費用、その間の保障の価値、MVAの動き、解約控除の残り、別の運用に回していれば得られたはずの利益(機会費用)は、いずれも含んでいません。総合的な損益分岐点ではありません
- 案Cは案A・案Bと時間軸が違います。 案Cは10年後の数字なので、案Bと並べるなら「案Bで受け取ったお金をさらに5年運用した場合」まで揃えないと公平ではありません。表の金額をそのまま優劣の比較に使わないでください
- 3案とも税金の計算は解約時点の1回だけです。 案Bのように解約を先送りすると、その年の他の所得によって税額が変わる可能性があります
早見表を自分の契約用に置き換える|手元でそろえる4つの数字
ここまでの試算はすべて仮定値です。次の4つをそろえれば、この記事の早見表をあなたの契約用に置き換えられます。
| そろえる数字 | どこで分かるか | 早見表のどこに入るか |
|---|---|---|
| ①払込保険料の円換算額 | 保険証券・契約時の払込記録(円で払い込んだ場合はその合計額) | 「払込1,100万円」の位置 |
| ②今解約した場合の解約返戻金(外貨建て) | 保険会社のコールセンター。解約控除と市場価格調整(MVA)を反映したあとの金額です | 「118,000米ドル」の位置 |
| ③解約控除がゼロになる時期と、そのときの解約返戻金 | 設計書の解約返戻金推移表・契約のしおり | 案Bの計算に使います |
| ④円支払時の適用レート | 契約のしおりの円支払特約の欄(TTM−◯銭、または為替手数料◯円) | 「TTM−50銭」の位置 |
①③④は書面から拾えます。②だけは保険会社に「今日解約した場合、外貨でいくら受け取れますか」と聞いてください。 解約控除は率が公表されていれば基本保険金額から概算できますが、市場価格調整は契約者側では計算できません。参照する市場金利も計算式も契約ごとに定められているためです。最終的な金額を直接聞くのが確実です。この1本の電話で、早見表の出発点になる数字が確定します。
保障をどうするかは数字では決まりません。保障がもう必要ないなら全額解約と減額を、まだ必要なら払済みと掛け捨てへの置き換えを、前の章の3つの選択肢から比べてください。
解約したお金を「いつ・何に使うか」を先に決める
解約判断でいちばん多い失敗は、「解約したあとどうするか」を決めないまま解約することだと思います。低い利回りの保険をやめて、そのまま普通預金に置いただけ、という状態は珍しくありません。
決める順番は、置き場所(商品)ではなく使う時期が先です。時期が決まれば、候補は自動的に絞られます。
| 使う時期 | 優先すること | 候補の例 |
|---|---|---|
| 1〜3年以内に使う予定がある | 元本を減らさないこと | 普通預金・定期預金・個人向け国債(変動10年は2026年8月募集の第197回が年1.87%・1年経過後は中途換金可・銀行やゆうちょでも購入可) |
| 時期は未定で、当面は円にする必要がない | 円に換えるタイミングを自分で選べること | 外貨MMFなど。ただし為替リスクは持ち続けることになります |
| 10年以上使う予定がない | 非課税の枠を使えること | NISA(インデックス投信など)。値動きがあるので生活防衛資金を確保したうえで |
利率は財務省「変動10年の発行条件」の適用利率一覧・税引前で、2026年8月12日に確認しました。募集は毎月あり、変動10年の利率は半年ごとに見直されるため、1.87%は初回適用分です。ちなみに前の章の案Cで置いた「年3%」は私の仮定値ですが、この1.87%は確定した利率です。仮定を置かないと出てこない数字と、いま公表されている数字とを、同じ表の中で混ぜないようにしてください。
保険を解約したこと自体が、投資を始める理由にはなりません。 生活防衛資金が足りていないなら、解約したお金をリスク資産に移す段階ではありません。NISAを使う場合も、まず「10年以上使わない資金なのか」を確認してください。中身については新NISAの始め方|30代初心者が最初にやること5ステップにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 外貨建て保険は円安の今、解約したほうがいいですか?
一律に「したほうがいい」とは言えません。判断に必要なのは為替レートだけではなく、解約控除が残っているか、市場価格調整(MVA)のある商品か、保障がまだ必要か、解約したお金の置き場所が決まっているか、の4点です。ただし円ベースの手取りは為替で大きく動きます。本記事の試算前提(払込10万米ドル・現在の解約返戻金118,000米ドル)では、解約時のレートが10円変わるごとに手取りが約100万円動きました。まずご自身の設計書で現在の解約返戻金の外貨建て額と解約控除の有無を確認するところからになります。
Q2. 解約返戻金を受け取ると、税金や翌年の社会保険料はどうなりますか?
一時金で受け取る場合は一時所得です。受け取った解約返戻金の総額から払い込んだ保険料と特別控除50万円を差し引き、その2分の1が他の所得と合算されて課税されます(国税庁タックスアンサーNo.1755)。年金形式で受け取る場合は雑所得です。一時所得は総合課税なので、会社員であれば翌年の住民税に反映されます。健康保険料・厚生年金保険料は給与の標準報酬月額をもとに決まるため通常は影響しませんが、国民健康保険に加入している方は保険料の算定に影響する可能性があります。金額が大きくなる場合は事前に税務署や税理士にご確認ください。
Q3. 為替手数料が安い会社の商品に乗り換えたほうが得ですか?
為替手数料だけで判断するのは適切ではありません。本記事の試算額では、為替スプレッドによる差額は数万円にとどまりました。加えて、乗り換えると新しい契約でまた解約控除の期間が始まり、契約年齢が上がるぶん保障コストも変わります。乗り換えを検討する場合は、乗り換え先の設計書と現契約の設計書を両方並べて比べてください。
まとめ
- ソニー生命の四半期開示では、外貨建て保険の解約・失効率が外貨建2.3%対円建1.3%と分かれています。しかもこの数字は外貨ベースで、円換算による見かけ上の上昇ではありません
- 円の手取りは2段階で決まります。ドル建ての解約返戻金そのものを決めるのが保険関係費用・解約控除・市場価格調整で、それを円に換えたときの手取りを決めるのが為替レート・為替スプレッド・税金です。円安が効くのは後半だけです
- 円ベースの手取りは、解約時のレートが10円動くごとに約100万円動きました。本記事の試算では、所得税20%の帯を仮定すると、為替による受取額の増加分の約15%が一時所得にかかる税負担に相当します
- 費用の開示のされ方は商品ごとに違います。同じソニー生命でも、一時払の商品には「一時払保険料に5.46%〜7.00%」という率が示され、もう一方には「費用の合計額またはその上限額を表示することができません」と書かれていました(2017年10月時点の案内)
- 市場価格調整を決めるのは市場金利であって為替ではありません。参照する金利は商品ごとに違うので、契約時・更改時と現在の水準は個別に確認する必要があります
- 今回の試算条件では、5年待ってドル建てで10,000米ドル増えたとしても、5年後のレートが1ドル138円を下回ると今解約したほうが手取りは多い計算になりました。ただしこれは解約時点の手取り額だけを比べた分岐点で、保険コスト・保障の価値・機会費用を含んだ総合的な損益分岐点ではありません
- 解約は全部か無かではありません。減額・払済み・外貨のまま受け取る、という中間の選択肢があります
- 4つの数字(払込額の円換算・今解約した場合の解約返戻金・解約控除がゼロになる時期とそのときの返戻金・円支払時の適用レート)をそろえれば、この記事の早見表を自分の契約用に置き換えられます。このうち解約返戻金は、解約控除と市場価格調整を反映した金額を保険会社に直接聞くのが確実です
最後にもう一度。本記事の試算はすべて私が置いた仮定にもとづくもので、保険会社が公表した数値ではありません。特定の商品の解約・購入・継続を勧めるものでもありません。保険・投資いずれも元本割れの可能性があり、将来の運用成果や為替相場を保証するものではありません。最終的な判断は、ご自身の設計書・契約のしおり・約款と最新の情報を確認し、必要に応じて中立的な立場の専門家に相談のうえ行ってください。
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