「HYGを買いたい。でも米国ETFを買うのはちょっと面倒だな」
そう思っていた私が、東証で「2258 iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF」を見つけたとき、こう思い込みました。
「これはHYGの円で買える版だろう。中身は同じHYGだろう」
そしてNISAの成長投資枠で、2258を620株(取得単価228円・楽天証券)買いました。
ところが、あとで連動指数と目論見書を確認したら、2258はHYGそのものでも、HYGを箱に入れただけの商品でもありませんでした。連動する指数も、ファンドの籍も別物だったのです。
それでも結果として困らなかったのは、私が買いたかったのが「HYGという固有の商品」ではなく「米ドル建てハイイールド社債市場へのまとまった投資」という目的だったからです。名前やブランドの印象でETFを判断すると、別物をつかむことがある。それでも"目的"で投資していれば、ズレに気づいたときに困らない――この記事で本当に伝えたいのは、その一点です。「2258とHYGは何が違うのか」を、私の思い込み→検証→納得の順で整理しながら、ETF選びで名前に頼ることの危うさを共有します。
※本記事は私個人の投資判断と整理の記録です。特定の商品の購入を勧めるものではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。
【思い込み】私は「2258=HYGそのもの」だと思って買った
HYG(iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF)は、米ドル建てハイイールド社債(いわゆるジャンク債)にまとめて投資できる、世界的に有名なETFです。米国の高利回り社債に分散投資したい、という需要にぴったりの商品です。
私もそこに魅力を感じていました。ただ、米国ETFを買うとなると、円をドルに替えて、外国株式の口座で買って…と、ひと手間あります。
そんなときに東証の「2258 iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF」を見つけました。名前もiシェアーズ(HYGと同じブランド)で「米ドル建てハイイールド社債」。私はほとんど確認もせず、こう思い込みました。
「これはHYGの日本版だ。東証でHYGそのものを円で買えるんだ」
そしてNISAの成長投資枠で620株、取得単価228円で買いました。「HYGを円で買えた」という満足感さえありました。
【検証】毎月分配型ETFの買付制限を調べたのがきっかけで、別物だと気づいた
別物だと気づいたきっかけは、ハイイールド系ETFまわりの「分配のしくみ」を調べていたことでした。
ちょうどその頃、私は米国高配当ETFのHDVが四半期分配から毎月分配へ変更され、毎月分配型が新NISA成長投資枠の対象外になることで、楽天証券で買付注文が失効してしまう、という出来事を別記事で整理していました。詳しくは下のリンク記事にまとめています。
このとき「米国の高配当・高利回り系ETFは、分配のしくみや器の作りによって、NISAでの扱いまで変わってくるんだな」と実感したのです。そこで、自分が持っているハイイールド系の2258についても「これは本当にHYGと同じものなんだろうか?」と、改めて中身を確認する気になりました。
そして2258の連動指数と目論見書をきちんと確認したところ、自分の思い込みが間違っていたことに気づきました。2258はHYGそのものではなく、HYGを裏付けにした商品(いわゆるJDR)でもなかったのです。
連動している指数が違う
ETFは「どの指数に連動するか」で中身が決まります。ここが両者で違いました。
| 2258(iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF) | HYG(iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF) | |
|---|---|---|
| 上場市場 | 東京証券取引所 | 米国(NYSE Arca) |
| ファンドの籍 | 日本籍の独立したETF | 米国籍のETF |
| 連動指数 | ICE BofA US ハイ・イールド・コンストレインド・インデックス | Markit iBoxx USD リキッド・ハイイールド指数 |
| 通貨 | 円で売買・投資対象はドル建て資産 | ドル建て |
| 経費率(信託報酬) | 年0.209%(税込) | 0.49%(目論見書記載値) |
| 流動性 | 低め(規模が小さく歴史も浅い) | 非常に高い(世界最大級・取引活発) |
| 向いている人 | 日本居住で円のまま管理したい人 | ドル資産・海外ETFの口座を使う人 |
連動する指数の名前からして違います。どちらも「米ドル建てのハイイールド社債をまとめて買う」指数ではありますが、組み入れ銘柄・残存期間・格付け構成・セクター比率などの細かいルールが違う、別の指数です。
「箱を開けたらHYGが入っている」わけではなかった
私が思い込んでいたのは、いわば「2258という箱を開けたら、中身はHYGが入っている」というイメージでした。海外ETFを裏付けにして日本で売買できるようにしたJDR(預託証券)なら、そういう構造もあります。
しかし2258はJDRではなく、HYGとは独立に、自前で米ドル建てハイイールド社債を組み入れて運用している、日本籍の別ファンドでした。「HYGの円版」ではなく、「HYGと似た市場を狙う、別のETF」だったわけです。
正直に言うと、最初の理解は間違っていました。2258はHYGではありません。 HDVの件をきっかけに「ETFの中身をちゃんと確認していたか」と立ち止まらなければ、ずっと「2258=HYG」と思い込んだままだったかもしれません。
【納得】それでも自分の目的には十分な代替候補になった
では「思い込みで別物を買ってしまった、失敗だった」かというと、そうは感じていません。あくまで自分の目的(米ドル建てハイイールド社債への投資)においては、2258は十分な代替候補になりました。理由を順に書きます。
「別物」と「目的を満たす」は両立する
ここがこの記事でいちばん伝えたい点です。
- 器(ファンド)も指数も別物 … これは事実。2258とHYGは違う商品。
- でも狙っている市場は近い … どちらも「米ドル建てのハイイールド社債市場を広く」買う、分散された指数。
どちらも米ドル建てハイイールド社債市場を広く狙う指数なので、値動きの方向感は似やすいといえます。「景気が悪化すると下がりやすい・利回りで取りにいく」という大きな性格は共通だからです。ただし連動指数が違うため、値動きが完全には一致しません。組入銘柄・残存期間・格付け構成・セクター比率・信用スプレッドへの感応度・分配の方針などが異なり、得られるリターンが完全に同じになるわけではない点には留保が必要です。どちらが優れているという話ではなく、別物だという前提を置いておく必要があります。
それでも、「2258はHYGそのものではない(別物)」と「2258は自分の目的を満たす(代替候補になる)」は、矛盾なく両立します。私が欲しかったのは「HYGという固有の商品」ではなく「米ドル建てハイイールド社債市場へのまとまった投資」だったので、その目的は果たせていたわけです。
2258を選んだ2つの理由は達成できていた
そもそも「東証で買えるなら」と2258に飛びついた理由は2つでした。
- 信託報酬(コスト)が安い … 2258の信託報酬は年0.209%(税込)です。HYGの経費率0.49%(目論見書記載値)と比べると、保有コストは2258のほうが低く済みます。
- 円のまま売買・管理できる … 円のまま売買・保有でき、評価額も円で見られます。ただし売買通貨は円ですが、投資対象はドル建て資産です。円のまま手続きできるだけで、円資産になるわけではありません(為替リスクの話は後述します)。
この2つは、別物だったとしても達成できています。コストはHYGより安く、管理も円で完結している。当初の目的に照らせば、2258はちゃんと役割を果たしてくれました。
なお、信託報酬・経費率は将来変わり得る数値です。記事執筆時点の公式情報に基づいていますので、実際に買付を検討する際はご自身で最新値をご確認ください。
日本の個人投資家ならではの実利もある
さらに、日本の個人投資家として2258を選ぶ実利もあります(いずれも制度・仕様は変わり得るので、買付前にご自身で確認してください)。
- 買付時の為替手数料がかからない … 円で買えるので、ドルへの両替コストが発生しません。
- NISAの成長投資枠の対象 … 私は実際に成長投資枠で買いました。
- 税務上の取り扱いは米国ETFと異なる … 2258と米国ETFでは税務上の取り扱いが異なります。確定申告や外国税額控除の要否は商品や口座区分によって変わるため、どちらが手間か・有利かを比較する際は、ご自身で(または税務の専門家に)確認が必要です。
こうした「日本で買うときの事情」も込みで考えると、「HYG的なものを手間少なく円のまま持ちたい」人にとって、2258は妥当な選択肢のひとつだったと思います。
【最重要の注意】円で買えても、為替リスクはHYGと同じだけ負う
ここだけは、思い込みで損をしないために強調させてください。
2258は「円で売買できる」けれど、中身は米ドル建てで、為替ヘッジはありません。 つまりドル円の値動きの影響を、HYGを持っているのとほぼ同じように受けます。
「円で買えるから為替リスクがない」というのは、よくある誤解です。
- 円安が進めば、円換算の評価額には追い風になります。
- 逆に円高が進めば、社債の値段が変わらなくても円換算では目減りします。
「円建て表示=為替リスクなし」ではありません。2258を持つということは、ハイイールド社債の信用リスクに加えて、ドル円の為替リスクも負う、ということです。ここはHYGと変わりません。
流動性・売買のしやすさはHYGに劣る(正直な弱点)
弱点も正直に書いておきます。
HYGは世界的に巨大で取引も活発なETFです。一方の2258は、規模が小さく、設定からの歴史も新しいETFです。そのぶん、
- 売買が薄い時間帯にスプレッド(買値と売値の差)が広がりやすい
- まとまった株数を一度に売買すると、不利な値段になりやすい
という弱点があります。デイトレードのように頻繁に売買する人には、この差は無視できません。
ただ、「長く持って分配金を受け取りながら寝かせておく」使い方であれば、売買回数自体が少ないので、スプレッドの不利は実害として出にくいと考えています。短期で回すなら流動性の高いHYG、長期で円のまま管理するならコストの安い2258、という整理に落ち着きました。
まとめ:名前ではなく「目的」でETFを選ぶ
私の思い込み→検証→納得を、最後に一行ずつまとめます。
- 思い込み:2258はHYGそのもの(円版)だと思って620株買った。
- 検証:毎月分配型ETFの買付制限(HDVの件)を調べたのをきっかけに2258を調べ直したら、連動指数もファンドの籍も別物だと分かった。JDRでもなかった。
- 納得:それでも狙う市場は近い米ドル建てハイイールド社債で、選んだ理由(低コスト・円のまま管理)も達成できていた。自分の目的に照らせば、2258は十分な代替候補になっていた。
この一件で身をもって学んだのは、名前やブランドの印象でETFを判断してはいけないということです。「iシェアーズ」「米ドル建てハイイールド社債」という名前が似ているだけで、私は中身まで同じだと思い込みました。実際は連動指数もファンドの籍も別物です。
それでも困らなかったのは、欲しかったのが「HYGという固有の商品」ではなく「米ドル建てハイイールド社債市場へのまとまった投資」という目的だったからです。名前ではなく目的で投資していたから、別物だと気づいたときも慌てずに済みました。逆にもし「HYGそのもの」が必要な理由があったなら、これは小さくない取り違えだったはずです。連動指数と目論見書まで確認してから、自分の目的に合うかで選ぶ――当たり前のようで抜けがちなこの手順の大切さを、再確認した一件でした。
よくある質問
Q. 2258はHYGのJDR(円で買えるHYG)ですか? A. いいえ。2258はHYGを裏付けにした預託証券(JDR)ではなく、HYGとは別の指数に連動する、日本籍の独立したETFです。「HYGの円版」ではありません。
Q. 2258は円で買えるから為替リスクはないですか? A. いいえ。2258は中身が米ドル建てで為替ヘッジがないため、HYGと同じようにドル円の為替リスクを負います。「円で表示される=為替リスクなし」ではない点に注意してください。
Q. HYGと2258、どちらを買うべきですか? A. これは人によります。短期で頻繁に売買するなら流動性の高いHYG、長期でコストを抑えて円のまま管理したいなら2258、という性格の違いがあります。私は後者の理由で2258を選びました。どちらが正解という話ではなく、目的に合うほうを選ぶ問題だと思います。
ハイイールド社債は、相対的に信用力の低い企業の社債をまとめて買う商品です。利回りが高い分、景気悪化局面では値下がりしやすく、発行体の信用リスクも負います。2258・HYGとも、株式や先進国国債とは異なるリスクを持つ資産です。本記事は私個人の保有記録と整理であり、特定商品の購入を推奨するものではありません。投資は元本割れの可能性があります。最終的な投資判断は、必ずご自身の責任で行ってください。